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THE AMBIENCE OF SPORTS

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カメラマンとして残したいのは「カッコいい瞬間」です。僕がみつけたカッコいいを御覧ください^^
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2020年6月の記事一覧

THE AMBIENCE OF SPORTS vol.35

ボブスレーを生で観たことがある人がどれくらいいるか分からないけれど、その迫力は想像以上だと思う。 フォトポジションでソリを待つ。遠くの方から氷を削る音が近づいてくる。くねくね曲がりくねったコースだから、ストレートは短い。カーブの出口で姿を確認する。 「ゴゴゴゴゴオオオオオオオオオオ」 一瞬で駆け抜けてゆく。ぶっちゃけ走行中にピントを合わせるのは、カメラの性能が上がった現代でも難易度が高い。 最高速度は時速130キロ。 氷上のF1とも呼ばれる所以だが、手を伸ばせばソリ

THE AMBIENCE OF SPORTS vol.34

ビーチレスリングをご存知だろうか。文字通りビーチでレスリングをするのだけれど、国際レスリング連盟が正式種目として承認したのは2004年だから、歴史はまだ浅い。 IOCは若者のスポーツ離れを懸念して、ビーチ競技の発展に力をいれているようで、ワールドビーチゲームズを2019年に開催した。それに先立ってアジアビーチゲームズは2008年から行われている。 日本で話題になることはあまりないけれど、開催都市はバリ、マスカット、海陽、プーケット、ダナンと一度は行ってみたいビーチリゾート

THE AMBIENCE OF SPORTS vol.33

写真を始める前に勤めていた出版社で僕はカスタムバイクの編集者をしていたのだけれど、すぐ横にオフロードバイク専門の編集部があって、退社したあとも何度か撮影の機会をもらっていた。 2003年当時、日本でフリースタイルモトクロス(FMX)は新しいジャンルの競技だった。もともとモトクロスのレース中に観客へアピールするためにトリックを魅せていたのが始まり(らしい)。そこから派生して、速さではなくトリックの完成度を競うようになったのがFMXだ。 日本ではなかなか市民権を得られないジャ

THE AMBIENCE OF SPORTS vol.32

カヌーとカヤック、そしてボート。 カヌー・カヤックとボートの決定的な違いは前者は漕ぐ方向に前進して、後者は後進する点だ。 そして、カヌー・カヤックの違いはオールの形。オールの両方に水かきがついているのがカヤック。片方だけなのがカヌー。 写真を撮っていて楽しいのはカヌー・カヤックのスラロームだ。コース内に設置されたゲートをくぐり抜けながら、ゴールまでの速さを競う。 中でもホールと呼ばれる段差に作られる小さな滝壺みたいなところに勢いよく突っ込んでくる瞬間は写真的に最も絵に

THE AMBIENCE OF SPORTS vol.31

秋晴れの明治神宮。 木々のざわめきと鳥のさえずりが聞こえる。 スススと進むすり足。床を滑る音。スッと腰をおろし一礼。再び立ち上がり一歩二歩。腰を下ろして回れ右。正された姿勢。弓を立て、矢を整える。衣擦れの音が聞こえる。無駄がなく正確な動作。 三度立ち上がり弦を引く。「キッキキキ」と弓が鳴く。 時が止まる。 「ターーーーン」 乾いた音とともに放たれる矢。 「ヒュ、、、、タンッ!」 空気を切り裂く鋭い音と少し遅れてやってくる的中を知らせる音。 競技者が次々と矢を

THE AMBIENCE OF SPORTS vol.30

女子レスリングが世間で注目を集めたのはオリンピックに正式採用された2004年のアテネ大会だ。 伊調姉妹に浜口京子、そして、吉田沙保里。エントリーした全員がメダルを獲得した。この4人の強さは圧倒的で次の北京大会でも同じメダルを手にして、その後、吉田沙保里は3連覇、伊調馨にいたっては4連覇。ハッキリ言って凄すぎる世代だ。 それまで4度も世界女王になり、女子レスリングを引っ張ってきた山本聖子もアテネを目指した。しかし、世界選手権よりも階級が少ない五輪にはあと一歩届かなかった。ラ

THE AMBIENCE OF SPORTS vol.29

400mmの望遠レンズでサッカーを撮影するとき、僕は基本的に一脚を使う。 サッカーは横の動きが多いし、ずっと待つこともあるから、重たい超望遠レンズをずっと手持ちして待機しているのはかなりキツイ。 これはサッカー撮影あるあるだけれど、選手が突然、高く飛び上がるときがある。例えば、ゴール後の喜びやハイボールをトラップするときだ。 一脚は横の動きには強いけれど、急な縦の動きには弱い。セットプレーとかヘディングとか予め飛ぶことが予想できていれば問題なけれど、急に高く飛ばれるとだ

THE AMBIENCE OF SPORTS vol.28

子供の頃、兄がアメフトのファミコンゲームをよくやっていた。49ersとジョー・モンタナが全盛期だった。 だから、僕世代ならアメフトに詳しくなくてもジョー・モンタナとクォーターバックというポジションを知っている人は多いのではないだろうか。 90年代に入って、怪我に苦しむようになったスーパースターが日本のテレビCMに出演した。 やけに明るい久保田利伸の音楽にのって、肩パッド入りのスーツを着た牧瀬里穂が共演していて、NFLのスーパースターに「どんなモンタナ(もんだな)」という

THE AMBIENCE OF SPORTS vol.27

ゲレンデを広く使うスキークロスとは異なって、モーグルは最大37度、壁のような傾斜に2つのエア台と無数のコブを作って、全長200メートル程度のコースを使う。 フォトポジションへ行くには機材を担いで登るしかない。仮にスキーを使えたとして、壁のような斜面を滑る気にはなれない。 ゴールエリアから登っていくと第2エア手前あたりで、普段の運動不足を呪う人が多数続出することは間違いない。太腿に乳酸が溜まりまくって3歩上がって一休みをひたすら繰り返す。「そんな大げさな」と思うかも知れない

THE AMBIENCE OF SPORTS vol.26

スキークロスはフリースタイルスキー種目のひとつで、複数の選手が同時にスタートしてゴールを争う競技だ。 コースはゲレンデに作らるから、カメラマンもリフトで登ってからフォトポジションまで降りていく。スキー取材に慣れている人は板を履いて華麗に滑り降りていき、慣れていない者は汗だくになりながら歩いて移動する。 スキーのコースだから結構な勾配があるわけで、スキーどころか雪にも慣れていない都会の取材者の中には機材ごと滑落しちゃう人もいる。だから、アイゼンは必着です。 フォトポジショ

THE AMBIENCE OF SPORTS vol.25

重量挙げの撮影をする機会は多くはない。 もっと行きたいと思うのだけれど、タイミングが合わなかったり、行くのを躊躇してしまうくらい遠くでやっていることが多いからだ。 初めて重量挙げを撮ったのは東日本の学生の大会だっただろうか。 どうすれば良かったのか分からないまま撮っていたであろうことだけが伝わる写真がHDDに残っていた。 このときスローシャッターで縦の一瞬の動きをちょこっとだけ追いかける撮り方を編み出した。自分の撮り方が完全オリジナルだというつもりはなく、あくまで自分

THE AMBIENCE OF SPORTS vol.24

日本でフリーのスポーツカメラマンをしていると野球に接する機会は想像以上に少ない。たまに撮影の機会を得られたとしても、フォトポジションが限定されるから人と違う写真を狙うのが難しい種目だ。 比較的自由に動けるのは外国に行ったときだ。このときは台湾でおこなわれたアマチュアの世界選手権的な大会でキューバ対オランダは決勝戦だ。ちなみに日本代表を準決勝で破ったのはこのオランダ代表だった。 この頃、オランダは野球の国として欧州で頭角を表し始めていた。 「えーー日本が野球でオランダに負

THE AMBIENCE OF SPORTS vol.23

シンクロナイズドスイミングの名前がアーティスティックスイミングに変わったことをご存知だろうか? 実は僕も結構最近知った。というか、取材にいった現場で知った。 ソロ種目や芸術性の高い演技を求められる種目に「同調」を意味するシンクロナイズドが合わないからという理由らしい。 もともとはデュエットやチームでの同調性を競う側面が強かったから問題はなかったけれど、今回の名称変更は競技が進化することによって新しい要素が増えた証といえるのかも知れない。 それでも慣れ親しんだ呼び名を捨