【特別対談】必然的なコラボレーション|#37『ナイトスイミング』
身体の作りや動かし方の基礎
弦巻 2017年上演時に参加していただき、作品をぐんとレベルアップしていただいた渡部倫子先生。今回も一緒に創作していただくということで、上演に向けての色々な想いや、作品創作にあたっての狙い・作戦なんかを色々話せていけたらなと思います。よろしくお願いします。
渡部 よろしくお願いします。
弦巻 簡単に自己紹介をお願いして良いですか?
渡部 はい。私は現在、コンテンポラリーダンスをメインに活動しています。最初に始めたのはコンテンポラリーダンスの前身であるモダンダンスでした。モダンダンスは1990年代にコンテンポラリーダンスに変遷していくのですが、丁度その過渡期に青春時代を過ごしていました。
コンテンポラリーダンスを深めていくにあたって、身体の作りや動かし方を探るようになります。どんな現場でも怪我人を出したくないというのが一番なので、ボディワークや基礎的な鍛錬にもう一度立ち返ろうとしていたんです。そうした経緯もあり、今はピラティスの指導者を育てる先生としても活動しています。
弦巻 先生はその他にもチアリーディングの指導や自身のコンテンポラリーダンスの創作もされていますよね。先生の中では特に区切っているわけではないのかもしれませんが、すごく多岐に渡る活動に思えます。今回もまたよろしくお願いいたします!
渡部 お願いします。
二人の出会い
弦巻 僕たちの最初の出会いは、2012年頃に僕が講師として参加した、ダンサーの方々に向けた演劇ワークショップでした。そこに倫子先生も参加してくださったのが始まりですね。
渡部 脚本を読むワークショップでしたよね。
弦巻 それから交流が始まり、倫子先生の創作に僕が出演させていただくようになりました。
渡部 弦巻さんとの創作は、いつも新たな発見があります。私だけではなかなか掘り下げられない域に到達できるというか、私にとっては未知の素材を提供していただけてとても楽しいです。
弦巻 いやいや(照)。そうした繋がりがあって、弦巻楽団にも参加していただくようになります。長い付き合いの中で、初めて倫子先生に協力を持ち掛けたのが2017年の『ナイトスイミング』再演でした。実際に話を聞いたときはどう思いましたか?
渡部 私は芝居の中にダンス的な振付が入っている作品に違和感を感じるタイプだったんです。そうした作品は色々と観ているのですが、ただ芝居に決まった振りをつけているだけだと、ダンスが芝居の中で上手く活きないのではないかと。
しかし『ナイトスイミング』では、振りというよりは宇宙空間を表現するアクションとしての動きだったので、納得してやらせていただこうと思いました。
弦巻 やはり芝居とダンスは、簡単には融合できないとお考えですか?
渡部 融合というより役割分担のイメージですね。観客を飽きさせないために、場面転換の助けになる手法としてのダンスがあるのかなと。しかし弦巻さんがやりたいことはそういうことではないですよね。
弦巻 僕は2017年の時点で、札幌でお芝居を作って20年くらい経っていました。僕と同じように長年やっている演出家は、やはり自分の中にマンネリを見つけて、突破口を開こうとコンテンポラリーダンスに限らず別ジャンルとの融合を図ることがよくあります。
それは自然な欲求なのですが、僕は「コラボレーションのためのコラボレーションになると意味がない」と考えます。そこに融合する必然がなければ、作品がそれを求めていなければ、駄目だと思うんです。それで、倫子先生と出会ってから実際に話を持ち掛けるのに5年もかかりました。
2017年に『ナイトスイミング』の再演が決まったとき、「あ、ここに必要なんだ」とハッとしました。この作品には絶対に身体能力やアクションが必要だ。そしてそれは自分では制御しきれない、演出しきれない。そして先生に声をかけると、先生もすぐにコラボレーションの主旨を理解してくださり、嬉しかったのを覚えています。
稽古の様子
弦巻 今回の出演者と一緒に取り組んでみていかがですか?
渡部 みなさん自分の身体をよく理解されていると思います。みなさんは普段、言語表現(台詞)で身体を使っていると思うのですが、言語表現も身体表現と同様に、やはり呼吸がスタートなんですね。呼吸をして人間は生きていく。それが言葉になるか動きになるのかの違いです。みなさんの能力が高いのは、呼吸を理解されているからなんだと思います。
あと、みなさん前向きで明るくて積極的ですね。何でも積極的に取り組めると、その分キャッチできることが多いですね。
弦巻 今回の出演者は経験が長い人も多いので、自分ができないことを分かっているのかもしれません。だから「出来るかなあ」と怖気付く前に、「まずやってみるか」と思えるのでしょうね。その部分は作品としても助けられています。
能力の限界を知るところから
弦巻 今回は倫子先生にとって2回目の『ナイトスイミング』となります。舞台美術や衣装は変わりますが、場面と方向性は変えずにアクションをつけていくことをお願いしています。前回と比べて意識されていることはありますか?
渡部 関わっていて一番難しいと思うのは、一生懸命になればなるほど良くなくなってしまうということですね。ですから今回は、ご自分の能力の限界を感じてもらって、「こうでなければいけない」という思考から外れてもらおうと思っています。そうすることで、より自由に、よりナチュラルに表現することができるんですね。やらされている感がない表現が一番良く見えます。一度限界を知ってから、それぞれの能力を引き出していこうとしているところが、前回と違うところですね。
これも、弦巻さんとの創作の中で、ダンサーが脚本の言葉を発する様子を目の当たりにしたから発見できたことです。言葉を発するって難しい作業で、言い方や間合いは分っていてもなかなか思うようにいきません。ダンサーたちは、台詞を一生懸命に練習すればするほど、どんどんヘンになっていきました。だからまず正解を探す思考から外れて、何でも思う存分やったら良いというようにシフトチェンジしたら、案外楽しくできたんです。ああここからなのだなと思いました。
弦巻 「ちゃんとやらなきゃ」と思っていると上手くできなくなりますよね。僕も倫子先生の生徒さん(ダンサー)に伝えるときは、構えすぎないように、ほぐすように伝えることを意識していました。倫子先生もそういう目線で俳優の動きを見ているのですね。
今回の出演者も倫子先生の指導を通してダンスや身体表現に触れていくことで、とても良い刺激を受けています。お互いに影響を与え合って、コラボレーションの効果を発揮できる良い作品にしていきたいですね。
渡部 はい、きっと良いものになると思います。
公演情報
弦巻楽団#37『ナイトスイミング』
遠い未来。太陽系やその他惑星は次々に開拓され、宇宙は未知でも危険でもなくなりつつあった。
宇宙旅行を企画する会社で働く主人公サルタは新たな旅行先の調査中に事故に遭い、氷で覆われた星に不時着。そこで彼は、20年前宇宙旅行のさなか、事故に遭遇し行方不明になった同級生達と再会する。彼らは当時の姿のまま、氷に包まれた惑星で救助を待ち続けていた。
大人になれなかった彼らと、大人になってしまった私たちを巡る、約束と失望の物語――。
札幌演劇シーズン2022-冬 参加作品
脚本・演出 弦巻啓太
出演
深浦佑太(ディリバレー・ダイバーズ)
村上義典(ディリバレー・ダイバーズ)
池江蘭
遠藤洋平(ヒュー妄)
温水元(満天飯店)
塩谷舞
鈴山あおい(Studio MAZUL)
高橋友紀子
佐久間泉真
相馬日奈
木村愛香音
島田彩華
阿部邦彦
日時
2022年2月5日(土)〜12日(土)
2月5日(土)18:00
2月6日(日)14:00/18:00
2月7日(月)19:00
2月8日(火)19:00
2月9日(水)19:00
2月10日(木)19:00
2月11日(金祝)14:00/18:00
2月12日(土)14:00
※全10ステージ。
※上演時間は1時間40分を予定。
※開場は開演時間の40分前。
会場
生活支援型文化施設コンカリーニョ
札幌市西区八軒1条西1丁目 ザ・タワープレイス1F(JR琴似駅直結)
TEL 011-615-4859
料金
前売・当日ともに
一般 3,000円
学生 1,500円
ご予約(当日清算)
https://ticket.corich.jp/apply/115549/
チケット事前購入
・ローチケ(Lコード:10104)
・チケットぴあ(Pコード:509-399)
・エヌチケ(https://www.ticket.ne.jp/nt/)
・札幌市民交流プラザチケットセンター
・道新プレイガイド
スタッフ
照 明:高橋正和
音 響:山口愛由美
舞台美術:高村由紀子
衣 装:佐々木青
衣装助手:斎藤もと
音 楽:加藤亜祐美
振り付け:渡部倫子
宣伝美術:勝山修平(彗星マジック)
記 録:イノッチ
演出助手:大川美希、柳田裕美
制 作:久慈優花、弦巻楽団
制作協力:ダブルス
主催
札幌演劇シーズン実行委員会、演劇創造都市札幌プロジェクト、北海道演劇財団、コンカリーニョ、BLOCH、札幌市教育文化会館(札幌市芸術文化財団)、北海道立道民活動センター(道民活動振興センター)、北海道文化財団、ノヴェロ、札幌市
後援
札幌市教育委員会
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?