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人生に乾杯 28(治療は次のフェーズへ)

「さすがシンガポール、これは日本よりも詳しいかも」とは主治医の田部井医師の言葉。2月3日に「遺伝子のxxxが陽性だから薬が効く体質」と言われたが、「xxx」が聞き取れずしばらく気になっていたところ、3月17日の診察で聞き直した結果、冒頭のように言われたのだ。「いや〜、シンガポールじゃなくて米国なんだけど」とは僕の内なる声。

医師は、写真上オレンジ色部分6行目の「EGFR vIII (+)」という部分を指していた。画面ではカーソルが邪魔して「v」が良く見えないが、遺伝子「上皮増殖因子受容体(Epidermal Growth Factor Receptor)」の仲間で、EGFRが突然変異を起こして「vIII」となる、らしい。これが「(+)」、つまり陽性だと「脳腫瘍の抗がん剤(テモゾロミド)が良く効く」(田部井医師)タイプだ。これ以外は聞いてないのだか、帰って自分で調べた結果は以下の通り。

・GBM IDH wildtype...膠芽腫のほとんどがこのタイプ             ・MGMT methylated...DNA修復酵素O6メチル化(術後の腫瘍縮小に寄与)     

と、ここまで医学用語を調べるのに、なんと1時間。ネット上をあちこち追い掛けるうち、「膠芽腫の患者は5年生存率が10%」などと、既に知ってはいるが改めて読んで心が引き裂かれるような言葉が目に入り、嫌になって途中で投げ出してしまった。「PD-L1 (IHC) Negative」や「TERT Intermediate」などに触れられなかったのはそういう事情からだ。オレンジ色部分7行目「CARIS Singapore」は、シンガポールのRaffles Hospitalが米国の研究機関CARISに委託している、という意味(「人生に乾杯」第3回、2020年9月29日参照)。

3月17日の通院で、脳腫瘍治療では最後の分子標的薬アバスチン点滴があり、そこで一端「経過観察期」に入った。これまで6回の抗がん剤テモゾロミド(+アバスチン)のクールは、副作用が少なかったとはいえ辛かった。5夜に渡って投与を続けるのだが、だいたい3夜目を明けたころから(つまり4日目朝以降)、「胃がムカムカしてくる→食欲は落ちる→気分が滅入る」の悪循環が続き、服用前にピークで68キロあった体重が終わると65キロ台になる。期間中は自分でも少しずつ痩せていくのが分かった(写真下は1夜分のテモゾロミド、商品名テモダール)。毎週月曜日は、シンガポールにいる小学校の同級生(そんな人がいるのかと自分でも驚く。出会った時は向こうも驚いていた)が30分の瞑想プログラムをZoomでやってくれていて、「あなた痩せたわね」と何度か言われた。

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次の通院は、3月最終週は行く必要がなくなり、4月14日(水)にMRI撮影で脳の具合を観ることになった。2月にアップした輪切り写真、いや立体画像みたいなのを撮るのだ。

そして治療は肺の腫瘍に移る。4月19日(月)にPCR検査と血液検査で通院、翌20日から4泊5日の入院となる。胸の上部にポートと言われるカテーテルを入れる穴の手術をする。その後は48時間連続の点滴をやる。最初は用心して入院するが、問題がなければ点滴自身は自宅でも可能になる。病院はコロナ禍なので原則面会禁止だが、幸い、妻の職場が徒歩圏内なので心強い。

ちなみにポートという言葉、昨夜zoom飲みしたシンガポールの日本人は知っていた。米国製薬会社に勤めているせいもあるが、僕は「流石!」と感心してしまった。

♫ち〜りょうはつづく〜よ〜、い〜つま〜で〜も〜🎶

(続く)