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鷗軍不定点観測【19】

5月27日(金)vs. 阪神 @ZOZOマリン
[敗]益田 ●0−1 [勝]ウィルカーソン[S]岩崎

たっぷりと降り続いた雨は午前中で上がった。試合は問題なく行われるだろう。
16時過ぎにナカムラからLINEがきた。デジタルチケットのスクリーンショット。一塁側の内野指定席だった。ベースコーチの真後ろあたりだろう。
『晴れてよかったね』と返した。

ナカムラからだ。

今日から荻野が一軍に合流した。2番・レフトだ。外野手のポジションが高いレベルで争われることになる。

佐々木朗は球離れがこれまでで最も不安定だ。直球は中指の腹から流れ出るような感じでシュート回転がきつく、フォークボールは浮くことが多かった。
二回表。佐藤輝と糸井を三振に斬ったと思えば、糸原にショートの頭を越される。2球目の直球だった。走者を置くと直球の横滑りがさらに顕著になった。

二回裏。マーティンがほぼ真上に高く打ち上げた。長坂がマスクを捨てて声を出したが、フェアグランドで捕球することができなかった。仕方ない。簡単に対応できる風ではないのだ。

六回表、2死三塁の場面で佐藤輝を空振り三振させたフォークボールは見事だった。佐々木朗がガッツポーズを見せた。

六回を終えて、両投手とも90球だった。どちらも走者を出しながら粘り強く投げた。佐々木は走塁ミスに助けられたし、ウィルカーソンは2つの併殺で切り抜けた。
佐々木朗は被安打4、無四球。
ウィルカーソンは被安打5、2四球。

佐々木は東條とゲレーロに後ろを委ね、ウィルカーソンは8回まで108球投じた。

九回裏、益田。大山を見逃し三振にした外角低めの直球を見て、今日は調子いいなと思った。佐藤輝を3-1から空振りさせたシンカーの低さも良かった。
益田が次の投球動作に入るまで、佐藤輝は本塁ベースをじっと見つめていた。今しがたここを通ったシンカーの残像を反芻しているんだと思った。
6球目のシンカーはさらに低い軌道を描いた。柿沼が膝を着いて捕球体制を取ったくらいだ。
佐藤輝はその軌道の途中にそっとバットを差し出した。そこに球が来ることを予め知っていたみたいに。一つ前の豪快な空振りとは全く質の違うスイングだった。
「拾った」だけのように見えた飛球はセンターへ高々と上がったまま落ちてこない。益田が目を見開いて事の成り行きを追っている。髙部がフェンスに背中を付けてジャンプした。打球は伸ばしたグラブのずっと上を越えてバックスクリーンで弾んだ。どんな力学が働いたら、あの打ち方であそこまで飛ぶんだろう。

ナカムラから「号泣」のスタンプが届いた。

『サトテルを褒めましょ』
『嫌だ!ヤケ酒だ!』

5月28日(土)vs. 阪神 @ZOZOマリン
[敗]佐藤奨 ●2−6 [勝]青柳

14時から、住宅ローンの「本申込み」を対面で行う。ほとんどの金融機関は記入済みの申込書と必要書類を僕が代行で提出すれば済むのだけれど、ここだけは借入れ希望者本人の来店と担当者面前での書類記入が必要なのだ。
記入が一通り終わると、「上席の書類チェック」の間に教育用のDVDを観せられる。これが専門用語のオンパレードで注釈もない。初めて不動産を購入する人に対して(もちろんほとんどのお客さんが初めてで、一生に一度だ)あまりにも不親切だと、いつも思う。
申込みにはたっぷり2時間以上かかった。バファローズファンのOさん(お客様だ)の車が角を曲がって消えるのを見届けて自分の車に戻った。

試合は中盤まで進んでいた。佐藤奨が初回に3点、三回に1点失っている。今日も立ち上がりに苦労したのか。こちらの打線は青柳に封じられているようだ。

コンビニで弁当を買って、車で10分ほどの販売会場に戻った。白いプリウスが1台、前面道路にハザードを点滅させて停まっていた。
僕が専用の駐車場(販売物件のカースペースに厚手のブルーシートを敷いてあるだけだ)に車を入れると、プリウスの運転席から女性が降りてきた。おそらく20代だ。マスクはしているが、きちんとメイクをしていた。後部座席にチャイルドシートが見えた。

「お家の中、見れますか?」
「ありがとうございます。ぜひ」

彼女は販売中の3棟のうち2棟を熱心に見学して帰って行った。物件に対する条件もはっきりしていて、ここは致命的に土地面積が小さかった。明日10時からいくつかの物件を一緒に見に行く約束をして別れた。

昼飯にありつく頃には試合は九回を残すだけになっていた。グリルチキン弁当もすっかり冷めている。いっそ今日は「速報」だけで済ましてみよう。
四回以降、マリーンズの投手陣は無得点に抑えていた。この回から代わった小沼が、近本に左前打。中野中飛の後、大山と佐藤輝に続けて四球を与えた。ストライクが1球しか入らなかった。小沼にしては珍しいと思う。糸井も2−0にして、3球目を左前打された。6−0。勝負あり、だろう。

九回裏、青柳続投。ここまで119球を投じていた。1死後、中村奨の三ゴロを熊谷が悪送球した。安田がライトの頭を越す二塁打で二、三塁。山口の遊ゴロの間に中村生還。福田が中前へ適時打して2点目を返した。1死を残して青柳から岩貞に交代。岩貞は4球で終わらせた。

「青柳熱投133球」。翌日の日経朝刊のスポーツ欄では、この試合がトップに掲載されていた。力強い投球フォームの写真と、失策後の失点を「自分の未熟さ」と反省するコメントと。

5月29日(日)vs. 阪神 @ZOZOマリン
[敗]ロメロ[S]益田 ○3−2 [敗]伊藤将

さて、今日のロメロは如何に?と弁当を広げた。近本と中野に連打で一、三塁。大山の2球目に二盗され、大山にはストレートの四球を与えた。あっという間に無死満塁になった。鶏モモの塩焼きも喉を通らないじゃないか。
佐藤輝も3−2になった。バッテリーの選択は直球だった。内角へ逆球になったのも幸いしただろうか。iPadの映像からも風圧を感じさせるスイングが空を切った。ロメロがグラブを拳で叩いた。
原口が初球を捕邪飛、糸原が2球目を中飛で、無得点で切り抜けた。ロメロが口をグラブで覆って何か叫んだ。ようやく落ち着いて食事ができる。

今日は荻野、角中の1、2番。髙部を8番に下げていた。

二回裏。佐藤都が四球で出た。レアード三邪飛の後、岡が左前打で一、二塁。安田左飛で2死。
髙部が左前に流し打って、佐藤都が手から滑って長坂のミットをかいくぐった。リクエストも覆らない。打順変更がハマった。1−0。

三回裏。1死から角中が右前打。2死後に佐藤都の中越え二塁打で二、三塁。初球だった。
コーチが出てきて間を置く。マウンドにできた輪が解ける。レアードも初球を狙った。外角低めの変化球を払うように捌くと、低いライナーが左中間を破った。3−0。

ロメロは毎回走者を背負いながらも落ち着いて後続を絶った。バックの守備も助けたし、ロメロ自身が牽制球で刺しもした。今日は絶対に自滅しない、といった執念が感じられる投球だった。六回無失点、103球でマウンドを降りた。

四回裏のチャンスを潰した後は、マリーンズの攻撃の方が淡白だった。3者凡退を重ねるあいだに、流れがタイガースに傾いていくように感じた。ロメロの後に東條がそれを食い止め、八回表はゲレーロだ。
中野が粘る。ファウルを4球続けた後、9球目を中前打。大山の初球に二盗してゲレーロを揺さぶる。大山は遊飛に終わったが、佐藤輝だ。1−0からの2球目、内角高めの直球に反応した。反応した、と思った次の瞬間には打球が右中間にまっすぐ伸びていた。あっという間に中段に刺さる。いつスイングをしたんだろう。漫画みたいだ。3−2。わからなくなった。

八回裏も4番からの攻撃が3者凡退に終わった。いよいよわからない。
益田が髙山に対して3−2とした時、四球なら負けると思った。7球目が遊飛となって、いけるかも?と思えた。
それでも2死から、代打糸井。観るほうは一昨日をどうしたって思い出す。守護神は何を思って投げるんだろう。

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