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ごくうが行く:真夏の乙女

標題画像:無印MUJIから。

おび

真夏の乙女は洗いざらしの白いTシャツと海色のスカート

ごくうは散歩が大好きである。散歩予定時間の30分を切ると、クーン・・・クーンと鼻泣きする。散歩時間10分前になると、ワンとこれ見よがしに吠える。予定の散歩時間を過ぎると、怒るように吠える。「ワン・・ワン」。

昨年の夏、いつもの上手の散歩コースを歩き、団地の入り口に差し掛かった。いつも可愛がってくれるおばあさんに出会えなくても、ごくうは自分の気に入るように歩くだけである。

団地入り口付近でおばあさんと孫と思われる二人ずれに出会った。ごくうは気になる人が現れると、近寄り、「可愛がって」と上を向いて促す。

孫の娘さんは、小さいとき、おばあちゃんに相当可愛がって貰ったのだろう。おばあさんを思いやるように散歩している。その気配など構いもせず、ごくうは二人に近づいていく。孫の娘さんがおばあちゃんを気遣いながらも、近寄ってきたごくうを可愛がろうとした。

その場所が交差点近くだったので、車が2台交差するように擦れ違った。孫の娘さんは、ごくうを可愛がるのを止め、おばあさんのエスコートに専念した。ごくうは諦めて歩き始めた。交差点を渡ると、すぐ車がまた交差していく。

おばあさんをエスコートする娘さんは、洗いざらしの白いTシャツに、海色のスカートを着ている。娘さんは帰郷するたびにおばあさんと夕方の散歩を楽しみにしているのでは、と思いながらごくうに付き従っていく。

孫の娘さんはしっかりとおばあさんをエスコートし、車がクリアーされたとき、おばあさんを気遣いながら交差点の反対側に回るように歩き出した。ごくうは歩道をマーキングしながら歩き下っていく。ふと振り返ると、洗いざらしの白いTシャツと海色のスカートが翻って、孫の娘さんはおばあさんと角を曲がって行った。

おび