見出し画像

山深い村の娘

標題画像:Chiro (Chihiro Takatsuka) 「メンズの白いドレスシャツ」https://note.com/chirock_xxx/n/n5f01e2cec4ac

岩国駅から錦町駅まで錦川に沿って「錦川清流線」という鉄道路線がある。岩国駅から西北西に40km行ったところに河山駅がある。駅舎は現役で、停車駅となっている。1日の平均乗降客数は13人とごく僅かである。「錦川清流線」は日に10便が運行されている。寒村の鉄道路線といえば、語弊があるだろうか。いわば、情緒ある路線である。

この駅の近くには集落があり、鮎料理を出す料亭もあった。近くには河山鉱山の跡地(現在は観光地)がある。錦川の支流を遡ると、山間部に導かれる。いくつかの支流が分かれているので、支流を辿っていくと、山深い所に集落が点在する。

所用があって、錦町に車で向かった。時間が少し早かったので、途中、河山駅に立ち寄った。この当たりは朝靄が霞む。もう朝靄は晴れていたが、初夏近くなのに、まだ朝の冷涼さが残っていた。駅のホームへ階段を上っていく。ホームに立つと、線路が左右に長く伸びている。「岩日線」(岩国と日原を結ぶ鉄道:途中錦町までしか開通していない)と言われた頃、何度も利用した。

駅のホームで左右の鉄路を懐かしみ、ホームを鉄路に沿って降りていった。目を上げると、白い綿のワンピース風の服を着た人が飛び込んできた。レールから離れて置かれている枕木に女子が座っている。

「こんな所に」

若い女性だった。着こなしも「サマ」になり、座り方も「サマ」になっている。

驚きが頭を掠める。女子も驚き、持っている鞄に目を落とす。こんな過疎の駅に若い乗客がいようとは。驚いたまま立ち止まる。ファッション誌から抜け出てきたような女子が清々しく、品良く、風景に溶け込んでいる。

頭に意味の無い驚きがこだましている。「こんな所に」

まるで、若い女性誌の表紙を飾るような雰囲気にたじろいでしまったが、軽く会釈して立ち去る。列車の轍の音が聞こえてきた。女子は立ち上がり、ホームに向かって行った。

ーーー続く(かな?:ここまではfact、ここからはfiction)

参考
・河山駅(山口県岩国市)https://goo.gl/maps/CQKXYSj4VYL6mfVM7
近くには、岩国市・錦帯橋、広島県・宮島がある。

岩国駅から河山駅