小説 : 大谷翔平の夢



登場人物紹介:

  1. たかお(35歳、独身のサラリーマン): 仕事終わりに家で晩酌しながら、大谷翔平の活躍をスポーツニュースで観るのが日課。

  2. 上村(37歳、たかおの同僚): たかおと飲みに行く仲間。

  3. かなこ(25歳、たかおの後輩): たかおのことは生理的に苦手。

  4. 大谷翔平(MLBで活躍するプロ野球選手): 二刀流のプレーで世界的に成功を収めている。

  1. ある晩、たかおは静かな家で晩酌を楽しんでいた。古いテレビ画面には、大谷翔平の活躍が映し出されている。彼の完璧なホームランにたかおは声を上げて称賛した。窓の外には街の喧騒が聞こえる。

  2. 翌日、仕事場でたかおと上村はちょっとした休憩中に大谷翔平の話題になった。上村はにやりと笑いながら言った。「大谷翔平は出来過ぎだよな〜。あんな風に成功できるなんて…」たかおは微笑みながら頷いたが、心の中では上村の言葉が引っかかっていた。

  3. その夜、たかおは再び一人晩酌をしていた。冷たいビールが喉を通り抜け、彼の頭には上村の言葉が浮かび上がる。「もしかして、この世界は大谷翔平の夢の中なのか?」と、たかおは考え込んだ。突然の考えに、彼の胸がどきりと高鳴った。

  4. 次の日、たかおはかなこにこの考えを打ち明けてみることにした。仕事の合間に、たかおは控えめに話しかけた。「ねえ、かなこ。君は…この世界が、大谷翔平の夢の中ではないかって考えたことはないか?」かなこは目を見開き、しばらく言葉を返さなかった後、苦笑いして言った。「そうかもしれませんね…」内心、かなこはたかおのことを生理的に無理、と思った。

  5. たかおはますますその考えに取り憑かれていた。ふとした瞬間に、「もしかしたら、自分は大谷翔平の夢の中で生きている登場人物なのかもしれない。だけど、なんでこんな普通のサラリーマンなんだろう?」と疑問を持つようになった。大谷翔平に対する感情が徐々に複雑に絡み合っていった。

  6. たかおの妄想はますます激しくなり、仕事にも影響を及ぼすようになっていた。上村からの着信が鳴り響いたが、たかおは出なかった。彼は決意を固めていた。「大谷翔平に直接会って、この世界が彼の夢の中なのか確かめてみよう!」それから数日後、たかおは飛行機に乗り込み、アメリカへと向かった。

  7. エンゼルスの試合観戦中、たかおは緊張と期待で胸が高鳴っていた。ピッチャーとしての大谷翔平の活躍を目の当たりにし、彼のプレースタイルを熱心に観察していた。それはまさに理想的なプレーであり、たかおは少しずつ確信を持っていった。

  8. ある日、自主練のために走り込みをする大谷翔平の前に、たかおは立ちはだかった。彼は決意を胸に大谷翔平に対して問いかけることを決意していた。「大谷さん、お願いです。なぜ僕はこんな地味な人生を送っているんですか?」大谷翔平は驚いた表情でたかおを見つめ、言葉を待っている。

  9. 周囲の人々に取り押さえられながらも、たかおは必死で大谷翔平に向かって訴えかけた。「どうして僕は、この夢の中でこんな風にうだつの上がらない人生を送っているんですか?教えてください!」しかし、大谷翔平は混乱したような表情を浮かべ、何も答えなかった。

  10. たかおは無念さと怒りを抱えて帰国することになった。彼は地元に戻り、以前のような生活に戻ることはできなかった。家も職も失ったたかおは友人たちとのつながりも薄れ、孤独な毎日が続いた。

  11. 一方、大谷翔平は日々の練習と試合に没頭していた。彼の活躍はますます注目を集め、多くの人々の憧れとなっていた。しかし、家もテレビも持たないたかおにはもう大谷翔平の活躍は知る由もない。「僕の夢の邪魔は誰にもさせない。僕はこの夢を見続けるんだ。おやすみ。」大谷翔平は自室で独り笑いながらつぶやく。


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