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縁側

老爺がいた
老爺は毎日縁側で足をスリコギにして何かをすりおろしていた
毎日毎日同じことを繰り返していた
いつの時代かって
いまのことだが
いまはもう縁側なんてほとんど見ることがない
庭なんてなくなって
ひとが庭から縁側にくるなんてなくなった
それでも爺さんは
毎日縁側で足をすりこぎにして何かをすりおろしていた
それがなんなのかはわからないが
毎日一生懸命やっているので
足が前よりも短くなったようだ
そう思って注意してみていると
キリンのようだった脚が
いまでは牛のようになっている
なにかをすりおろしているのではなく
足をすりおろしていたのだろうか
爺さんはじぶんをおろして消そうとしているのだろうか
ばあさんは元気かと聞けば
ばあさんは元気
ヘーゲルとかバタイユとかいうのを勉強しているという
爺さんはそれが何だか知らないという
でもヘーゲルとかバタイユはすごく役に立つという
ばあさんがそれを勉強しているときは世界が平和
それを勉強するだけで世の中を平和にするなんて
よっぽど効き目のあるものに相違ない
今度ジイにも飲ませてくれといったら
飲むもんじゃないぞ
読むもんだぞ
でもメロンソーダみたいに美味しいといっていたそうだ

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