見出し画像

31機目「魔法をかける編集」

画像1

「魔法をかける編集」(藤本智士 インプレス)

秋田県の超人気フリーペーパー「のんびり」などを手掛けた藤本さんの本。

特に、地域に取材系のインターンに行く大学生には激おススメの1冊です。取材に行くときには、何を取材するか、ゴールを決めて行かないということ。

インタビューについて書いてある以下の一節。

~~~ここから一部引用

インタビューとはいえ、あくまでも普段の会話と違いはない。話してくれる相手に、逆に自分はどんなおみやげを置いていけるか。

インタビュアーであるあなたがインタビュアーのままであるうちは、その原稿は、どう頑張っても、取材相手の演説から脱せないんです。

しかし、インタビュアーのあなたが、まるで対談相手のようになって会話ができれば、別に紙面にあなたの写真が出てこなくても、意外と読めるインタビューになってるはずです。

そうやって生まれた言葉たちは、インタビューと言いながら、その実、自分との関係性でともに生み出したクリエーションであることを誰よりもあなたが知っているわけです。

~~~ここまで一部引用

うわ、それだわ!って。インタビューっていうのは、相手と自分の関係性によってつむぎ出せれる何かなんだなと。

藤本さんはライター依頼があまりにも、決められすぎていて、どうにもしっくりこなかったのだという。

雑誌であんこ特集やるのでこの有名店の大福を取材してださい。字数はこれくらいで、写真はカメラマンさんが撮りますから。

そんな取材に行くとき、藤本さんは、お休みだったらいいのになあ、とか。大福が美味しくなかったらいいのに、とか。

いろいろ考えちゃうらしいです。

で、たとえば「みたらし、すごい美味しかったんですけどどうですかね?」とか言ってみたり。(大福の取材なので当然却下。笑)

予定通りに取材して、オーダー通りに記事書くだけなら、「俺じゃなくてもいいやん」ってそう思うんだそうです。

だから、「Re:S」も「のんびり」、も台割(ページをどのように構成するか)がないのだといいます。

すごいなと。
いま、この瞬間、自分にしか書けない記事。

というか、この場、この瞬間の「予測不可能性」にあふれた何かを、文字化していくこと。

「風と土の秋田」のマタギの言葉を借りれば、「授かりもの」としての記事を書いているんだあと。

地域の人にインタビューする人には、ぜひとも、心に置いておいてほしい1冊です。

最後に「アルプスブックキャンプ2017」のトークで聞いたもっとも印象的だった一言を。

~~~
「のんびり」を作成するとき、秋田県庁の人に、

「どうしてこの酒蔵だけ載せるんですか?」
「ほかの酒蔵もいいところいっぱいありますよ。」

と言われたのだそうです。(県庁の人に言われそうな言葉です。)

その時、藤本さんはこう答えるのだと言います。

「出会うたんです。(関西弁で)」

僕がこの酒蔵を記事にしたい理由、それはたったひとつ、出会ったから。
~~~

地域インターンのプログラムで、地域の人にヒアリング(インタビュー)をする。その目的は、売るための商品づくりをしたり、聞き書きをまとめた冊子をつくったりすること。

しかし、そこを取材の出発点にしないこと。もっともっと感性を解き放ち、「ひとり」に出会うこと。

どうしようもなく心が震えて、「伝えたい」「届けたい」と思うこと。

なぜ、この記事を書こうと思ったんですか?

という質問に
「出会ったんです。出会ってしまったんです。」

と答えられるような取材をしてほしいなあと思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?