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スイス・フォレスターWSに参加

こんばんは。

アリムーこと有村です。

今年度からバックホウのオペレーターとして壊れない作業道づくりに励む日々ですが、今回は先日岐阜県郡上市にて開催された「スイス・フォレスターWS」に参加した様子をご紹介したいと思います。

その前に、スイスの林業!?フォレスター!?について。

日本の林業では、人件費が高い、木材価格が低い、急勾配地が多い、針葉樹の植林が多い、補助金漬けなど林業は儲からない代名詞ですが、一方スイスではどうかというと、人件費が世界一高い、木材価格が低い、急勾配地が多い、針葉樹の植林が多い、林業補助金がない、環境法が厳しいなど条件は日本よりも厳しいように思われます。また、日本と同様に森林面積が広いわけではなく、林業の産出額も木材生産量も大きくない。小規模な私有林が多く、しかも不在地主が多い。しかしこの厳しい状況下においてもしっかり利益を出しているのがスイス林業であり、それを支えているのが「近自然森づくり」と「フォレスター」の存在です。

近自然森づくりとは、「環境と経済との両立」を実現させる。つまり、環境と経済が両立するような森林管理や林業施業をするという意味。そこで大事なのが『元金』から『利子』へ:『蓄積量』から『成長量』へという考え方。森の資産とは、経済で言えば『元金』で、つまり『バイオマスの蓄積量』のこと。そしてその資産を定期的に収穫(皆伐)する。そうすると元金はゼロに戻り、またゼロからのやり直し。新しいやり方は、森の利子(バイオマスの成長量)を増やすようにし、その利子を永続的に得ようとするもので、多種異齢多層な針広混交林化、陽光林化、長伐期択伐化になります。

続いてフォレスターとは、スイス連邦が認定したフォレスター学位の取得者で、普通は市町村の公務員。森林管理のマイスターに相当し、エコノミー(林業経営)、エコロジー(生物多様性)、リクリエーション(散策・森林浴・リフレッシュなど)、飲料水保護、安全性、持続性などの並立を目指す新しい総合的森林管理のコーディネーターです。そう、森のスーパーマンなんです!スイスでフォレスターは子どもたちにとって憧れの職業であるとのこと。今回はそのスイス・フォレスターのロルフ氏が来日し、近自然森づくりのワークショップが開催されるということで、はるばる島根から岐阜へ遠征してきました。

前置きが長くなりましたが、フィールドワークの様子を少しだけご紹介します。

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典型的な日本の人工林でのフィールドワーク。まずは森の観察。森の過去・現在・未来を読み取り、選定した育成木がもっとも元気になるよう森の力を発揮するように人が手を貸すこと。そのためには、その土地の気候風土や植生を熟知する必要がある。例えば、この土地では風がどの方向から吹くのか知っていれば、風上に太い木や風よけの木を残しておくことで風倒木の被害を抑えることができる。

そして、「森の安定性」と「コストカット」というキーワードが繰り返し繰り返し話の中にでてきました。同一種で齢級も同じような単純な森では、病害や地力低下等のリスクが高く、育てた木が将来必ずしも市場のニーズにマッチするとは限らない。多種異齢多層な針広混交林であれば手持ち札を多く持つことになり、市場のニーズの変化にも対応でき、森の安定性も強固になる。

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コストカットという面では、皆伐・植林を極力減らし、択伐長伐期化で質の高い太い木を育て、成長量分を収穫することで継続して利益を得る。森づくりでは、自然の森の成長から遠ければ遠いほど手間・コストがかさむ。そして早ければ早いほど手入れの量が少なく、手間・コスト・リスクも少ない。間伐作業では、落ち木や曲がっている劣等木はまず伐ってしまいがちですが、育成木の邪魔をしていなけらば伐る必要はない。その分手間とコストがかかるし材としての質も悪いので売れない。これは育成木を残すためのポジティブな間伐ならでは。将来の森林像にもよりますが、補助金を得るために3割間伐するとなるとどうしても劣等木を伐るネガティブな間伐になりがちだなと感じました。

広葉樹林でのフィールドワークもあり、ロルフ氏曰く針葉樹の人工林に比べて広葉樹は一気に難しくなるが面白い!日本では林業適地に杉・ヒノキが多く、林業に適していない地に広葉樹が多くあり広葉樹がないがしろにされている。地力、条件の悪いところに育った広葉樹に対し、広葉樹は林業にならないと考えるのではなく、良い立地のとこで広葉樹施業をやってみてほしいと仰っていました。ちなみにロルフ氏の担当地区では最高の土地に育ったシカモアカエデが90万~100万/m3で売れたことがあるとのこと。

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↑上の写真は枝打ちの方法について。枝打ちをする部分は枝が生えている根元の膨らんだ部分(枝隆)で切る。枝打ちをした箇所からひこばえが生えたらそれは切り口が近すぎた印。枝打ちは親指の太さの頃までに行い、なるべく早いうちから枝打ちをすること。ただし、育成木にならない木の枝うちはしないこと。ここでも徹底したコストカット!!

以上少しではありましたが研修の様子ご紹介しました。近自然森づくりを行うには、気候風土や植生など幅広い知識を持ち、かつその知識をフル活用して「今すべき作業を最小の手間とコストで行い、この作業を行うことで何が変わるのか」ということを常に問い、自分で考え判断することが一番大切だなと感じました。また、近自然森づくりは、長伐期択伐、環境と経済の両立、考える林業など自伐型林業と類似する点が多くとても勉強になりました。

ご覧いただきありがとうございましたm(_ _)m


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