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その作業道は何が走るのか?

4期生の大賀です。

3月中旬の4日間、愛媛県の自伐林家である菊池俊一郎さんにお越しいただきました。津和野町で研修していただくのは今回3回目。作業道づくりと伐木造材についてご指導いただきました。


林内作業車のための作業道

今回はじめて、菊池さんの作業道づくりを習いました。

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作業道づくりについて、ヤモリーズでは清光林業の岡橋さんから習っています。2tダンプが長尺の丸太を積んで走行できる作業道づくりです。

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それとは対象的に、菊池さんがつくる作業道は林内作業車で長尺の丸太を運び出すことに特化した作業道です(車両は走れません)。

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「林内から丸太を運び出す」という目的は同じですが、作業道の仕様はまったくの別物。丸太を運び出す機械が違えば、これほど作業道の仕様も違うのかと驚きの連続でした。

幅員をはじめとして、縦断勾配、水処理、転圧の頻度、ヘアピンカーブの形、支障木の数、踏査の有無、開設する場所、バラスの必要性など、あらゆるものが対照的です。

2tダンプとなにが違うのか?

2tダンプと林内作業車、両者の違いを自分なりにまとめてみます。

端的にいうと、林内作業車は2tダンプにくらべ、車幅が小さく、重量が軽く、悪路でも走行可能です。なので2tダンプ用の作業道づくりに必要な工程を大幅に省力化できます。

省力化できる理由は、下記の4つの特徴があるからだと思います。

・接地圧が低く、走破性が高い

林内作業車の足回りはタイヤではなくゴムクローラです。クローラは接地圧が低いので柔い悪路でも走れます。くわえて縦断勾配がキツくても登れます。なので転圧の頻度を省力化できます。

2tダンプはタイヤの接地圧が高いので、軟弱な路面はバラスを敷かないと走れません。逆にゴムクローラはバラスの上を走るとゴムが傷むので、バラスは不要です。

・轍(わだち)ができない

作業道をタイヤが走ると必ず轍ができます。これは水路になって轍沿いに雨水が流れつづけるので、横断工(水切り)を設置して強制的に排水させないといけません。

クローラは轍ができないので路面を常に平らに保てるため、雨水は自然に路肩側に排水できます。

・車重が軽い

2tダンプの車重は約3t、最大積載状態だと約5tになります。作業道を開設する3tバックホーよりもかなり重いので、転圧をしっかり行い、場所によっては木組みで頑強に道を補強する必要があります。

対して林内作業車の車重は800kg〜1t、最大積載状態でも3t未満です。作業道をつくる3tバックホーよりも軽いので、3tバックホーが走れる程度なら林内作業車も走れます。木組みも不要になると思います。

・幅員がせまい

2tダンプが走行するための幅員は2.5m、カーブではそれ以上が必要です。対して林内作業車は2m未満になります(林内作業車のクローラで全面転圧できる程度の幅員)。

幅員がせまいと「切り取り法面の高さ」「盛り土の量」「路線上の木を切る本数(伐開幅)」をより少なくできて、自然と壊れにくい道になります。なので地山を2.5mで切り開くのをためらうような場所でも開設できる可能性があり、路線の自由度がかなり高くなり、より高密に開設することもできます。


何を走らせるかで選択する

2tダンプと林内作業車、どちらが優れているというものではなく、一長一短があります。

たとえば2tダンプの走行スピードは林内作業車とは比べ物になりません。なので両者の性能や制約をしっかり理解して、山の条件や予算、使える機械によって選択していくしかないと思います。

よくないのは中途半端なこと。2tダンプ走行用につくった作業道で、林内作業車で長尺の丸太を搬出するのは、可能だけれどあまり意味がありません。この作業道は2tダンプ、この作業道は林内作業車という使い分けが必要になってきます。

ただ、林内作業車用の作業道がつくるのが簡単かというとそうでもなく、林内作業車が積載して走行するための「勘所」みたいなものを正確に理解していなければ、実用的な作業道はつくれないだろうなというのが僕の実感です。

積載状態でのヘアピンの線形、荷台が左右どちらかでの路面のカントの付け方、上り or 下りのどちらで進んでいくかの設計など、やってみないとまったくわかりません。


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以上、菊池さんの作業道づくりについて、自分なりのまとめでした。


僕のnote更新はこの記事で最後になります。ごく稀にではありますが、記事の感想をいただくことがあり、とてもうれしい体験でした。今までお読みいただき、ほんとうにありがとうございました。

大賀圭介

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