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例のアがつく時計

ものを買おうかなと悩むことがすきかもしれない。呼吸をするように、「あ〜、なんかときめくもの、無いかな」とネサフする。節約したいと言っているのに指が勝手に、あのサイトこのサイトを渡り歩く。こんまりさんはときめかないなら捨てろというらしいが、私の指に言わせると「ときめくなら買え」だ。やかましいわ。

化粧品、ときめく。服やカバンや靴、ときめく。食器、椅子、植物もときめく。籠、枕カバー、絵の美しい本、花瓶、ガラスの鳥、缶の可愛いクッキー、弁当箱・・・ !

スマートフォン、・・・ときめかない。

もう全然ときめかない。iPhoneを使っているが、理由はうちのPCがMacなので揃えていると都合がいいから・OSを変えるのが鬱陶しいからである。もちろんデザインは概ね美しいと思っているけれど愛情も思い入れもなく、ただ高価だから大切に使っている。ガラケーの時は愛情あったなぁ。多分、他に選択肢がないほどに馴染みすぎて思考停止状態になっているから、愛情を持てないのだと思う。iPhone XRを買った際に一応何らかの意思表現してみようと思い、コーラルを選んだというのも足掻きっぽい。

昨年夫がアップルウォッチを購入した時は、「けっ、そんなもの」と思った。夫は元々時計好きで、デザインウォッチから一応一流ブランドまで持っており、ジャガールクルトの広告をじっとり見つめるくらいには時計を愛していた。

「えっ、買うの?みんな持ってるやつ?これまでの時計はどうするん?」
「たまにつける」
「いやいやいや、絶対つけんって。だって毎日ログとるから意味あるんじゃないの?」
「そうでもない」

いや、そうだろ。まあわかった、ただただ欲しいのだな。彼は医療用機器の開発をしていることもあり、今回の脈拍等計測機能には興奮していた。
使ってみて、彼は非常に気に入った。寝る時以外ずっと着けている。そして案の定、それしか着けなくなった。ほらみろ!私はそれが怖いのだ。私は今の時計がめちゃ気に入っているのだ。一旦ログを取り始めると、きっとずっとやりたい。データを引き継ぎたいから他製品には移れなくなる。時計までほぼ何の意思決定もなくAppleを使い続け、頭が無になるのは怖いのだ!(誤解しないでほしいのだけど、今使っている人が無なのではなく、私がバカになるということです。)

そしてここまでNO!を盛り上げたので当然の流れだが、先月アップルウォッチが気になった。おい!あほなのか!
言い訳がましいが、在宅と自粛が続いていて運動不足を実感していて、そのタイミングで夫がホワイトデー何が欲しいかと聞いてくれ、例の物欲ノート(一昨日あたりの記事参照https://note.com/tsuretesheep/n/n18a420313d03  )を見てもほどよいものが見つからず、うーむうーむと思っていた。だって、化粧品やバッグは、自分の目と触覚で確かめたいでしょ。そして最近、睡眠の質が気になっていたり、運動・ヨガなどの際にログが取れないことをもどかしく思っていたりした。そこに夫の鶴の一声。
「アップルウォッチは?」
「え!?・・・ちょっと、高すぎない・・・?」
「いいんちゃう?」
いやあ、ううん、お小遣い制とはいえ彼の財布は家族の財布でもあり、ううん、バッグは当分使えないし、うううん・・・・「はい、俺のクレカ」ううん・・・・・・・「ぽちり」はい購入〜〜〜(実際には3日くらい悩んで、使う理由と不要な理由をリストアップした。)

「ぽちった?」
「うん。」
「おおついに!いいやん!めっちゃ便利やで。いいなぁ、俺も欲しいものが欲しい。わくわくしたい。」 あれだけ不要と言っておいて結局同じ穴の狢となった私をニヤニヤと見ながら、彼は満足げに頷いていた。

私はそのやりとりをしながら、なにか心に引っかかるものを感じていた。3日悩んだというのはどういう意味だ?そして、この全力ではしゃげないこの気持ちは何だ?
「時計 アップルウォッチ 使い分け」「アップルウォッチ 長所 短所」など調べまくった。調べまくる自分に動揺しながら調べた。そして、使い分けは無理だと悟った。だれも使い分けなどしとらん。偶に、両手につけている人がいたが、そんなもん似合うのはケイスケホンダだけだと揶揄されたりもしていた。うーん私も、両手に時計は美学に反する。

深夜になり、布団に入ってじっと考えた。これから私はアップルウォッチと暮らすのか。睡眠ログがとりたいので、寝る時も、働く時も、食べる時も、そうだ防水だからプールや海も。時計が読めない年になるまでずっと一緒。・・・本来ならテンション爆上げのところなのに、どんどん苦しくなっていった。

通知が光り、冴えていたのでふと目をやると、appleから「ご購入ありがとうございます」のメールが来ていた。ぼんやりと目を通す。下までスクロールして、ふと指を止めた。クレカを快く差し出してくれた夫の寝息を聴きながら数秒考え、・・・私は注文取り消しを押した。いや重っ!!

しかしその後私はとても軽やかな気持ちになり、ぐっすりと眠れた。

ホワイトデーのものはまだ決めないまま、5月半ばを迎えようとしている。流石にあれは高すぎたと思っているし、高い割に今のところ必需品でもなく、数年ごとに買い替えが必要なので私には勿体無かったなとわかる。おねだりしようか迷っていたバッグは、USED品を激安でメルカリで見つけたのでそれでいい。いつかぶらぶらしていてときめいた時のために、今回の分はとっておこうかな。

高価でなくてもいい、高価でもいい、今の時計みたいに、可愛がれるものと出会いたい。
イッセイミヤケと吉岡徳仁の、この時計を使っています。美しいなぁ、へへへ。

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