寝る方の夢

 寝てる時の夢。今でも覚えてる、過去に見た悪夢の話。
 いつ頃だったろうか。とても幼い頃だった。
 それは夢。我が家がある団地の5階から、踊り場のある階段を降りる。
 突如、下の階からコウモリの大群に追いかけられ、今降りてきた階段を駆け上がり、登り続ける。登ってる時に見えた外は、真っ黒(真っ暗ではなく「黒」)で、怖いと思った。
 明らかに5階以上登り続けて、どれくらいかで、目が覚めた。
 家には母親も姉もおらず、1人で寝ていて、後に、いつの間にか1人で寝ていて、「誰もいない不安から来た悪夢だったのかな」と、後で思った。
 起きた時、何時だったかは正確には覚えていないが、なんとなく21時~0時の間だったと思われる。当時は早寝だった。

 今見た悪夢の恐怖と誰もいない不安から、母を探して団地の階をさまよう。
 確か、隣の家のインターホンを鳴らして、誰も出てこなかったため、5階の自分の家の真下にあたる、4階の家を鳴らすも、やはり出てこない。
 次に1階まで降りて、自分の家とは逆側にあたる家のインターホンを鳴らした。
 今思えば、深夜のピンポンダッシュである。出て来ないはずだ。

 鳴らした1階の家から、おばあちゃんが出てきた。
 そのおばあちゃんは、当時の自分では知り合いかどうかわからなかったが、あらあらといった感じで、部屋に招かれ、「電気毛布に入りましょうね」と言われて、「ビリビリの布団」と思って拒否したのを覚えている。
 1階にある掲示板に「お母さんがわかるように、紙貼っておきましょうね」と、真っ白な米の様な糊を、紙からはみ出んばかりにベタベタに塗って、掲示板に貼りつけていた。おばあちゃんの指はベタベタしていた。
 その後、張り紙を見たのか、母が1階のインターホンを鳴らして、一緒に5階まで上がって帰った。後に聞いた話だが、同じ苗字という繋がりがあったらしい。
 母は優しい口調で、「他の階は鳴らしてない?」と、今思えば叱られていた。ちなみに、「鳴らしてない」と、嘘をついた気がする。

 そんな悪夢の一夜から十数年後、1階のおばあちゃんが亡くなった。亡くなっていた。
 1階のドアが開かれていて、そのドアの前にトンカチなどの工具が散乱してるのを見て、母に「ここどうしたの?」と聞いた時、事後報告的に聞かされた。
 それまで、そこに誰が住んでいたかなぞ知らないつもりでいたが、その日に、すっかり忘れていたあの日の夜を思い出したんだ。


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