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不定点観測2022【16】

5月17日(火)vs. 楽天 @ZOZOマリン
[勝]佐々木千[S]益田 〇6−3 [敗]田中将

石川が制球に苦しんでいる。いつもより余計に指に引っ掛かったり、逆に抜けたり。微妙な「出し入れ」ができない。
初回はいきなり西川にストレートの四球を与えた。浅村には右翼フェンスを直撃されて一、三塁。2死後に浅村が二盗失敗してくれて助かった。西川には飛び出す気配がなかったから、どちらかがサインを間違えたのだろう。
二回表はマルモレホスが中前打。茂木二ゴロの後、辰己に四球。武藤がカウント2-2から左中間に適時打。プロ初打点だ。柔らかな巧打だった。炭谷は遊ゴロに抑えたが、西川が左前打。黒川投ゴロで1点で済んだが、ここまでに48球を要した。

田中将は先週よりも闘志を前面に出しているように見えた。二回まではマリーンズ打線が気圧されている感じもあったけれど、三回裏、岡が左前打で出塁。エチェバリアがぼてぼての「マン振りセーフティ」で続いた。
松川はカウント2−0からスリーバントを失敗した。誰もが先週の山口を思い出してしまう。髙部も見逃し三振で2死。このままだと呪縛が解けない。

中村奨のバットを見て、あれ?と思った。色はいつもの赤なのに、メーカーが「SSK」ではなく「marucci」だった。中村は調子が落ちたりするとよくマーティンの「marucci」を借りていたが、それは黒と白のツートンだ。自分のモデルをオーダーしたんだ、感覚が合うんだな。
なんて思っていたら、そのバットで中前に打ち返した。1−1。主将の仕事だ。

石川の模索は続く。
四回表。辰己、武藤、炭谷に連打されて無死満塁だ。炭谷にはバントをさせずに1−2まで追い込んでから、止めたバットで二塁の頭を越された。流れはまだイーグルスだ。
インターバルの度にマウンド周辺でいつものストレッチを行い、石川は何とか自分のペースを手繰り寄せようとした。

西川三振の後、黒川の打球は石川の足下を抜けて中前まで転がると思った。中村奨が横っ飛びで捕らえ、そのままグラブトス。これが少し遠めにズレて、エチェバリアは身体を伸ばさなくてはいけなくなった。封殺の後、一塁への送球が大きく逸れた。2人が還って1−3。
エチェバリアは併殺できるタイミングではないと判っていたが、流れの中で送球動作を止めることもできなかったのだと思う。あそこまで暴投になるとも考えなかったと思うけれど。

それでも石川は六回まで投げた。112球、被安打9、与四死球3。三者凡退は1度もなく、得点圏に走者を背負うこと5度。よく3失点で収めたものだ。

代わった佐々木千が七回表を三者凡退で終わらせた時、流れがいったん落ち着いた気がした。

七回裏。岡が2球目をライナーで左翼席へ運んだ。2−3。エチェバリアが初球を左前打した。
松川に、「ピンチバンター」柿沼。その柿沼もスリーバントを失敗した。嘘だろ?田中将の技術を誉めるべきなのか。
髙部が遊内野安打で1死一、二塁。中村奨の打球は中前にポテンヒットだ。エチェバリアが三塁を回る。辰己の送球が少し三塁側に逸れてエチェバリアに当たった。炭谷が本塁の前で待っていたら、或いは際どいタイミングだったかもしれない。3−3。

佐藤都もセーフティスクイズを一度失敗した。だから嘘だろ?
次の球を左前に運ぶ。4−3。喜んでいいのか?
田中将がマウンドを降りる。結構サバサバしているようにも見える。
代わった石橋はマーティンに死球を与えて2死満塁。安田の代打、山口が右翼線に適時二塁打を放った。これは良い打球だった。6−3。

先制されてから逆転で勝つのは今季初だ。
それでも。
野村さんの言葉を言葉を借りれば「勝ちに不思議の勝ちあり」。
イチローさんの言葉を借りれば「ちゃんとやってよ。」。
と、思う。

5月18日(水)vs. 楽天 @ZOZOマリン
[勝]東條 〇1−0 [敗]酒居

「ゆんべ巨人がサヨナラ勝ちしたっぺ?父ちゃん八回くらいであきらめて風呂入えちったけど、あたしゃ最後までちゃんと見てたんだよ。そうしたら中島打ったっぺよ?『ほおれみろ』って言ったら父ちゃん怒っちってよ」

病院への車中、母が得意げに話す。
父は後部座席でまだむくれている。

18時過ぎに実家を出た。「速報」を開くと既に一回表は終わっていた。今日は小島に勝ち星を付けられるだろうか。
チバテレの中継までにはまだ時間がある。国道から「波乗り道路」へ入る頃、先頭の辰己が三塁打を打った。三回表だ。右手に九十九里海岸を見ながら更新を待つ。
武藤投ゴロ。太田四球。西川を迎えた。また一挙3点とかないよね?初球の更新が遅い。更新されると今度は文字数が多い。ライトフライで太田が二進したようだ。辰己は?マーティンの本塁送球に動けなくて、その間に太田がタッチアップしたってことかな?
黒川三振。「ガッツポーズ(投手)」。

中継が始まった時、涌井はまだベンチ裏で治療中だった。四回裏、先頭中村奨の打球がゴロで右手の指に当たったらしい。試合が中断している。
少しして、涌井が出てきた。マウンドに上がって2、3球投げる。続投は「無理」とベンチに意思表示した。

どちらかといえばイーグルスが押している。走者は出すが小島が踏ん張る、という展開だ。マリーンズは涌井に代わった石橋から無安打が続いている。
特に六回表が嫌だった。先頭の黒川が左前打で出た後、浅村の二ゴロを併殺できなかった。ごく普通の、正面のゴロだった。中村奨のトスも正確だった。エチェバリアの送球が高くて、佐藤都の足が離れたのだ。アウトの判定がリクエストで覆った。こういう時の島内は嫌なのだ(結果は右飛)。

小島は七回、112球で交代した。被安打4、与四球2、無失点。

七回裏に得点してやってくれ、と思う。投手が石橋から安樂に代わる。
2死一、二塁にしたけれど、今週も小島を勝ち投手にすることはできなかった。

マリーンズはゲレーロ、イーグルスは宋が力投している間に自宅が近づいてきた。宋は3者三振だ。
実家に電話を入れる。野球中継の音声が聞こえる。
「ありがとね。父ちゃん今日は全部見てから風呂入えるって」
九回表。益田が山﨑から直球で見逃し三振を獲るのと駐車場でギアを「P」に入れるのが同時だった。

マリーンズは九回裏も3者三振だった。中村奨、佐藤都、レアードが松井裕に全く手が出ない。松井は続投するだろうか。

十回表は東條だった。今季は左打者が続く打順でも任されるようになった。辰己は三振したが、武藤が右翼線を破った。マーティンがファンブルする隙に武藤は三塁を奪う。
太田の代打、銀次は一塁手正面のゴロだった。武藤は動けない。
カウント3−2から西川を見逃し三振させると、東條が帽子を取ってにっこりと笑った。東條がこんなふうに笑うのを初めて見た。

「酒居いぃー!」
「えー、またー?」

数分後にマーティンが3球目を右翼席に叩き込んだ時、夫婦が同時に叫んだ。
昨季のCSと一緒だ。手放しで喜べない。

「実はトイレに行ってて、ホームランは見てません」とお立ち台で東條は言った。
そうか、トイレに行けると思って頬が緩んだね。

5月19日(木)vs. 楽天 @ZOZOマリン
[敗]佐々木千 ●2−7 [勝]岸

「ZOZOマリンに連れてってよ」

ひと月ほど前から妻に頼まれていた。試合を観るためではない。球場の正面に設置された大型パネルを撮影したいのだ。

『頂点を、つかむ。』

選ばれし18人に彼も入っている。向かって右から3番目だ。

「来年は無理でしょ」

彼女は球場併設のショップで直筆ネーム入りのタオルを買った。
僕は「CLM」ロゴのキャップを買った。グレーのはポニーテールのマネキンに被せた現品のみだった。

これから観戦に向かう人々と逆にイオンの駐車場へ歩いた。謎の魚とつば九郎のコラボTシャツは少し目立ったかもしれない。

『5時に夢中』を観ながら自宅に向かった。少し渋滞している。竹田さんと中瀬さんで対談してくれないかな、と思ったりする。

帰宅した時に「速報」がレアードのソロ本塁打を知らせた。
マーティンのアベック弾の時は2階で洗濯物をたたんでいた。

佐々木千が4つ続けて四球を与えるなんて、誰が想像する?一昨日はある意味、ヒーローだよ?
小野郁が満塁で被弾する可能性はそれより高いと思ったが、現実になるなんて。

最終回に酒居を出してくれたイーグルスベンチに感謝した。
もちろん、今日は抑えてくれた酒居本人にも。
手放しではないけれど。

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