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鷗軍不定点観測2022【23】

6月10日(金)vs. DeNA @ZOZOマリン
[勝]小島[S]ゲレーロ 〇2−1 [敗]大貫

18時を回ったのに気付いて、「パTV」を開いた。すでに2死だ。越谷はまだ夕立が残っていた。完全に止むまで、このまま事務所でドラゴンズ戦の「観測」を書き進めようと思った。この3連戦はチバテレもラジオもない。

小島は今期10試合目の先発だ。マリーンズに関わりのある全ての人々が、今日こそ彼に勝ってほしいと思っている。
蝦名も空振り三振だ。上々の立ち上がりだった。

大貫は昨季の対戦では登板がなかった。もう4勝しているのか。「豆苗」って見た目から?そうか、森敬斗も戻ってきたんだっけ。
大貫の立ち上がりも良かった。6勝止まりの投手には見えない。22試合で投球回数112回というあたりに読み解くカギがあるだろうか。

二回表。牧はこれだけ名前が大きくなっても「シュアプレイ」の用具を使っていて、好きだ。かつてはもっと多くのプロ選手がこのブランドを使っていた。
宮﨑が三塁線をゴロで破った。引っ張り方も魅力的だった。

三回裏。先頭の安田が右翼線二塁打。フォロースルーの大きな、いい打撃だったな、などと思っていたら、エチェバリアが初球を一塁側にバントした。目を疑った。サインだろうか。ベンチに戻ってきたエチェバリアは何となく照れくさそうな表情に見えた。
髙部が3-1からすくい上げる。定位置より少し深い中飛は犠飛に十分だ。

「点を取ってもらった次の回にその点を取られて、流れを悪くしてるっていうのがある」小島がどこかで自己分析していた。
四回表は蝦名からだった。カウント2-0から、佐藤都は大きな身体をできる限り屈めて外角低めに構えた。投球はベルトより高かった。打球が低い弾道で右中間のテラス席に飛び込む。逆方向にあれだけ飛ぶのか。柔らかくてパンチのある打撃だと思った。
雨が上がったなあと思った矢先、幕張で大粒の雨が落ち始めた。

五回表。嶺井の三遊間のゴロに安田が飛び付いて上手く捕球したが、雨でグラウンドが少し滑りやすくなっていた。送球が少し逸れた。
森の送りバントは投げ終えた小島に向かって真っすぐ転がった。小島は守備が上手い。二塁封殺。小島が帽子を取って、庇の文字に目をやった。
佐野の3球目に、佐藤都が森の二盗を阻止した。これも大きかった。

六回裏。大貫はここまで59球だ。
1死後、マーティンに今日初めての四球を与えた。中村奨も1-2から四球をもぎ取った。佐藤都左飛で2死。小島がベンチ前でキャッチボールを始める。
レアードが4球目を軽打すると、投げ終えた大貫の横をライナーで抜けてセンターへ転がった。マーティンが還る。小島がギュッと拳を握る。

七回表。東條登場。同点のままだったら小島続投だったろうか。

七回裏。大貫からクリスキーに交代。荻野が遊内野安打で出塁すると、安田に代打が送られた。代えるんだ?安田は今日2安打だよ?とは思う。
それとは別に僕の中のジョイマンも発動する。「三木 クリスキー」。
三木は捕前にバントを決めた。結局後続を絶たれて無失点だった。

八回表。藤田が出てきた。観たかった選手の一人だ。投手は西野。
藤田は投ゴロに終わったが10球粘った。西野は直球とフォークしか投げなかった。森には初球にカーブを使って遊ゴロを打たせた。2死。
佐野が右前に運ぶ。関根のピッチャー返しを西野が弾く。蝦名が10粘って四球を選ぶ。カウント0-2からだった。最後はフォークがワンバウンドした。満塁。

牧だ。今日は3打席凡退している。だから余計に怖かった。
バッテリーが初球に選んだのはフォークボールだった。牧がそれを振ってきた。どちらも僕の想定外だった。
三ゴロ。走り込んできた関根に三木がタッチした。西野の緊張が弾けるように解ける。

九回裏。ゲレーロに対して宮﨑は深い中飛だった。第2打席は右中間二塁打だった。3方向全てに打ち分けたことになる。桑原の痛烈な三直を、エチェバリアが慈しむように処理した。代打ソトが左二塁打。戸柱の初球にゲレーロが暴投して2死三塁。ベンチの小島は表情を変えない。

戸柱が右飛に終わり、ハイタッチとスタンドへの挨拶の後、ゲレーロが小島にウイニングボールを手渡して二人が抱擁した。ゲレーロはだいぶ身体を折り曲げなければならなかった。抱擁したままゲレーロが腰を伸ばすと、小島が宙に浮いた。小島は黒いポンチョを纏って少し笑っていた。

結局事務所で最後まで観てしまった。
帰宅して布団に入るまで、頭の中で「三木 クリスキー」が繰り返し鳴っていた。

6月11日(土)vs. DeNA @ZOZOマリン
[敗]東條 ●1−2 [勝]田中健[S]山﨑

弁当を開いて「パTV」を開いたらすでに2死だ。順番を逆にするべきだった。鋭角に折れたバットがアップで映っている。関根のもののようだ。
蝦名への3球で、佐々木朗がこれまでと違うことを試しているのがわかった。上手くいくだろうか。佐々木は5球で初回を終えた。

京山は昨季、鈴木と投げ合った。同級生対決だ。荒れた試合を制したのはマリーンズだが、勝ち星は大嶺についた。しかもこの日の負け投手がシーズン後半からこちらの救世主になるなんて想像もしていない。

『甘ーい』。二回表、牧がソロ本塁打を打って三塁を回ったあたりで、妻からLINEが来た。打たれたのはカーブみたいだ。確かに高かったが、佐々木の表情に先日のジャイアンツ戦で岡本に被弾した時のような落胆はなかった。

ZOZOマリンでは3回表終わりに『Guess Who Marines?』という企画がある。センタービジョンに一人の選手が「証言者」として登場し、ある選手の印象を3つのキーワードで語る。「さて、これは誰でしょう?」というわけだ。今日の証言者はエチェバリアだ。

1 背が高く、身体が強い
2 練習を一生懸命している
3 進撃の巨人に似ている

粋なことするな、と思った。通常「答え」となるのはベンチにいる選手だからだ。
国吉の上半身が大きく映し出されると、両軍のファンから歓声が起こった。

四回裏。空振り三振を喫したマーティンがベンチに戻ってバットを叩きつけた。珍しい光景だった。

妙な表現だが、佐々木朗は「155キロ以上の直球を丁寧に投げていた」。160キロを超えたのは数えるほどだ。これまでほとんど投げてこなかったスライダーの割合が高かった。

六回裏。髙部が初球をセーフティバント。三塁線に上手く転がした。マーティンの2球目に二盗。カウント3-2からの6球目を嶺井が後逸してしまう。それほど大きく外れたわけではなかったが、サイン違いだろうか。無死一、三塁。
2-1からの4球目を中村奨が中犠飛で同点に追いついた。

京山は六回、92球、奪三振3。
佐々木は八回、94球、奪三振5。

九回表、ベイスターズはエチェバリアの悪送球で出た佐野を関根が送れずにチャンスを潰した。投手は益田。
九回裏、1死満塁のサヨナラ機に髙部とマーティンが凡退した。投手はクリスキー。
十回表、ゲレーロが三者凡退に抑える。
十回裏、中前打の中村奨を置いて、佐藤都の初球バントが2-4-3の併殺になった。レアードも2球目を遊ゴロ。

流れがベイスターズに傾いていく。

十一回表。東條から柴田が中前打。嶺井が3バントを決めると、流れは一層傾く。
代打大和。昨季は何球目を打ったんだっけ?どうして一塁が空いていたのに勝負したんだろう。
などと考えていたら、今年は1球で決められた。中越えの適時二塁打。東條はほとんど初見ではないだろうか。今年もやられた。大したものだ。1-2。

山﨑の直球が良かったと思う。安田の内角にきれいな回転で決まった。安田は手が出なかった。山﨑は3人で終わらせた。
山﨑は少しリバウンドしていないだろうか。大きなお世話だが。

6月12日(日)vs. DeNA @ZOZOマリン
[勝]佐藤奨[S]益田 〇5-4 [敗]石田

栃木市内は10時過ぎから雷雨が激しくなった。テントから物件の軒下に避難して天気アプリを確認する。予報ではZOZOのほうが雨の上がるのが早い。

結局、試合開始は14時30分だった。
『本日は全日本大学野球選手権決勝。ロッテ応援よろしく頼んます』昼過ぎにナカムラからLINEが来ていた。神宮は雨は大丈夫なのだろうか。
『上武対亜細亜だね。今日は外国人が打つよ。奨真を勝たせたいね』と返した。

荻野が右前打で出て、マーティンの2ランで幕が開いた。昨日は悔しかったろう。ね、打ったよ、ナカムラ。
さらに中村奨と山口の間でランエンドヒットが成功して1死一、三塁にしたが無得点。こういう時、返って嫌な感じがしてしまう。

佐藤奨は緩いカーブとチェンジアップを有効に使った。
一回表2死の牧、二回表の宮﨑と大和、二塁打のソトを挟んで嶺井。4者のタイミングを外しての三振は見事だった。ソトは粘り勝ちだった。ファールで粘って12球目を左中間フェンスに直撃させた。

今日の『Guess Who Marines?』、証言者は小島だった。
1 クール
2 背が高い(小島はその彼と話すとき45度見上げる)
3 イケメン
2日連続で同一人物は初めてではないだろうか。本人に伝わるとよいのだけれど。

佐藤奨のカーブが効いた。雨が上がって、球が滑る心配が減ったのが大きいかもしれないと思った(試合後のインタビューで佐藤都が天候と配球の兼ね合いを話していた)。

石田も良かった。二回から五回まで、被安打1、与四球2だ。佐藤奨の投球を石田が参考にしているみたいだ。いや、逆かもしれない。
相乗効果で二人の緩急が回を追って冴えてきたように見えた。

六回表。桑原に0-2から右前に上手く打たれた。佐野への初球、投球動作が中途半端だと思った。佐藤奨は球速だけではなく動作の緩急も使う。でもこの1球は足を上げ、ちらっと桑原を見て、投げ急いだように見えた。佐野の間(ま)になった。ソト以外に安打しているのは第1打席の佐野だけだ。苦手意識が少ないのかもしれない。タイミングがドンピシャだった。低い弾道でマーティンの頭を越えて右翼席に飛び込んだ。2-2。

六回裏。3-2から山口が三塁線を破る。佐藤都が4球目で送った。石田が99球でマウンドを降りた。
エチェバリアの打撃は日替わりで正直よくわからない。初球をポップフライ、だけは勘弁してくれと願った。
三上はスライダーを多投した。1−2からの4球目、高めに初めての直球、エチェバリアは釣られなかった。「かたち」になるかも?と思った。3−2からの7球目も外へ逃げるスライダーだ。嶺井の要求よりも高い。バットの先端が拾う。打球が2バウンドでレフトに届いた。3−2。
安田四球で一、二塁。髙部中飛でエチェバリアが三進した。
荻野が身体の回転で外角球を巻き込む。鋭いゴロが三塁線を破った。一塁ベース上で笑う荻野が少年のようだ。
マーティン四球で満塁。三上から入江に交代。中村奨が三振に終わった。

八回表。桑原が三遊間最深部へ内野安打。佐野が中前へクリーンヒット。関根が送りバント。全て初球だ。この回から継いだ西野を中心にマウンドに輪ができる。代打は藤田だ。とっておきじゃないか。一昨日は西野に対して10球粘ったが投ゴロだった。
際どいコースに主審の手が上がらない。西野が困った顔をする。四球で満塁だ。

今日も牧だ。ボールが3つ続いた。藤田の時よりも明らかなボールだ。西野の眉毛がさらに八の字になって、『ナニワ金融道』に出てくる返済に困った債務者みたいな顔になった。
僕は9棟ある一戸建てのシャッターを一つずつ閉めて回りながらスマホで観ていたが、6号棟の玄関で動けなくなった。
4球目は外角直球だった。牧が反応した。手出すの?
強めのトスバッティングのように、打球がワンバウンドで西野のグラブに収まる。1−2−3。西野が全額完済した人の表情になった。

八回裏は簡単に2死になった。入江も、この回から代わった平田もいい。このまま2点差ですんなり勝てる気がしない。
髙部が初球を左前に運んだ。関根はあと一歩だった。荻野の2球目に二盗。2−2から荻野の打球がライトポールの方角へ伸びていく。神里が追い付いたと思ったが、やはりあと一歩だった。
この1点は重いと思った。佐藤奨がベンチの最前線でじっと戦況を見つめている。5-2。

九回表。宮﨑中前打。横っ飛びしたエチェバリアが悔しがる。大和の打球がいい角度で上がって、悲鳴と歓声が混じる。荻野がフェンス手前で捕ると歓声とため息に変わる。ソトの打球がライト岡の頭上を襲う。岡がフェンスに背中を付けてジャンプした。グラブは届かず、打球はカバーに入った髙部へ跳ね返った。二、三塁。
戸柱の3球目がワンバウンドになった。加藤が三塁側に弾いて宮﨑を制す。戸柱の二ゴロで宮﨑が還る。5-3。
桑原の2球目はもっと遠くで手前から弾んだ。しかもスライダーだったからさらに外へ逃げた。加藤のブロッキングも及ばない。5-4。
佐藤奨を小野郁と西野が挟んでいた。誰かが冗談でも言ったのか、マスクの下に笑顔さえあった。益田さんは大丈夫、と確信しているみたいだ。
桑原を左直で終わらせた益田は表情を強張らせたまま加藤と拳を合わせた。

『亜細亜優勝 益田劇場』ナカムラが韻を踏んだ。

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