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ごくうが行く:狙った獲物は逃さない

おび

カワセミが獲物を狙っている。ごくうは獲物を見つけると、散歩コースを変える。獲物と言っても食する訳ではない。ただ、可愛がって貰い、撫でて貰うだけである。

「あれっ」

いつもの散歩コースを外れた。ごくうの行く先方向を見ると、1才超の男の子と、母親が散歩している。散歩と言っても、ただ外に出て空気に当たりたいだけのようだ。

ごくうは途中マーキングしながら親子に近づいていく。親子はごくうに気がつき、ごくうが近づくのを待っているようだ。

歩くのもおぼつかない男の子は指をさす。

「あれ、ワンちゃん」

母親は用心もしないでごくうが近づくのを待っている。子供に用心するように言わないし、保護するような態度も見せない。ごくうは男の子にたちまちの内に近づく。男の子に挨拶すると、すぐに母親に挨拶する。母親はごく普通にごくうを撫でる。

「ワンちゃん、可愛いね。」

母親は男の子に撫でるように促す。男の子はそれに応えてごくうを撫でる。親子が撫で終わったので、ごくうはもう次の行動に移る。ごくうはドライだ。

ごくうは歩道でもないのに道路を横断しようとする。母親は「危なかしいな」という表情で見守っている。車の切れ目で、ごくうは道路を横断する。母親は気配りしながら、「ほっ」としたのか、子供の手を取って集合住宅の方に勾配の緩やかな坂道を降りていく。ごくうは元の散歩コースに戻っていく。

ーーー

「今日は親子ずれに可愛がって貰ったよ。あまり用心しなかったのが不思議なんだよね。」

「どこで。」

「マコちゃんのアパート近くだよ。」
注)マコちゃんはごくうのガールフレンド

「じゃ、マコちゃんのお母さんから聞いているんじゃない。」

「あっ、そうか。もう、ごくうのことは聞いているんだ。」

ごくうはお家に帰って、今日はどういうわけか、食事をした。昨日は4度も5度もご機嫌取りながら食べさせたので、ホッとする。

おび