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どうしてあなたはロミオなの?ジュリエット、君が望むなら何者でも無い。

代表の弦巻です。
弦巻楽団演技講座 “舞台に立つ”   『ロミオとジュリエット』
は無事に全4ステージ終演しました。

全員揃って上演を終えられたことをまずは喜びたいと思います。
受講生だけじゃなく講師にも劇団にもまだまだ課題はありますが、120分迸る舞台をじっと見守ってくれた客席の皆様に大きな感謝を。

初日、集中度の高い客席に驚いていると終演後「とんでもねえバッドエンドだ…」と漏らすお客様の声が。凄く手応えを感じました。
 
「読解力が凄いから物語がしっかり立ち上がるのだと感じました。」
と、Xにとても嬉しい感想が。ありがたい。
読解にはもちろん時間をかけました。

初期にはこんな取り組みも。
ロミオとジュリエットが自分勝手に突っ走るのではなく、周囲の社会がそうさせてしまう構造になるようにみんなで話し合いました。
いえ「どうすればそうなるか?」のような問いかけでは煮詰まってしまうだけなので、講座でやったのは
『戦犯は誰だ?!』と言う講義でした。
ロミオとジュリエットの結末を招く元凶となったのは誰か?!
を話し合った訳です。犯人探しです。
父親たちが悪い、マキューシオが、ティボルトが、はたまたロレンス神父が、乳母が、手紙を見せた召使いが、いやいややっぱりいがみ合う両家そのものが…。
そうした意見や討論を踏まえ、戯曲に戻ってみる。そうすると、ロミオとジュリエットの二人以外の登場人物がこの物語で果たすべき役割が見えてくる。その役割を(無自覚に)果たす人物でなくてはいけない。
読解のための大事な1ステップでした。

ただ、読解したものを具現化するのは大変です。
翻訳劇ですし。シェイクスピアですし。
大事にしたのは『共有』です。台詞の意味を考え単語の意味を調べる。それは当然だとして。大事なのはその台詞を発した意図を考えること。
サブテキスト…と大仰な意味ではなく、単純に真剣か/冗談か、嫌味か/賞賛か、のように表面的な次元で。
それを受け手は理解するのか/しないのか/した上で無視するのか/応えるのか。
シェイクスピアの魅力は沢山ありますが、登場人物の『野性』もその一つです。等身大の、欲望まみれの人間。流麗な比喩や美しい韻文も、そうした人物が発している。我々と同じようにそこには「意図」がある。『会話』として成立させるには、そうした「意図」の「共有」が肝心です。

『ロミオとジュリエット』で上演時間120分。
識者の方は気付いたかもしれませんが、カットもあまりしていません。つまり、今回の舞台は400年前にシェイクスピアが書き、松岡和子さんが翻訳した台詞をそのまま喋ってます。
我ながら結構凄いと思います。
共有をしっかりすれば、やりとりのピントが合ってさえいれば充分に現代的な訳です。
まだまだ未熟で、荒っぽいところも多々ありましたが、演技講座として大事にしたのはそこです。受講生はよく頑張りました。その読解を実演を交えず伝えると言うのは本当に難しい。みなシェイクスピアの言葉を神格化し過ぎてしまうから。講師の方がもっと研鑽が必要です。

『ロミオとジュリエット』はやればやるだけ緻密さに参ってしまう戯曲でした。
昨年の『ヴェニスの商人』が見誤っている作品だとするなら、『ロミオとジュリエット』はやり直す作品でした。
決断を変え、手のひらを返し、言葉は翻り、
こぼれたミルクは瓶に戻す(?)。
登場人物みんなが訂正し、変更し、修正します。
登場人物がこんなに細かく呼び止め、思い返し、発言を翻すことが多いシェイクスピア戯曲は他にありません。
その運動自体が『ロミオとジュリエット』のテーマを炙り出しています。気持ちで一貫性を持たせようとしてはいけない。むしろ一貫性のなさ、俊敏さが本質なのだから。本質?もちろん、恋です。

変わらないのは恋だけ。
取り返しがつかないのは時間。

物語は一気呵成にラストへ突っ走ります。

そして『ロミオとジュリエット』はやはり「名前」についての物語、つまり「血」についての物語でした。
「名前を捨てて」とジュリエットに求められ、応えようとするが名前のせいで相手を傷つけ、自分の身体のどこにその名前が記されているのだ!と自らを切りつけようとするロミオ。
名前に抗う、血に抗う、家系や前の世代に抗い疾走する14歳の恋人。
子供達の犠牲の果てにようやく愚かさを悟り自己憐憫にひたる親世代。その対比をラストには込めたつもりでした。

3年間指導してた中学生が観劇し「凄く面白かった!初めてシェイクスピアを舞台で見たけど、こんなに面白いのかと思った!初めてのシェイクスピアがこの舞台で良かった!」と言ってくれました。
先生泣いちゃうよ。

先日、振り返り会が行われ、1年間どんなことをしたか、自分を振り返ってどうか、という話をしました。
毎年毎年、いろんな課題にぶつかります。
それでもできることは、こうしていろんな面々と顔を突き合わせ、語り、共に創作する。その磁場を維持することだけです。

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次に“舞台に立つ”のは、あなた!

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