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夾竹桃の花-プロローグ

プロローグ

広島は「ヒロシマ」Hiroshima、長崎は「ナガサキ」Nagasakiと表記されることがある。1946年に「Hiroshima」を見出しとする記事がThe New Yorkerに掲載され、アメリカに衝撃をもたらし、世界に波及し、「Hiroshima」は世界共通語となった。(参考:記事①、②)

記事①:John Hersey (August 23, 1946), 'HIROSHIMA,' The New Yorker. これは、John Hersey (1946), 'HIROSHIMA,' Alfred A. Knopfとして出版される。※「Alfred A. Knopf」は出版社名。訳として、石川欣一・谷本清訳(1949)『ヒロシマ』法政大学出版局がある。
記事②:John Hersey (July 7, 1985 ) , '1985Hiroshima: The Aftermath : Survivors’ stories,' The New Yorker. これは、John Hersey (1985 ) , 'HIROSHIMA [New Edition], Alfred A. Knopfとして出版される。記事①に、その後のヒロシマが追加されて出版された。訳として、石川欣一・谷本清/明田川融(2003)『ヒロシマ』[増補版]法政大学出版局がある。この訳は2014年には[増補版/新装版]が発行されている。

広島の市街地は太田川の下流デルタ域に形成されている。そのほぼ中心部が爆心地となっている。そのため、原爆投下後の被害は大きく、多数の人々が瞬間的に「殺消」されたり、回復不能な重篤の被害を被った。その悲惨さ、惨さは筆舌に尽くしがたいが、表現の可能な限りで、多くの被爆体験が記録されている。

例えば、雄鶏社臨時増刊号にも見られる。
・玉井禮子「私はヒロシマにいた」『特選記録文学』[雄鶏社通信臨時増刊]雄鶏社、1-12。
・星野春雄(1949年10月)「その日の広島女高師」『特選記録文学』[雄鶏社通信臨時増刊]雄鶏社、131-160。

本の形態としては次がある。
語り・米澤鐵誌/文・由井りょう子(2013)『ぼくは満員電車で原爆を浴びた』小学館。

原子爆弾の投下によって生じたさまざまな凄惨な出来事を題材とする文学が誕生し、原爆文学と呼ばれることになる。原爆文学は、被爆作家である作品から始まり、被爆を経験していない作家へとひろがる。

被爆作家作品の代表的なものとして挙げる。
・原民喜(1947年)『夏の花』、(1947年)『廃虚から』。
・大田洋子(1948年)『屍の街』、(1951年)『人間襤褸』。 
・峠三吉 (1950) 『八月六日』、 (1951) 『原爆詩集』。
・永井隆(1946年)『長崎の鐘』、(1948年)『この子を残して』。

植物は短期的・一時的に大きなダメージを受けたが、成長期にあるものや花期を向かえていた草木は、いわゆる「狂い咲き」を見せる。「瓦礫の間からのび、溝に生え、川岸に登り、川原やトタン屋根に絡み、黒焦げの幹に這いのぼり、すべてを埋めつく」すように生えた。そのような草木には、バラ、ヤグルマギク、ユッカ、アカザ、アサガオ、ワスレナグサ、ダイズ、マツバボタン、ゴボウ、ゴマ、キビ、ナツシロギクが報告されている。注1)原子爆弾は植物の地下の組織には影響を与えないばかりか、刺激を与えたと思われる。注1)
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注1)John Hersey、石川欣一・谷本清/明田川融訳『ヒロシマ』[増補版、新装版]、法政大学出版局、89頁。

キョウチクトウも地上部では影響を受けたが、地下組織は刺激されたのか、成長していったと思われる。原爆投下後まもなくにも関わらず、成長していく姿が人々に驚きを持ってむかえられた。

原子爆弾は、「閃光Flashを放った後も、長いこと死をもたらし続ける」といわれるように、後々まで大きな影響をもたらし続ける。また、原子爆弾の被害者は「被爆者」として様々な社会的問題に直面する。

広島の平和公園にも、夾竹桃が植栽されている。夾竹桃が生えているヒロシマを舞台として、復興を遂げ、経済発展過程の同じ時期に広島で遭遇した若者二人(中川和子と朝倉拓)の物語である。中川和子は幼少の時に、爆心の臨界部外で被爆したが、成長し、高等学校に通っている。高校2年次のとき、隣県から大学に進学してきた朝倉拓と出会い、受験勉強を通じた交流を行う。

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『夾竹桃の花』


第1章 夾竹桃の花 https://note.com/tsutsusi16/n/n9cb954d68557
第2章 御幸橋 https://note.com/tsutsusi16/n/nfaa2383b6842
第3章 薫風寮 https://note.com/tsutsusi16/n/na11e000c2c34
第4章 紅顔の美少女 https://note.com/tsutsusi16/n/n73ddebdb2e8a
第5章 制服 https://note.com/tsutsusi16/n/n4486b4f86c7e
第6章 私服 https://note.com/tsutsusi16/n/nec4b4d663220
第7章 植物学 https://note.com/tsutsusi16/n/n56041a915923
第8章 原爆の子の像 https://note.com/tsutsusi16/n/n15c03674dc01
第9章 植物図譜 https://note.com/tsutsusi16/n/nb55fea579c4a
第10章 友人の発症 https://note.com/tsutsusi16/n/n52382a8174b1
第11章 覚えておいてね https://note.com/tsutsusi16/n/n4a8f0b54d05c
第12章 爆心点 https://note.com/tsutsusi16/n/n0cb99cfb7811
夾竹桃の花-エピローグ「夾竹桃の図譜」https://note.com/tsutsusi16/n/n7a592a171b59/

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付録:キョウチクトウの植物図譜
・梅園草木花譜(下左)
毛氏江元寿梅園直脚<毛利梅園>//書画并撰著『梅園草木花譜』夏之部(5)、76種(内;雑を含まず71種)が収められている。国会図書館デジタルコレクションhttps://www.dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1287287に収められている。夾竹桃は5巻53コマ目。

画像1

・植物写生図帖(上右)
松平頼恭編(讃岐国高松藩5代藩主)『植物写生図帖』写本、2帖、175品が国会図書館デジタルコレクションhttps://www.dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/8942738に収められている。夾竹桃は上巻11コマ目。

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