ごくうが行く:中学2年生が5年経ち、
キング(先々代犬)は夜の散歩がほとんどすべてだった。さくら(先代犬)が来てからも夜の散歩がほとんどだった。さくらが老齢になり、白内障が出ていた。さくらといつものように散歩していたところ、坂を降りているとき、上がってきた車のライトがさくらの目に飛び込んだらしい。さくらはビクンとし、驚き怖がった。
それ以来、散歩時間を夕刻にシフトした。春と秋には中学生の下校時と重なる。時には、団地から出て中学生の列の中に入り込み、散歩に出かける。時には、中学生の列と逆方向に団地に帰っていく。中学校の指導方針で、出会った人には挨拶するように指導されていた。散歩中に出会うと、口々に「こんにちは」と元気よく発する。
さくらは人の集団が好きではない。盆踊り会場に入ったとき、人混みを怖がった。しかし、中学生の列には馴染むように一緒に歩いていた。行きも帰りも中学生の列に出会っても怖じ気づくことはなかった。
ごくうが新学期まもなくやってきた。さくらと同じように、夕方に散歩する。ごくうは中学生の列を見ると、紛れ込むように散歩する。人数が多いときには一緒に歩くが、少ないときには、ごくうは列に混じり込み、近づいていて行き、足下まで来ると、上を見上げる。中学生はごくうの誘いに乗るかのように立ち止まって可愛がる。
ごくうが散歩するとき、ミハルちゃんに出会った。ミハルちゃんのお姉さんは中学2年生だった。思春期なのに、ミハルちゃんがあまりにも喜ぶので、仕方なくごくうと遊ばせたのだろう。そのお姉さんとは散歩で出会うと、必ずミハルちゃんを寄せてくる。高校生になり、散歩で良く出会い、この春卒業し、お盆に帰省したとき、ダメージジーンズのミハルお姉ちゃんとお母さんに、ごくうは可愛がって貰った。ごくうはミハルちゃんにいつも押され気味になる。
中学2年生の列の中に、高校時代に散歩でよく出会う子が二人いた。散歩中に、高校の下校時とよく重なっていた。一人の女の子は、とうとう雨降りの中で濡れているごくうを撫でに来た。
ごくうが行く:雨傘の女子高生
https://note.com/tsutsusi16/n/n105d8e625690
もう一人は高校2年生の終わり頃、ごくうの散歩が長くなり、よく出会うようになった。自転車通学で、後ろから追い越して行く。しかし、信号で一緒になると、ごくうを見ながら微笑んでいた。そのうち、会釈をし始めた。
いつも家の前で安全を確認して自転車を押しながら横断する。ごくうはお構いなしに歩き去って行く。高校3年生になったある日、信号で一緒になったお姉さんは自転車を押しながらごくうの後を付いてくる。追い越すのを諦めたらしい。自分の家まで来ると、ごくうを振り返りながら自転車を押して帰宅する。
高校3年生の最後の年が明け、コロナの真っ最中に高校を卒業する時期が迫っていた。ごくうの散歩しているとき、彼女の家の前で追いつかれて道を譲った。振り返り気味にその女子高生は美少年の微笑みを残し、自転車を押して家に帰った。
夾竹桃の花④ 紅顔の美少女
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