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鷗軍不定点観測2022【18】

5月24日(火)vs. 広島 @マツダスタジアム
[勝]石川 〇7-0 [敗]床田

カープの主催試合はラジオが頼りだ。
『Veryカープ!』。RCCラジオを聴きながら帰宅した。

一回表はすでに終わっていて、マリーンズが1点先取している。安打の髙部が二盗して、中村奨の二ゴロで三進。マーティンが右犠飛。

実況の坂上さんも解説の安仁屋さんも、石川が投球の合間合間に行うストレッチングの入念さに驚いていた。
「マイペースですね」
「バッターよりも味方の野手がダレちゃいませんかね」
そうか、そんなこと考えたこともなかったです、安仁屋さん。

たくさん観ているわけではないけれど、今季はセ・リーグのほうが打力が高いと感じている。各打者の振りが強いし、打球の飛距離も出ている。一握りの圧倒的な球威の投手が相手でなくても、パの試合は打球の失速が目立つ。

石川は打ち込まれるかもしれないと思っていた。
直近2試合の投球内容は悪い。どれくらい改善しているだろう。

序盤にまず気付いたのは、カープの打者が初球に手を出してこないことだった。石川が簡単にカウントを稼いでいる。今日は制球も良いのだろう。安仁屋さんも「初球が狙い目なのに」と言い出した。
石川の投球に関して、坂上さんが頻繁に「バックドア」という単語を使う。外角のボールゾーンから中に入れてくる球を有効に使っているようだった。交流戦前はそこまで多用していなかったと思う。

四回を終わって、床田47球、石川53球。どちらも無四球だった。野間が2安打している。

五回表。床田が岡に、初めて四球を与えた。エチェバリアの遊ゴロ併殺でチャンスが途切れたと思ったが、今度は安田が四球を選んだ。
松川が粘っている。カウント0-2から2-2にした。8球投げさせた。9球目もボール。この回が自分で終わってはいけないのだ。石川さんまで回して、六回表は髙部さんから始めたい。次もファウル。11球目、乾いた良い音が響いた。坂上さんの声のトーンが上がって早口になった。打球が左中間のフェンスに届いたみたいだ。安田が還る。2安打で2点だ。

七回裏の途中に帰宅した。「J SPORTS」が観られる。
石川は被安打3、与四球1で七回を投げ終えた。3本中2本は野間だった。

八回表。投手が松本に代わった。松川が四球で代走和田。石川の代打柿沼が送って、髙部も四球。この走者2人に打者が中村奨だ。どんな野球をやってくれるのかわくわくしていたら、中村が2球目を左翼席に放り込んだ。腕を伸ばして外角を捕まえた時の中村の打球はとても伸びる。一番想定していなかった得点の仕方だった。6−0。解説の野村さんと黒田さんはさぞ面白くなかろう。

九回表に無死二、三塁から、小川が左犠飛を打ってプロ初打点を上げた。

5月25日(水)vs. 広島 @マツダスタジアム
[敗]小島 ●2−5 [勝]遠藤[S]栗林

父の通院を終えて15時近くに戻り、遅い昼飯を済ませてから母を近所のスーパーに連れていってまた戻る。出発前に30分くらい仮眠を取るつもりで縁側の古い籐椅子に座る。大きめに頑丈に作られた椅子に背中を預けて目を閉じる。微かな潮の匂いを風が運んできて時空が歪む。

目を覚ますとすっかり薄闇に包まれていた。ここどこだっけ?18時を回っている。実家だ。茶の間では両親がジャイアンツ対バファローズを観ていた。診察に疲れた父は座椅子に横たわっている。バファローズが初回に2点を先制していた。

「起こしてくれればよかったじゃん」
「鼻鳴らしてよう寝てっからよ。悪りいと思ってよ」と母が笑う。10代の頃に何百回と繰り返したやりとりを、「8050」で再び。

「速報」を開くと二回表にマリーンズが1点先制していた。岡のソロ本塁打だ。だけどその裏に小島がピンチを迎えている。坂倉が中村奨の失策で出て、小園が右前打で続いていた。母が珍しそうにiPadを覗く。へえ、そっで野球がわかんのけ?宇草も内野安打で無死満塁だ。

「満塁になっちった。じゃあ行くね」
「ありがとね、ナオコさんによろしく」玄関には新鮮な野菜と魚の干物が段ボール一箱分置かれている。
「3回目射って、おかしかったらすぐ連絡してよ」
「あいよ、わかった」
玄関を出る時、父が茶の間で声を上げた。岡本が逆転の3ランを打ったみたいだ。

RCCラジオにして、車を出す。磯村が四球を選んで押し出し同点になっていた。今日もビッグイニング作っちゃうのか…?
遠藤の打球を小島が足で止めたみたいだ。1−2−3の併殺が成立した。怪我はないらしく、小島が続投する。昨日3安打の野間もニゴロだ。最小失点で凌いだ。

解説は山崎隆造さんだ。口調は柔らかいが、マリーンズの選手やプレイを決して褒めないのが可笑しかった。ヒットを打てば「たまたま」だし、良い守備をしてもカープの「アンラッキー」なのだ。

今日のカープは明らかに初球から振りにきている。
五回裏。1死後、野間が左前打。菊池のヒット性の三ゴロは安田が飛び込んで二塁を封殺した。それでも小島は乗り切れない。西川右前打、マクブルームの三塁線を抜く二塁打で2走者生還。2人とも初球だ。
小島は今日も勝てないのか。

六回裏に投げた佐々木千も2点を取られた。本調子に遠いとはいえ、佐々木がここまで簡単に連打されるものだろうか。ラジオだと球筋がわからない。特にこのカードは実況も解説も公平ではない(面白いけど)。この回に捕手も柿沼から佐藤都に代わっている。配球は読まれていないか。

「千葉北」インターを降りて国道16号を北上する。八千代市に入る手前くらいから銀色の古いマツダ・デミオがヤンチャな運転をしていた。それほど混んでいないが積極的に割り込んで常に前を目指している。「村上」の交差点を過ぎると、見通しの良い長い下り坂になる。スワローズ・長岡の母校のあたりだ。ちょうど前に車がなくなって、デミオがアクセルを踏んだ。テールライトがあっという間に小さくなった。捕まるぜ、と思った。

七回表。先頭のレアードがソロ本塁打。2−5。岡が死球。1死後、安田のところで塹江だ。投球が楽しみだったが、安田は初球を二ゴロで、あっという間に4−6−3が成立してしまった。

300mくらい先で2車線の左側をパトカーが封じているのが見えた。事故かなと思ったが、一緒にハザードランプを焚いているのはあのデミオだった。初心者マークを付けていた。ほら言わんこっちゃニャい。

帰宅すると九回表だ。先頭はマーティン。
「先日の試合でもマーティンは無死一、三塁で、自分の意志でセーフティスクイズしてますからね。ここも何かやってくるかも」と解説者が言った。
「解説、だれ?」
「天谷さんて知ってる?」と妻が言った。
もちろん知っている。天谷宗一郎さん。「自分の意思で」と天谷さんは言った。地方放送の解説者が、違うリーグの試合を、正確に調べてくれていることに感心した。

5月26日(木)vs. 広島 @マツダスタジアム
[勝]小沼[S]益田 〇6−3 [敗]九里

日常的に移動手段は車だが、栃木県内で現地販売を行うようになってから走行距離が飛躍的に増えた。分不相応なクラウンに乗っているのは腰への負担を軽減したいからだ。それでも片道2時間の運転はなかなかに応える。
だからここ2週間は自分の「走行距離」を減らしていた。痛みが出たら和らぐまで歩いたりもした。
今日はどうしても16キロを6分ペースで走りたかった。ロキソニンを飲むことにした。どうしても痛かったら服用するようにと、医者からもらったやつ。
からりと晴れて、湿度が低い。手賀沼を渡る風が気持ちよかった。10キロを過ぎるあたりから下半身の右側に痛みが出てきたが、我慢できると判断した。
薬を飲んで走るときはいつも石田さんの奥さんが葬儀で語った言葉を思い出す。石田さんは同い年の甲子園優勝投手だ。

「来週の火曜日は神宮に行くんです」理髪店の主人は嬉しそうに言った。
「順当に行けば石川ですね。荻野も戻ってきてるでしょ」
「ヤクルト、強いですよねえ」

「初回に1点取られちゃいましたね」会計の時に主人が「速報」をチェックして笑った。
理髪店を出て、帰路途中のイオンに駐車している間にレアードが逆転の2ランを打った。目当ての新刊は書店に置いていなかった。間違っている。『評伝・ナンシー関』を入荷していないなんて。

河村はいつものようにピンチでも飄々と投げてはいるけれど、今日は失点してしまう。だからベンチは四回で見切った。
セ・リーグの先発投手を見ていると「俺らは完投してナンボ」という気概を感じる。マリーンズの投手起用に慣れているからかもしれない。どちらがいい/悪いということではない。

今日は九里の続投が裏目に出てマリーンズが勝ち越した。DH制の試合だったら河村が続投して逆の展開になったかもしれない。小沼のロングリリーフがチームを救っている。

今日の善きは、ようやく長野を観れたことです。

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