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鷗軍不定点観測2022【21】

6月3日(金)vs. 巨人 @東京ドーム
[敗]佐々木朗 ●3−10 [勝]戸郷

『お鉢があああああ』夕方、妻からLINEが入った。
『お鉢?』
『このタイミングで上がるの…』柿沼が抹消され、加藤が登録されていた。
『活躍次第でトレンドだ』「抑え捕手」が話題になっている。事はそんなに単純ではないと思う。
『火中の栗だわ』
『加藤はそう思ってないよ』
『胃が痛いわ』

一回裏。マウンドの佐々木朗の表情が冴えない。熱を出した小学生みたいに怠そうだ。頬がうっすらと紅潮している。
丸が三邪飛の後、ウォーカーが初球を叩いて左中間二塁打。158キロの直球だったが「逆球」だった。松川は外角要求だった。吉川と岡本を空振り三振させたが、6球と8球を使った。

二回表。レアードとエチェバリアの単打、松川の四球で2死満塁になった。
佐々木朗は戸郷のスライダーにも150キロ前後の直球にも着いていった。ファールで7球粘って1−2。8球目が二ゴロになったが、元4番打者の片鱗が見えた。ただし、余計に疲れたようにも見えた。

二回裏。ポランコの飛球は右翼ポール際に飛び込んだように見えた。実際にはフェンス上部の金網に当たって戻ってきた。三塁打。増田陸が161キロを左中間に打ち返す。二塁打。0−1。

三回裏。ウォーカー中前打。吉川右飛の後、岡本の初球にウォーカーが二盗成功。カウント0−2からのフォークボールが高めに浮いたのを、岡本は逃さなかった。右中間席で打球が大きく弾む。

佐々木朗は四回と五回にも1点ずつ失った。四回は自らの失策で出した走者を還され、五回は安打の吉川に二盗三盗を決められた。
ファールで粘って球数を増やし、甘い球を待つ。塁に出たら走る。「今日はこう攻めるのだ」というジャイアンツの選手全員の意志が、大きな空気の塊になって佐々木朗を圧迫する。彼一人で押し戻すには圧力が高すぎたし、彼自身の調子もそれほど良くない。密閉された競技場の中で逃げ場がなかった。

八回表2死からレアードが3ランを打って3−5。
その裏に廣畑が6安打を被る。この回から久しぶりに三塁の守備に入ったレアードがライナーを落としたのが始まりだった。3盗塁を絡められて5点を失った。容赦なかった。

ジャイアンツの1試合6盗塁は1973年以来49年ぶりだそうだ。柴田と長嶋の他に、末次と富田が走っている。末次は2盗塁だ。末次はこの年6盗塁を記録していて、12年の現役生活で42盗塁であった。

…なんてことでも考えていないと、胃が痛くてかなわんわ。

6月4日(土)vs. 巨人 @東京ドーム
[敗]佐藤奨 ●1−2 [勝]メルセデス[S]大勢

18時前に小山市内を出発する。20時までに柏市内のスーパーに着く必要があった。1階のクリーニング店が閉まってしまう。
ニッポン放送の解説は谷繁さんで、ぺこぱの2人がゲストだった。松陰寺は熱心なマリーンズファンで知られている。
「今日は僕の解説2か3で、あとはぺこぱさんでいきましょうか」と谷繁さんが言った。

「初回のマリーンズの攻撃が18時10分までに終わるか/終わらないか」。18時台の「リスナークイズ」。メルセデスの投球間隔が短いことからの出題だった。正解者にワイシャツの仕立て券が当たる。
「僕らマリーンズファンとして呼ばれたんですよね?」松陰寺がボケる。

髙部中前打、中村奨左前打。それぞれが3球目を打って無死一、二塁。
「ほらほら、碌でもないお題にするから」
山口の遊直は2球目。レアードの中飛は6球目だった。岡が4球で空振り三振。
「ここまでで18時7分でした」大泉さんが嬉しそうに実況する。
「時を戻そう」

佐藤奨の投球も良かった。直球も変化球も球速を変え、走者がいなくてもクイックで投げたりしているようだ。130キロ台でもバットを何本か折ることができた。「打者をよく見て、考えながら投げている」と谷繁さんが言った。

19時台の「クイズ」は、「シュウペイは19時30分までに本塁打を観ることができるか」だった。彼はこれまでスタンドインを1度も観たことがなくて、平凡な内野フライであっても打球が上がるたびに声を上げた。

三回裏、中山の遊ゴロをエチェバリアが捌いた。松陰時が「信じられないファインプレーもするが今のようなイージーゴロで時折『やらかす』んです」と話した。
「それ、いま話そうと思ってた。やっぱり今日俺いらないじゃん」と谷繁さんが笑った。

五回表。エチェバリアと佐藤都の連続二塁打でマリーンズが先制する。
さらに無死二塁で、佐藤奨は送りバントを試みた。3回とも三塁線ぎりぎりを狙ったもので、スリーバント失敗に終わった。状況を的確に判断した上での失敗だった。

一時間半余りで、七回裏まで進んだ。メルセデス90球、佐藤奨は六回まで73球。
1死後、岡本に四球を与える。今日2つ目だ。ポランコが右翼フェンス直撃の二塁打で二、三塁。

スーパーに着いた。スマホで「速報」を追いながら店内に入る。1週間分のワイシャツを出し料金を支払う。先週の分を引き取る。顔馴染みの店員コイケさんがスタンプを押してくれている間にカウンターに置いたスマホを横目で見る。「⑤中安打 +1点」。増田陸だ。1−1。

牛乳を買っていかなければならない。クリーニング店と牛乳の売り場はスーパーの対角にある。どうしてスーパーはこんなに冷えるのだろう。
代打中島の2球目に増田が走る。4球目の更新が遅い。「④ニゴロ +1点」ぼてぼてが幸いしたみたいだ。
佐藤奨はこの回32球を投じて終えた。

帰宅するとリビングではNHKが中継していた。
「へ?今日地上波あったの?」
「観てなかったの?皆に厳しい宮本さんだよ」

最後の打者、安田が大勢の外角直球を空振りしてがっくりと左膝を落とした。
「ロンリネス」。松陰寺の声が聞こえるようだった。

6月5日(日)vs. 巨人 @東京ドーム
[勝]本前 ○10−4 [敗]山﨑伊

今日は正午から「案内」があった。僕の車で新築の一戸建てを数件回る。
30代の夫婦と3歳の男の子を後部座席に乗せて野田市内を走った。ポータルサイトが進化して、こうした形の「案内」はすっかり減った。今は物件を絞ったお客さんがピンポイントで問い合わせてくる。

4件を見終えてお客さんが帰ったのは16時過ぎだった。長丁場だったけれど、男の子が飽きずにいてくれて助かった。
近くのコンビニで弁当を買い、車で中継を観ながら食べた。

八回表だ。5−4でマリーンズが勝っている。ざっと経過を追った。どちらも3本ずつ本塁打が出ていた。本前が勝ち投手の権利を持ってマウンドを降りていた。

角中が三振して、安田の打球が二塁手吉川のグラブを弾いた。和田が代走だ。初球から和田が走り、エチェバリアが打った。ライナーが二塁ベースの上を超えていく。和田は三塁まで進んだ。サインプレーだったのか偶然なのか判らなかった。
東條の代打、岡が初球をライトに打ち上げた。浅いかな、と思ったがポランコの捕球の仕方がぎこちなかった。走者は和田だ。犠飛になって6−4。いい攻めだった。
髙部が左前打で続いた。投手が今村から平内に代わる。
外寄りの低い直球にマーティンのバットが届いた。腕が綺麗に伸びている。これは飛ぶな、と思った。
ゆっくりと本塁に還ってくるマーティンの走り方が少し変だった。また痛めた?

1打席目の死球のことは帰宅後に妻から聞いた。
「これで本前勝っちゃって…小島ファンがまた怒っちゃうね」と彼女は言った。

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