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19機目「心の時代」にモノを売る方法

「心の時代にモノを売る方法」(小坂裕司 角川ONEテーマ21)
僕に、ビジネス書の楽しさを教えてくれたのは小阪裕司さんでした。
その中でも小阪裕司入門編としての1冊がこちらです。

自分たちは少数派なのか、それともアーリーアダプター(市場全体の13.5%を占めるという、アンテナの高い人たち)なのか。

そんな問い。

科学と宗教の境目がなくなっていくように、ビジネスと芸術の境もなくなりつつあるように思います。

「心の時代にモノを売る方法」は、世の中で起こっている非合理的な「不思議なこと」が決して、不思議なことではないと示してくれます。

著者は、すでに「新しい消費は始まっている」といいます。全国各地で「生活必需品」ではなく、「心を豊かにする商品」を主体としたビジネスが伸びている。それは地元スーパーのような場所でも同じです。まさに「スペンド・シフト(消費活動の転換)」が起こっています。

この本の中で引用されている山崎正和「社交する人間」(中公文庫)に書かれていることは、世界の見え方が変わる一節です。

産業革命以降、(1760年代にイギリスで始まったとされる)250年間続いた工業社会における経済の軸は「生産」と「分配」でした。

そして山崎氏はそれを「経済の第一の系統」と呼びます。

そして「生産と分配を行う集団は一つの同質の欲望の体系によって、言い換えれば共通の需要、必需品の観念を絆として結ばれてきた。」

簡単に言えば、みんながマイホームや自動車やテレビや家電をほしがっていきました。「カローラからコロナ、クラウン」「14インチから20インチ、37インチ」とみんなが思っていたということ。

なるほど。もしかしたら、ここに、日本の急速な経済成長の源があるような気がします。

つまり。農村社会のモデルをそのまま工業社会に当てはめたのだ。共通の需要、それはかつては「米」でした。それを最大限確保するため、地域社会は団結していきました。こうしてムラ社会が形成されました。

それがそのまま、工業社会全体にスケールアップしたのが、日本の経済成長ではなかったでしょうか。

みんなが、所得が増えれば、いいものをどんどん買えれば幸せになれると信じ、そこに向かってきた社会。

もちろん。それによって税収が増加し、社会福祉も充実したということが十分にあるでしょう。

生産と分配の経済によって自分たちの生活が支えられているのは明白で
これからも続いていくのは間違いありません。しかし、それが最も重視される社会は終わりを告げつつある、と小阪さんは言います。

ではどのような社会が来ているのか。

山崎氏によれば、これまで一括りに「経済活動」と呼ばれてきた営みは、起源の異なる二種類の活動の複合からなっているとする。

~~~ここから引用1

「経済の第一の系統は生産と分配の経済であって、これは同質的で均一的な集団を形成しながら、それによって生産物の効率的な増産を目標としてきた。

これに対して第二の系統をつくるのが贈与と交換の経済であって、言葉を換えれば社交と商業の経済だといえる。(社交する人間より)

生産と分配の経済がよりどころにした「共通の需要、必需品の観念」という絆は崩れた。今の消費者にとって、必需品の観念は共通ではない。誰もが自家用車を欲しがり、マイホームを欲しがった時代は終わったからだ。

(中略)

新しい消費社会に「待ってました」とばかり受け入れられるビジネスのありようは、まさに氏が言うように、同じく「ビジネス」を呼ばれながら、工業社会のそれとはまったく頃なる別種のもののようだと。

そう、それは起源すら異なる別種のものなのだ。ビジネスには、まったく異なる二種類の系統が存在するのである。

そして、「心の豊かさと毎日の精神的充足感」への希求が主流をなしてくると共に、長らく―おそらく産業革命以来200年以上も―「生産と分配の経済」の陰に隠れていたもうひとつの系統、「贈与と交換」そして「社交と商業」の経済が、再び表舞台に出てきたのである。

~~~ここまで引用1

うわあ。
って感じですね。

以前に読んでいたのだけど、あらためて読むと衝撃。
そしてさらに衝撃は続きます。

~~~ここから引用2

ここでの決定的な原則は、行動に当たって目的が固定化されておらず、一回ごとの試みによってそれが模索されるということである。

交換はその起源である無償の互酬の名残をとどめ、常に需要のないところに新しく需要を作り出さねばならない。

けだしキリギリスの歌にはあらかじめ予想できる需要はなく、一回ずつそれが歌われ、人に喜ばれて初めて商品となるはずである。(社交する人間より)

もうひとつの経済(贈与と交換の経済)の決定的な原則は

1 1回ごとの試みによって(お客さんに喜ばれるかどうか)が模索される
2 常に需要のないところに新しく需要を作り出す
3 あらかじめ需要は予測され得ない

~~~ここまで引用2

うお~。みたいな。

「試作品」の時代は、決定的な原則なのですね。双方向コミュニケーションも時代の必然なんだ!って。

さらに、山崎氏の本からの引用はつづく

~~~ここから引用3

じっさい、伝統的な商人はつねに遠く旅をする人間であり、異文化の世界から珍しい宝を運ぶ人間であった。彼は旅先でそれが必要とされるかどうかを予期することはできず、かりに必要とされてもどんな対価を求められるかを予測することはできなかった。

商人はめぐりあった消費者に商品の物語を説き、その心を魅惑する会話の成功とともに需要を創造したのであった。

この交易が反復されて市場が形成され、次第に需要の大半が予測可能となっても、一回ごとの個別の商品の取引においては、同じ冒険が繰り返されたはずである。

(社交する人間より)

~~~ここまで引用3

これ、面白いでしょう。

モノを売るっていうのは、かつて、冒険だったんですね。

「商人はめぐりあった消費者に商品の物語を説き、その心を魅惑する会話の成功とともに需要を創造したのであった。」

素敵じゃないですか。

モノを売るというのはそういう冒険に出るということ。一期一会の出会いを大切に物語を語るということ。

この200年間、生産と分配の経済の陰に隠れていた「贈与と交換の経済」が歴史の表舞台に出始めている。

その流れが、この前聞いた石山アンジュさんの「シェアライフ」なのではないかな、と。

やっぱ平成の30年振り返ってる場合じゃないなと。200年、300年というオーダーで世界史、日本史を振り返る時代にきていると感じています。

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