見出し画像

日記#77「分子ガストロノミー器具を買いはしない」220106

・やべっ、日記を書くのを忘れてしまっていた。

・しかし言い訳させてほしい。一昨日はリハーサルの後に二方向から同時に飲みに誘われ、行った先の飲み屋にたまたま有名なギタリストがおり、突発的にセッションが始まり、すっかり上機嫌になって飲み過ぎてしまったのだ。これでは日記など書けない。嬢ちゃん、そこまではわかるな?

・そして昨日は飲み過ぎた反動で""本当に""一日中潰れてしまっていたのだ。本当に一日中だ。辛そうだろう? その上夜にリハまであったのだからね。これでは日記のことなど頭から抜け落ちていても仕方がない。そういう事情だ。分かったら席に戻りなさい。

・昨日に関しては単なる自分の管理不足です。


・楽器のエフェクターやデジタルシンセを操ることが好きな人は、機械と対話するのが好きなのかなと思う。それらの音を完全に自分のコントロールの下に操るのは技術であり知識である、ということを前提に、機械から返ってくる反応はときに予測しないものとなる。AとBを同時に操作したら予想もしていなかったおもしろい音が鳴った、とか。そうした裏切りによる感動は人との対話においても同じことが起こり得る。自分の語彙や考えの範疇の外からの言葉や反応にウケたり驚いたり怒ったり悲しんだり……そうしたあらゆる感動は予測の裏切りかな成っていて、それを享受できるのは人間との対話もそうだし、エフェクター等の機械との対話でも同じだ。

・そしてそれが漫才を見たり小説を読んだりすることとどう違うかというと、やはり自らエフェクターや相手の人間に対してアクションを仕掛けていることだ。つまりはリアクションの楽しみなんだな。テニスのように球を打って打ち返されてまた打って。対話は勝ち負けが決まるものではないが、打たなくては、また打ち返さなくては成立しない。エフェクターをいじって変な音が鳴ったら、じゃあ次はCをいじったら、Dをいじったらどうなるか。打って、打ち返されてだ。こうした試行錯誤のように対話を楽しんでいるのではないか、と思った。

・ちなみにぼく自身はエフェクターとか苦手だ。細々した機械類が苦手なのだ。だからMIX、マスタリングなんかも大の苦手であるし、せっかくのDAWもまともに機能を使っていないと思う。

・そう考えると、なんとなく「DTM」という響きに憧れ、バイトして数万円のDAWやインターフェースやボーカロイドなんかを購入した当時高校生の自分をなかなか褒めてあげたい。よく頑張りました。

・とはいえ、これを裏返すと当時からやはり受動的に物事を選択してきたんだな、とも思う。一見自ら選んでいるようではあるが、「とりあえず音楽やるには必要らしいから」という理由で買ってたんだから、やはり受動的な選択だったんだろう。おそらく今、例えば料理を本格的な趣味としてやるとしても、必要らしいからという理由で圧力鍋と寸胴と分子ガストロノミー器具を買いはしないだろう。自分の作りたい料理とは、そのため必要なものは何かを考え、調べて買う。10数年経ってそれくらいの考えは身についたらしい。

・とはいえ、スポーツジムに通い始める前にウェアやシューズを一式揃える、そんな人間です。ぼくは。


・そういえば今日は2022年のレッスン始めだったな。正月の話を聞かれたが、数日前の日記で書いたように不調が続いていたので何も言うことがなかった。この時ばかりはつまんね〜〜〜答えを返したなと思った。

・話の流れでA Tribe Called Questを推薦したら気に入ってくれた。Low End Theoryは本当に名盤だよな。モノトーン以外の色味を徹底的に排除したアルバムの作りには驚嘆してしまう。少しくらい色彩を、少しテンションを変えた曲を、と守りに入ってしまいそうなところを、むしろ一歩二歩踏み込んで病的なまでにコンセプトを突き詰めた音作り、本当に素晴らしいよね。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?