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ザクロは何の役に立つたか

画像:速水御舟『鍋島の皿に柘榴』

好きな画家に「御舟」がいる。御舟の繊細な筆遣い、吸い寄せられる。御舟は岸田劉生やドイツのアルブレヒト・デューラーらの写実画から刺激を受けたという。確かに、日本画とは違う油彩画的表現を感じることができる。「鍋島の皿に柘榴」は好きな作品である。

ザクロは最初薬草(幹や根の皮を薬に)として導入された。農作物から寄生虫が体内に入り込み、それを駆除するためであった。しかし、副作用が強いため利用が廃れていった。

ザクロは植物として特色がある。萼が壺(タネが入っている)のように大きくなり、特異な形になる。残念ながら果肉ができないので、タネの周りに付いている透明な「仮種皮」(種衣ともいう)を食べることになる。売られているアメリカ産のザクロを食べるには、上下の皮をそれぞれ切り取り(上の部分が重要)、その後2つ~4つに分割すれば、仮種皮の付いたタネの塊を取り出すことができる。口に頬張れば酸っぱい。

食用と漢方薬として利用される以外に、ザクロは役立ってきた。日本最古の鏡「三角縁銘帯四神四獣鏡 」は裏の模様が印象的である。しかし、表面は鏡となっている。平安朝の頃でも、鏡は金属製(銅鏡)であり、使う内に、鏡面が曇ったり、くすんでくる。

*鏡に草花や鳥や蝶など自然の風物の模様を入れた『和鏡』が作られるようになり、やがて、室町時代頃になると、鏡に柄が付き、『柄鏡』となる。

鏡面をザクロの種を包んだ布で磨いて貰う。専門の鏡磨き屋がいたようだ。ザクロのタネの表面に纏わり付いている仮種皮には、クエン酸やリンゴ酸の有機酸が含まれている。これらの有機酸が鏡面の曇りを取り除いてくれる。

*伊沢凡人・会田民雄(1999)『薬草カラー図鑑』家の光協会。
*NEWS ONLINE 編集部・ニッポン放送(2017年12月04日)「水鏡に銅鏡、和鏡、柄鏡…めくりめく日本の鏡の歴史」。