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『ボディガード―守るべきもの―』

89/100


見た瞬間「エンダー」が反射的に脳内で流れてしまうタイトルだがエンダーとは全然違うドラマ。日本語の副題含めてタイトルどうにかならんかったんかなと思わなくもないが、中身が素晴らしいのでまあいい。

実はこのドラマ、2回目の視聴である。中盤の衝撃展開と結末と「おもしろかった」という感想を除いてすっかり内容を忘れていて、急に気になったので観てみた。新鮮に楽しめたし結末知ってるのに手に汗握ってしまい、忘却ありがとうな、と思った。

主人公デイビッドはとにかく有能であり、周囲の主要人物たちから頭ふたつ分くらい抜きん出ている。頭ふたつ分追い抜かれている人々は、頭ふたつ分追い抜かれていることにさえ気づけておらず、彼を評価できる唯一の手がかりとして見えているのは「PTSD」だけ。あらゆる場面で「異常な状態なのに意地張って助けを求めない困ったちゃん」という解釈に安易に飛びつき、デイビッドの言動を理解できない。素朴で誠実で序列なんて本質的にはどうでもいい彼は、それでも周囲に最大限の敬意を払い、何とか皆と協働しようと努めるものの、あまりの周囲の無能ぶりに、事態は切迫しているしもうオレがやるしかないと孤軍奮闘することになる。それを証明したのが最終話の爆弾背負って警察たちと長々やり取りするシーンだが、デイビッドも「ほらねこうなるんだよ」と内心虚しかったに違いない。

つまりそういう意味でデイビッドとジュリアは「仲間」だったのだ。思想の違いも立場の違いも超えて、彼らは同士であった。広大な砂漠を独り進んでいるときに互いを発見し、さらには生死の瀬戸際まで一緒に経験してしまった。寝ないわけがない。

最終話ラストの「そんなデイビッドもすっかり裏かかれてました」というオチは、非常に示唆に富んでおりよかったと思う。デイビッドの「やっちまった」という表情も真に迫っていてよかった。そして、どこの馬の骨ともわからないカウンセラーに「助けて」と言えたデイビッドに、私は本当に純粋にささやかに、感動もしたのである。

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