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#3 昼休みと焼き立てのパンと恋人

18/06/12

昼休み5分前。猛烈な気分の落ち込みが私を襲った。
その瞬間、私がやっていた案件を引き継いでくれた先輩の仕事が大一番を迎えていた。

すぐ近くで仕事の佳境へ立ち向かっている先輩の姿。本来であれば私がやっていたはずの仕事。
私はそれをやりきることができず、数か月前倒れてしまった。

私の後任として、業務に入ってくれた先輩。ただでさえ忙しかったのに、さらに拍車をかけたであろう。どれだけ残業させてしまったか。どれだけ苦労を掛けただろうか。
想像しただけでは計り知れない。

申し訳なさとか、悔しさとか、不甲斐なさとかが一気に襲ってきて、私が落ち込むのに多くの時間はいらなかった。
「どうして私は病気になったの?」
昼休みのチャイムが鳴ったと同時に、たまらず職場の外へ飛び出した。このまま席に座っていたらどうにかなってしまいそうだ。

お気に入りのパン屋さんへ足を運ぶ。全く食欲はなかったけれど、食べないわけにはいかない。こんな時こそ、無理やりでも美味しいパンを食べよう。
小さなパン屋さんはいつ行っても大盛況だ。焼き立てのパンたちを見て、どれにしようかと選ぶ。大いに迷った結果、選ばれしマルゲリータとあんぱん。

火傷するんじゃないかってくらい熱いパンを持って公園へ向かう。ベンチを占領。
どうしよう、やっぱり落ち込んでしまう。

「どうして私は病気になってしまったの?」
「どうして私は人生につまずいたの?」
涙が溢れそうになった瞬間、恋人からおはようのラインが来た。

普段落ち込んでいる姿はめったに見せない(遠距離恋愛のため物理的に見せれない)私だけど、今回は泣きついた。
「落ち込んじゃったよ~」というメッセージを皮切りに、少しずつ文章を画面に打ち込む。
数百キロ離れた場所から、私を「適度に」励ましてくれる返事が返ってきた。

「無理やり」励ますんじゃなくて「適度に」励ましてくれる。この距離感と脱力感が心地よい。
20分弱ラインのやり取りをしただけで、ずいぶんと元気になっている私がいた。
その結果「これは生理前にめちゃくちゃ落ち込んじゃう現象だ」ということに気が付いて、一気に気が楽になった。

焼き立てのあったかいパンを食べて、職場へ戻った。

***

とはいえ、一日中体力がずっと元気で保つことはまだ少ない。
今日は終業時間直前に一気に無気力になって、トイレでしばらく固まってしまった。
頭が痛いとか、気持ち悪いとか、具体的に症状を説明できるやつじゃなくてとにかく「動けなくなる」症状である。

廊下で座り込んでしまいそうになったけど、無駄に周りに心配をかけるわけにもいかないと思って、とりあえずトイレへ駆け込んだ。
しばらく壁に寄りかかって、じっとして、何とか動けそうになったら席に戻る。その繰り返し。

電車を乗り継いで家に帰ってきた時には、もう体力の限界でそのままベットに横になった。
少し横になると元気になる。食欲も回復して、お風呂に入って、ご飯を食べた。
お土産のパンが家族に好評で、また買ってこようと心に決めた。

まだまだ本調子にはなれないけれど、なんとか一日一日をクリアしていきたい。

明日も生きていこう。