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『ザ・チェア〜私は学科長〜』

79/100


毎度のことながら、副題。どうにかならないものだろうか。本当にどうにかならないか??かつての洋画のように思いっきり真面目に邦題を考えるか、それがだめならもう原題のママでいいのでは?謎の副題が多くの作品への入口を間違いなく塞いでいるし、その価値を控えめに言っても1割は下げている。世に蔓延るこのタイトル問題は本当に真剣に検討されるべきだ。

さて副題問題はともかくとして、とても不思議なドラマだった。とある大学の英文学科という小さな世界のなかで、静かに巻き起こるいくつもの竜巻を、少し離れたり少し近づいたりしてみながら、淡々と見つめるドラマ。もちろん当事者たちにとっては大事件だ。とりわけジユンは見ているだけで苦しくなるほどに大変だ。現代社会に見られるさまざまな課題や問題を容赦なく浮き彫りにしていくが、ひっきりなしに現れる問題の数々を、果たして本当に解決できたんだがどうなんだか、はっきりしないままに物語は進み、そして終わる。

本作を観終えてふと思い出したのは、漱石の『道草』だった。だいぶ違うがどこか似ている。「世の中に片付くなんてものは殆どありゃしない」。

それでも本作のラストは、なんだかだいぶさわやかだ。みんな一生懸命生きてるの。とまあこう評してしまってはまるで三文芝居に対する間抜けな感想みたいだが、実際みんな一生懸命生きているのだ。そういう人々を一生懸命描こうというそのまなざしこそが、本作の真価かもしれない。


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