淫靡なクロエ
幾度も味わった
いつかの夢を引っぱり出してはまた
目の前の海に溺れる
朝も夜もおかまいなしに
水をひとさじ口に含むごとに
肺の中で睡蓮の蕾がひらいていく
この身体で
何度も何度も水を飲み続けることの意味を
あなたは知らない
花が咲いてしまう前にと
全身に巡る弦を張りつめて
淫靡な調律を続ける
ノイズを除去した
原音を響かせたい一心で
いつか あなたから注ぎ込まれるそれを
一滴残らず飲み干してやりたい
貪欲なまでに
「いっそ殺して」
その言葉を口にできる日を夢想しながら
最後の花びらが皺を伸ばしてしまう前にと
狂った弦の在り処を探る
指先を濃く濡らして
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