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TCP2022脚本部門2次審査員インタビュー(厨子健介プロデューサー)

こんにちは!TCP公式note編集員のHikaruです。今回は、先日開催されたTCP脚本部門2次審査にて、審査をご担当された厨子健介(株式会社セディックインターナショナル)プロデューサーに、TCP学生応援団の二人がインタビュー。前回の遠山氏インタビューに次いで、2回目となる今回もTCP審査に込める思い、ご自身の映画に対する想いを様々語っていただいています。

(以下敬称略・TCP学生応援団取材 & 執筆)

川上&寺園:TCP学生応援団の川上と寺園です。本日は貴重なお時間をいただきありがとうございます。本日は厨子さんに、脚本部門二次審査について、また映画全体に関することをいくつか質問させていただきたいと思います。よろしくお願いします。

厨子:よろしくお願いします。

川上:早速ですが、脚本部門二次審査に関して、例年と比べて傾向はどのような違いがありましたか?

厨子:企画・監督・脚本を全てやっているので、全体の傾向になるのですが、2022年であれば例えばマルチバースの企画、2020年ぐらいまではAIなどその時々の最新技術や社会問題をテーマにしたものが多くなる傾向はあるようです。

寺園:二次審査ではどのような点に注目しているのでしょうか?

厨子:審査員それぞれ考え方が違うので、僕の考えですが、全部門を通じて、どうすれば面白くなるのかなという視点で臨んでいます。僕自身も企画開発に携わっている身なので、審査するというよりは、一緒に企画を開発する場になればいいなと思っています。というのも、僕は企画を意識的に人に話すようにしています。人に話すことで、人が自分の企画をどう感じるのかが分かりますし、そこに新たなアイデアのヒントがあったりすることも多いため、この二次審査が参加者にとって、そのような場所になるといいなと思って臨んでいます。

寺園:審査する側も一緒に作りたいと思っているというのが、TCPの特徴のように感じます。

厨子:そうですね。企画コンペは、これから具現化する企画を応募するコンペで、ここから膨らんでいくという意味で面白いですよね。僕自身、映画をやっていて、企画している時が一番楽しいですし。

川上:話し合いの場としての意味合いがあるとしても、やはり選ばなければならない立場にあると思います。その基準というのはどういうものがあるのですか。

厨子:セディックで学んだことですが、企画を発想する上で、「人が聞いた時に、クエスチョンマークが生まれるかどうか」は大事にしています。疑問が生まれるということは、興味や引っかかりがその企画にあるということだと思っています。そうした視点は、自分自身の企画でも基準になっています。

寺園:次に厨子さん自身について少しお伺いしたいと思います。どのようにプロデューサーの道に進まれたのでしょうか?

厨子:
大学時代は、映研に入って、映画館とレンタルビデオ屋を掛け持ちバイトしているような、映画づけの学生生活を送っていました。その後、一般企業に就職してからも、映画美学校に通ったり、シナリオ作家協会の脚本講座に通ったりしていました。30過ぎごろに知人を介して「おくりびと」などのプロデューサーである中沢敏明プロデューサーと出会い「脚本を学んでいるなら書いてみるか?」と声をかけて頂き、脚本家として関わったのが映画業界に入るきっかけでした。その後、気がつくとセディックインターナショナルの社員として製作委員会などに出席するようになって、プロデューサーの仕事がメインになり、今に至ります。

川上:企画開発はどのような流れで行われるのですか?

厨子:企画の発端は、色々な形がありますが、人と話していて盛り上がってそのまま一緒に映画化に至ることもあれば、新聞記事が発端になったり、また出版社さんより映画化のご相談を頂いたり、俳優さんやクリエイターの方など社外より頂いたご相談から始まるケースもあります。

川上:そんな色々な企画の始まり方があるのですね。

厨子:映画の企画を探す目的でなくても、本を読んだり、ドキュメンタリーを見たりして、映画にしたら面白そう、と始まることも多いです。僕がプロデューサー業を一から学んだ、師匠とも言うべき中沢は、企画の発想・着想の仕方が本当に豊かなプロデューサーで、中沢と意見交換している中で生まれ、脚本家の方にプロットを作って頂いたこともあります。でも、映画業界での立ち位置もあり、うちの会社は企画の作り方が少し特殊かもしれないです。

寺園:お話を聞いているとすごく面白そうです。

厨子:楽しいですよ。企画が膨らんでいくのは。

川上:自分が頭に浮かんだものが現実になって他の人に知られる快感というのはありますか?

厨子:僕は快感ということではないですが、妄想をいかに実現するかということに夢中にはなります。あと、映画を作る大目標として、中沢とはよく話すのですが、お客さんがポップコーン片手に映画館の座席に座ったものの、気づいたらその食べる手が止まっていた、映画が終わってもポップコーンが全然減っていなかった、それほど夢中になって観てもらえる映画を作れたらいいなという話はします。

川上:もちろん大変なことがあると思いますが、楽しさを感じる要素がたくさんあるのがすごいです。

厨子:大変なことも多いですが、少なくとも楽しさが大変なことに優っているのでこれまで続けてこれているのだと思います。あと、色々な人に会えるのも楽しいですよね。色々な人が混ざりながら一つのものを作り上げていくというのは、刺激的ですよね。

寺園:TCPに関わる上で普段から映画に関わっている人とは異なる素人性を感じる部分があると思いますが、それについてどうお考えですか。

厨子:映画を生業にしているかどうかが、質問にある素人性を意味しているのだとすれば、個人的には、その区分けはないです。例えば、脚本家は技術職ですので、そこは明確に素人と玄人の差が出ますが、企画に関してはそうした意味での素人・玄人はないと思います。企画の種は年齢、経験など関係なく誰もが発想できますし。変な話、毎年彼女の誕生日プレゼントをびっくりして喜ぶようなことを考えられる人は、映画の企画も面白いものを考えられるんじゃないか、って。人にどう喜んでもらえるか、どう笑顔になってもらえるか、どう夢中になってもらえるか、根っこは変わらないですよね。

川上:少し厨子さん自身のお話に戻るのですが、大学時代にやっておいてよかったことはありますか。

厨子:映画を観られる時にたくさん観ておくのは、自分の中に溜まるものとしてやはりあるのかなと思います。あとこれは学生時代に関わらずなんですが、できるだけたくさん海外に行った方がいいと最近改めてよく思います。世の中にはとても多くの価値観が存在していることを知ることができるというのは大きいですよね。僕自身、小学校一年までと中学の一時期を海外で過ごしていたのもあります。

川上:僕も夏休み海外に行っていたのですごく共感できます。

厨子:そうですか。自分がその場所でマイノリティになった時に気づくことというのは多くありますよね。

寺園:僕はアニメが好きなのですが、日本のアニメを、海外のアニメが取り入れてさらに新しいものにしていくという面白さがあるので色々な発見がありますよね。

厨子:自分が知らないことを知ることは楽しいですよね。綺麗事かも知れないですが、そういう気持ちで、相手のことを尊重し受容できれば、戦争なんて起きないのになと思います。

寺園:混じり合った方が強くなれるのに、一部の利害のために排除されるというのはおかしいですよね。

厨子:楽しい方がいいですからね。僕の師匠の中沢にも「楽しみながらやれ!」とよく言われます。大丈夫ですか、大分TCPと関係ないところにきていますけど笑
 
川上:大丈夫です笑 とても為になる話で面白かったです。
 
川上&寺園:本日は貴重なお話をありがとうございました!
 
厨子:ありがとうございました!