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ごくうが行く:雨傘の女子高生が

雨傘の女子高生がごくうを可愛がりだし、出会ったときには、ごくうを撫でていた。卒業前に出会ったとき、
「公民館があるでしょう」
「その前に家があります、そこが家です」
どこか明確に掴めていなかったが、数日後、妻と一緒にごくうの散歩に出かけたとき、公民館前で、帰宅して家に入る女子高生をみた。そこで認識できた。
その後、1回だけ、帰宅時に出会い、ごくうを撫でていった。それからまもなく、女子高生は卒業し、就職したようだ。卒業後、1度しか出会っていない。

ごくうの散歩時間も季節によって変わり、女子高生とは就職後帰宅時に出会うことがなくなっていた。

ごくうももう8才。変わりもせず、散歩が大好きだ。今日(日曜日)は坂を上がるコースを選んだ。いつものコースをなぞるように散歩する。公民館の近くまで来たとき、若い女性の声がする。どうも来訪して帰宅する友人(同僚かもしれない)の自動車の誘導にあたっているらしい。

見ると、(あの女子高生か?)邪魔にならないように、避けながら、歩道へ。ごくうは黙々と歩いて行く。妻も車を用心しながら、ごくうを庇うように歩道に。

公民館前の家に近づいたとき、誘導を終えた女子が家に帰っていく。(ひょっとして・・・)そう思ったとき、女子は家のドアに手を掛ける前に「こんばんは」と挨拶。ごくうに近寄ったりはしていない。ごくうも散歩に専念。妻はごくうに気遣いながら挨拶する。

挨拶を終えた女子は家の中に入り、家族に話しかけている。家の中から漏れる光が細くなり、戸が閉められた。

(やはり、あの女子高生)

女子高生の時も可憐で綺麗だった。夕暮れとはいえ、大人びた女性を想像できる。もう二十歳だろう。香り立つような佇まいが印象に残る。あれほど可愛がっていた女子高生の変貌にごくうは関心を示さない。黙々と散歩する。

ごくうは散歩コースを延長することが多い。今夕は、高齢女性が逆向きに散歩している。(今日は遅いな)散歩時間が同期しているのか、高齢女性とはよく出会う。1週間前、高齢女性はごくうにたちまち追いつき、追い越しざまに、明るい声で「こんばんは。今日も元気じゃね」。ごくうの側を通り過ぎるとき、エアー撫でする。

時が経てば、ごくうを可愛がる人も変わり、変化して行く。ごくうは子供の頃、出会う人に可愛がってもらえるのが嬉しかったようだ。しかし、最近は散歩に専念するかのようにあまり関心を示さない。ごくうはもう中年だ。

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