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パスカルの原理とバックホー

4期生の大賀です。

僕らが山で行っている作業道づくりには、バックホーや不整地運搬車などの重機(=建設機械)をつかいます。

過去記事:壊れない作業道づくりで使っている重機「バックホー」「キャタトラ」「林内作業車」

基本的に、重機を操作するには機械ごとの「技能講習」や「特別教育」といったカリキュラムを教習所などで受講する必要があります。

はっきりいって退屈な授業なんですが、機械の基本的な構造や原理を学べるので、機械の素人としては勉強になることも多かったりします。


バックホーが土を「引く」力がより強いのはなぜ?

不整地運搬車の技能講習を受講中、講師の方から面白い質問がありました。

「バックホーがバケットで土を手前に引くのと、奥に押す(払う?)のとでは、どちらの動作がより力が強いでしょうか?」

だいたいこんな内容だったと思います。

僕がバックホーを操作している感覚としては、手前に引いてくる力のほうが圧倒的に強いです。でも考えてみるとその原因がわかりませんでした。


油圧装置とパスカルの原理

バックホーの腕(ブーム、アーム、バケット)を稼働させているのは油圧装置という、油を媒介として圧力を伝達する仕組みです。

そしてそれにはパスカルの原理が応用されています。教本から引用すると

油圧装置は「閉じ込められた液体の一部に加えた圧力は、液体のすべての部分にそのままの力で伝わる」
(コマツ教習所『不整地運搬車講習テキスト』p60)

というもの。

詳しくはイマイチわかってないんですが、一方から加えられた圧力は、もう一方の面積が大きくなるほど増大される(面積に比例する)、ということだけは理解できました。


引く力が強いのは面積が大きいから

バックホーの腕を実際に動かしているのはシリンダとよばれる装置です。

そこに油圧装置で力を加えることで、シリンダ内部にあるピストンロッドが伸び縮みします。

教本から図を転載するとこんな仕組みです。複動シリンダのほう(同テキストp64)↓

油の出入り口はシリンダの上下2方向にあって、それぞれの方向からピストンに油圧装置で力を加えて、ピストンロッドを上下させます。

このピストン。「ロッドが縮む側の面の広さ」は中心にロッドがあるので、「伸びる側の面の広さ」より小さくなっています。

そして油圧装置により加わる力は面積に比例するので、ピストンが伸びる側の力は縮む側の力より強くなります。

そしてそして、バックホーで土を引く動作をすると、

・ブーム:上がる
・アーム:手前に動く
・バケット:手前に閉じる

だいたいこんな具合に各部分が稼働しますが、そのときシリンダのピストンロッドは伸びる動きをします

まとめると、

①バックホーが土を引く動作のとき、ピストンロッドは伸びる。

②バックホーの腕はシリンダ内部のピストンが上下することで動く。

③ピストンロッドが伸びるとき、そのピストンに圧力がかかる面積は、縮む側とくらべて大きい。

④面積が大きいほど力も大きくなる。

⑤よって、引く動作のほうが力が大きい。


力の差には他の原因もありそうですが、油圧の仕組みを考えるとこんな感じのはず(間違ってたらすみません...)。


・・・

長々とニッチなことを書きましたが、何が言いたいかというと、「物事を原理から見るのはけっこう面白いな」ということでした。

おしまい。


書いた人:大賀

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