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短歌人掲載作品

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「短歌人」に掲載された津和歌子の作品です。
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2016年12月の記事一覧

きらきらの彩都

モノレールは四両編成わたしたちはみんなばらばら縛られぬゆめ

行先の「大阪空港」その横の飛行機マーク変わらずにおり

観覧車は不滅のかたちとかつて言いしひとの名前を思い出せない

「右によれ」「左によれ」と書かれたる道を上から見て通り過ぐ

「171号線」にイナイチとカナを振るべきかしばし迷いき

きらきらの彩都は枕詞にはあらざれどこの陽の照り返し

町の名を「あさぎ」「やまぶき」くちずさみその後

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雨に打たれて

失跡にはあらねど彼は横たわり横たわりしまま動かぬと聞く

すでに我はかかわりのなき者ゆえに彼は去りしとひとづてに聞く

平安の世なら祈祷をしたであろう念仏も夜ごと唱えたであろう

藤浪が壊れる前にそしてきみが壊れる前に雨を降らさむ

雨が降れば終わるものだと思いしがただ惰性的に雨降りつづく

百六十一球投げし藤浪と二十四時まで帰れぬきみと

相変わらず菩薩のようにほほえみしきみかと思う雨に打たれて

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