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ウクライナ戦争 11


今回のウクライナ戦争で、なぜ、ロシアは苦戦を強いられているのか。これには理由があるという指摘が多くある。それは、ロシアはハイブリッド戦争に敗れているという指摘だ。

ハイブリッド戦争は、戦争を二つの概念で分けて語る。一つは、「軍事的手段」によるもの、二つ目は、「非軍事的手段」によるもの、この二つが組み合わさって、戦争は行われるというのである。いわゆる「ハイブリッド戦争」である。

従来の戦争と現代の戦争が総合的に組み合わされるとどうなるか。

① 陸軍の領域、
② 海軍の領域、
③ 空軍の領域、
④ サイバースペース(コンピュータ)の領域、
⑤ 宇宙軍の領域、
⑥ 認知戦(Cognitive Warfare)の領域、

この6つの領域によって、現代の戦争は遂行されるということである。特に、6番目に挙げられた「認知戦」でロシアはウクライナにやられているという見方がよく聞かれる。

認知戦とは何か。情報空間、認知空間が「第6の戦場」とされ、情報戦、宣伝戦を効果的に展開することによって、戦争を勝利に導く戦法のことである。そう言うと、そういう戦いは昔からあったと言わなければならず、目新しくないと思うかもしれない。しかし、21世紀の現代においては、情報、宣伝による心理戦の戦いは非常に洗練され、スマートになって来て、主に、三つの領域で華々しく展開される事態になっている。

三つの領域の一つ目は、SNS(プラットフォーム)、二つ目は、スマートフォン(デバイス)、三つ目は、4G回線(ネットワーク)、これらの三位一体が普及したことによって、情報(真実情報、偽情報、不確実情報など)が瞬時に拡散される状況になっている。

これらの情報空間、認知空間が、21世紀の戦争を根本的に変えつつあると見てよいだろう。まるで、戦争の実況中継を観覧しているような気分で、人々は戦場の戦いを見ているのだ。

戦争であるから、見方側には都合のよい情報を操作し、敵側には都合の悪い情報を操作して流すという虚偽情報の合戦が交わされるのであり、そのことは、古くから変わらないと言っても、わざと見方側に不都合な情報を流して敵を油断させたり(敵を欺く)、一様ではない。

うそが有効な場合はうそを流し、真実が有効な場合は真実を流すというような、あくまでも「人間心理」の効果的な操縦を計算して情報拡散に努める。騙されないためには、情報リテラシーが極めて重要になることは勿論のことである。

ウクライナ戦争のこれまでの経緯を見て分かるのは、どうやら、ウクライナと米欧が、認知空間における戦いを優位に進めているということである。具体的には、

① メディア・専門家らによるファクトチェック、
② 米国政権のインテリジェンスの積極的開示、
③ 欧州地域におけるロシアの情報発信の制限、
④ ゼレンスキー政権の対抗ナラティブ(物語)、

以上の4つが要因として挙げられるだろう。

① のファクトチェックや、②の米国の積極的情報開示などは、主に偽情報に焦点を当てている事柄であり、③のロシアの情報の制限や、④のゼレンスキー政権の対抗ナラティブなどは、より広範な情報戦を闘うツールとなっている要因である。

こうしてみると、現代の戦争は、為政者たちにとって非常にやりづらいものであり、滅多なことでは戦争を起こすことはできないという結論になる。戦況をどのように報道しようとも、偽の情報を高い確度で見破り、あらゆる情報源を駆使し、人々に真相を伝える報道の可能性が高まっている。やはり、SNS(プラットフォーム)、スマートフォン(デバイス)、4G回線(ネットワーク)などの情報機器、情報拡散手段が手強い武器になっているということだろう。

時々刻々と戦争の経過や戦場の情報がまるで映画を見るように世界にリアルタイムで発信される。うそを流しても、専門家たちがファクトチェックしてすぐにバレる。もはや、21世紀に戦争をするなど、愚の骨頂であり、共生共栄(Win Win)の真実な生き方しか、世界には通用しない時代になった。戦争をしない真面目な国家であることが一番である。戦争は一文の得にもならない。


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