ごくうが行く:手を振るシルバー2

*ごくうが行く:手を振るシルバー
https://note.com/tsutsusi16/n/n614706bdd10c?magazine_key=m24c6fc3ea0c8

*ごくうが行く:闇に忽然と消える美女
https://note.com/tsutsusi16/n/n653284fe6f5b

いつもより早めにごくうの散歩に出かけた。ごくうは上のコースを選んだ。中学生の下校時間と重ならなかった。重なると、ごくうを見て、口々にかわいいという言葉を投げかけられる。

中学校のグラウンドの角を曲がると、時々一緒になる黒犬の散歩帰りに出会った。いつもは老夫婦で連れ立って散歩しているが、今日は母親と娘が黒犬を連れている。1年前くらいに夫婦と娘3人で散歩していたのに出くわしたことがある。その時の娘とは違い若い感じだ。お孫さんかもしれない。犬同士が知っていれば、初めてでも自然と挨拶が和む。

ごくうはさっさとマーキングをしながら次へと足を進める。ナンパチワワちゃんのお家も過ぎ、公民館を通り過ぎ、交差点を通り過ぎ、黙々とマーキングしては、進んで行く。

ごくうの歩く前の方に、出会えば手を振るシルバーが知り合いと話し込んでいる。挨拶して過ぎるが、十数メートル進んだところで、ごくうはやたらにマーキングする。知り合いと話し終えた手を振るシルバーが追いついてきた。

「久しぶりじゃのぅ」

「そうですね」

ごくうはマーキングに余念がない。

「免許の更新をしてもらえたいのぅ」

よほど嬉しかったのだろう。すぐ話しを振った。

もう90才前のはずだ。

「それは良かったですね。僕はいい点を出せないんですよ。合格、ギリギリのはずです。」

「友達は免許、貰えなんだ」

喜びの中に友達への同情が滲んでいた。

ごくうはマーキングが終われば、先に進みたがる。シルバーも察したのか、

「じゃ」

手を振って歩き始めた。

ごくうはもう疲れているはずだ。交差点でいつもは渡っていくのに、家に帰る方向を選んだ。

前に「忽然と消えるワンちゃんがいる」

忽然と消えるワンちゃんは散歩しはじめはほとんど進まない。ごくうは瞬く間に追いついた。

「この間すごい勢いで帰っていましたね。」

「そうなんです。この子、帰るときには超早いんです」

「夜目遠目笠の内」というが、まだ明かりがある時間でも「忽然と消える美女」は浅田美代子ばりのかわいさを放っていた。

ごくうは相手してくれない人と犬にはさっさと別れを告げる。ごくうはまだおまけの散歩を楽しみそうだ。