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冬の青森と津軽三味線② 後編

今回も冬の青森旅、2日目の様子をお届けいたします。初日、2日目前編をまだお読みでない方はこちらもおすすめです。ぜひ!

前回までのお話

前編では、『宿の出立からお稽古まで』の珍道中をさらっと書きました(笑 というのも、本当に天候がコロコロと変わって、(雪の少ないエリアで育った私にとっては)徒歩で前に進むのもしんどいほど吹雪く場面に幾度となく遭遇したものですから、観光と言えるような見聞もできない状況でした。次の電車を逃すと、もはやお稽古には間に合わないという不安から、15分前にはすでに駅舎のストーブで身体を温めながら『ちゃんと時刻通りに到着してくれ!』と願ってしまうほどの雪が降っておりました。当然、青い森鉄道は雪国仕様ですから遅れることなどないのですが。

唄付けのお稽古

記念碑が雪で埋もれていますが、これでも今年は少ないそうで。

私は、竹山流 高橋竹春師匠のもとで「神奈川県」でお稽古をつけていただいております。師匠のご出身は青森の平内町、竹山流の祖である高橋竹山先生と同郷になります。師匠はいま流行りの2拠点生活をもう何年も前から続けておられますが、なんと青森のお稽古場が竹山流宗家 高橋哲子先生のお宅なのです。

高橋哲子先生は、竹山先生のお孫さんにあたります。民謡民舞全国大会で優勝をされており、事前に教わっていたことから動画配信サービス等でその歌声をずっと聞いておりましたし、映画『津軽のカマリ』でも拝見しておりましたから、憧れの先生でいらっしゃいます。そんなすごい先生が、私にとって初めての『唄付けの先生』にあたる訳ですから、前回の夏の青森旅といい、今回といい、本当に贅沢なお稽古です。

冬の青森旅は2日間もお稽古をつけていただけることに!!夏の唄付けのお稽古が忘れられない私にとってはこの上なく至福の時間です。しかも今回は私の師匠と共に様々な舞台でご活躍されている相坂竹知さんも唄付けをしてくださることに!!

相坂竹知さんも平内町の方、です。。。なぜ「。。。」があるかというと、私の師匠とお話していると、『ともちゃんは〜』と既に私が知っている体で会話が始まるものですから、どんな方なのか詳しく知る術もなく。。。唯一の手がかりは同じく動画配信サービスで、師匠と一緒の舞台でお見かけすることが何度もありましたから、憧れの歌い手さんであり、三味線奏者さんであり、憧れの先輩でもあります。私の口から「ともちゃん」だなんてお呼びする訳にはまいりません(笑

そんな憧れのお二人が唄付けしてくださるのです!!
いやもうこれ、感動で泣いても良いですか?ってくらい嬉しいサプライズです。そもそも、竹知さんのお嬢さんの「三味線のお稽古」時間の合間をいただいて私もお稽古させていただくのですが、お嬢さんは太鼓も叩ける方なので、基礎の段階で私の前を行くスーパー小学生。そんなすごい方に囲まれてお稽古です、緊張しかないですよね(笑
厳密なお話をすると、青森でのお稽古の合間に私のお稽古も一緒にしていただけるという位置付けなのかもしれません。が、私にとってはそんなこと関係ありません!!お稽古はお稽古、どんな瞬間も貴重ですし、見逃すわけにはいきません。

前段のような説明をすると何もかも事前に知っていたかのように見えるかもしれませんが、私の師匠はあまり多くを語らない方なので、いきなり始まります(笑

『じゃ、弥三郎節からいこっか』なんて軽い振りから『へっ?は、はい』というなんとも間の抜けた返事しかできない私は、言われた通りに調子を合わせ、唄と太鼓、師匠の三味線に負けないようにと必死に食らいつきます。弥三郎節が終われば、じょんから節(旧節)、りんご節と続きます。普段は二尺(1の糸がC、ドの音を基調に2、3の糸を合わせる)でしか弾きませんから、糸の張りも違います。そうそういつものとおりになど弾けるわけがありません。調子だって、私に合わせるわけではありません、歌い手さんに合わせるのですから、1曲1曲、たとえ同じ曲でも哲子先生に、竹知さんに調子(キーの高さ?)をあわせて弾かねばなりません。

弾き始めると、今度は唄、太鼓、三味線がいっぺんに耳に飛び込んできます、自分の音が全く聞こえません。『自分の音がどうなっているのか?』もわからないまま、黙々と弾いていると、自分の何がダメなのか、自分自身では分析ができないことに気が付きます。勝ち負けではないのですが、やはり『自分の音』が聞こえないのです。唄付けのお稽古がなかったら、『唄いにくい、(ガチャガチャと)うるさい』事にも気がつかなかったことでしょう。ただでさえ『伴奏』であるべき三味線が、唄にあわせて弾かせていただいている状態です。逆ですよね、まだまだ精進しなければなと痛感します。

真剣な隠し撮り姿はまさしくストーカー!!笑

旅を終えた後日談ですが、師匠に写真や動画を沢山いただきました。物珍しさと貴重な時間を1秒たりとも無駄にしたくない思いから、哲子先生、竹知さんの唄や息遣い、竹知さんのお嬢さんの太鼓、間奏の合間に師匠の三味線を見て聴いて、瞬きする間もないですから、目がバキバキです。『目が逝っちゃってる、こういうストーカーいるよね🤣』と言われてもおかしくない顔だったことは言うまでもありません(笑

高橋哲子先生、相坂竹知さん、ありがとうございました。次はもっと、唄いやすくなったと言っていただけるよう、しっかり練習します。

小湊を後にして、青森市へ

移動手段の『青い森鉄道』は、1〜2時間に1本しか電車がないため、空き時間も無駄にならないよう、お稽古の後に竹知さんの職場へ連れて行っていただきました。平内町では有名な酒屋さんで、ご近所の方やお仕事の関係の方々が立ち寄ってお茶をされるそうで。

私も夏から数えて今回で2度目、お店でコーヒーをいただくのですが、大抵初めましての方がご一緒してくださいます。当然、私の標準語に違和感があるくらい『津軽弁』が飛び交います。普段のお稽古で師匠が津軽弁をお使いになるからでしょうか、結構わかるんですよね。ベースは日本語ですから、海外で外国語を学ぶのとは訳が違うとはいえ、やはり土地のことを知るには、その土地の言葉は欠かせません。こういう密な時間にこそ、津軽弁をたくさん浴びて、津軽への思いを私の中に貯めていくのです。

何度言っても信じてもらえませんが、吹雪いてました。

2日目の移動は吹雪いておりまして、車窓は真っ白。しかし関東ではなかなかお目にかかれない景色です、まるで初めて東京を見物するお上りさんのように食い入るように外を眺めます。吹雪にもかかわらず時折差し込む日差しに、雪がきらりと光る瞬間、地元の方は見慣れているのでしょうが、私には何もかもが新鮮でした。電車は座れないほど混んでいましたが、皆さん見慣れているのでしょう、外を楽しそうに眺めていたのは私くらいのものです。

郷土料理屋さんでの演奏

雪景色に灯るねぶたが幻想的です

メインディッシュはまだまだ続きます。夜は、夏の青森旅と同様、師匠からお許しを頂いて郷土料理のお店『じょっぱり』さんで演奏をさせていただけることに。遠方から来たこともあって、お店の方々は夏に伺ったことも覚えててくださって。そういうちょっとした気遣いに惚れてしまいますよね。思わず移住したくなってしまいます。

Covid-19もようやく落ち着き、インバウンドもかなり増えました。ただでさえ『津軽』はアウェイなのに、お客様は大半が海外の方!!完全アウェイでございます(笑

リハとは全く異なることが起きます!!

『海外の方のほうが、日本人より間違いに気が付きにくいんじゃない?』なんて笑わせてくれる師匠。言われてみればそうか、なんて妙に納得してみたりして。当初は合奏だけのつもりが、『じゃ、独奏いってみようか!』というまだ曲も出来上がっていない状況で大振りが?!いやー、間違いまくりでしたが、ノリの良いお客様方に助けられました。やはり人前で弾かせていただけるのはとても勉強になるし、何より楽しい!!本当に貴重な時間でした。

師匠のトーク中、調子を合わせます

お座敷2席で弾かせていただき、心も身体もポカポカに。師匠も、一緒に来てくださった師匠のお母様も『寒い』とおっしゃっているなか、1人汗だくな私なのでした。

今宵は晩飯にありつけるのか?

青森名物『イギリストースト』だけは死守しました!

お店の前で記念撮影後、師匠とお母様とお別れして宿へ。元々夕食なしプランで予約していましたからどこか近所へ食べに行こうと20時頃外に出てみたものの、どこもやっていない。。。まぁやっていないというのは語弊があって、観光客向けのスナックや満席でお断りの郷土料理屋さんしかなく、途方に暮れることに。結果、数ブロック歩いた先にあるコンビニで郷土とは縁もゆかりもないチャーハン弁当でこの日はおしまい。青森の夜は早いんだな、と己のリサーチ不足を嘆くのでありました。

さて、次回はいよいよ青森旅3日目となります。

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