私の不妊治療⑨「選択肢」

10月初旬に退院したものの、体調の事を考えて、移植は1周期見送ることになった。
久しぶりに、薬を止めた状態で生理を待った。
大体11/10前くらいに来るかな?という予定だった。


しかし元々は稀発月経気味の私、なかなか来ない…このままでは11月移植も出来なくなってしまう!という焦りも虚しく、
結局生理が来たのは11月後半。
いざ、移植周期へ。


内診し、最初の移植日は12/9に設定された。
妊娠できる日が近付いているのかもしれない、というワクワクドキドキの日々。

初めて採卵手術をしたのは5月の事だったので、当初は6月には移植している予定だった。
その後も採卵の度に、8月かぁ、10月かぁ、と考えていたものの、
物事は上手く進まないもので、結局年末になってしまった。


患者仲間のTwitterに頻繁に出てくる「エストラーナテープ」を初めて目にした。
イラストを描いている人が多かったけれど、私に絵の才能は皆無なので、シンプルなまま貼り付ける。
ただ…肌が非常に弱い私、1回目の貼付分からかぶれてしまい、2日後の入浴時に声が出るほど沁みる傷になってしまった。
ここでもこんな苦労があるのか、と実感した。

でもそれだけでは終わらなかった。

内膜が育たない。
内膜7mm以上で移植に進めるというが、私の内膜は6mmでストップしてしまった。
「移植は1週間延ばしましょう。」
このかぶれるテープを、さらに貼り続けるのか…それも我慢。
しかしさらに次の受診日を迎えても、私の内膜はまだ6mm…たったの0.1mmでさえ厚くなっていなかった。

「今週期は難しいかもしれない。これが最後の候補日です。」
指定されたのは12/24クリスマスイブ。
なんと生理開始から38日目!
1か月分あったサプリメントも移植前に飲み切ってしまった。
テープをはがした後にはこれでもかというくらいワセリンを塗りたくった。
ワセリンをこんなに使ったのは、多分赤ちゃんの頃以来だと思う。
(アトピー性皮膚炎が酷い子供だった。)


元々排卵が遅い私、人工授精の時も卵胞はなかなか大きくならなかったし、内膜が育つのも遅かった。
それでも最終的にはちゃんと成長していたから、きっと大丈夫、信じるしかない。

迎えた移植前の最終受診日。
内膜は9mmに。
「いきなり成長したね…」主治医もそう言っていた。

ジンクスなんて本当はあまり信じていないけれど、クリスマスイブだし美味しいものを食べたい、と
移植日当日はイタリアンレストレランでフルコースを堪能した。
渡り蟹のパスタ、自分では絶対作れない。

年末年始休暇を挟むため、通常より判定日が先になった。
陰性だった場合は無駄になる時間が結構ある。
きっと1回目は上手くいかないだろうな、と考えてしまう。
今まで何度も期待し、落ち込んできたから、きっと自己防衛的に100%の期待が出来ないのだと思う。

でもいつかは妊娠する、いつかは陽性を見ることが出来る。
ならばそれは今日かもしれないじゃないか。
そう思って挑んだものの、やっぱりダメだった。

「HCGの値が低ければ着床障害を疑う人はいるが、あくまでHCGは受精卵から出るもの。
子宮側に問題が無くても卵に問題があれば着床はしない。」
そう教えてもらった。
2回目も3回目の採卵も、多核受精が多かった。
その中で胚盤胞になったとしても、まともな卵かなんてわからない。
私に残された残りの凍結卵は、大丈夫なんだろうか、その心配はなくならない。


移植前に検査をする必要性について、尋ねた。
しかし主治医によると、「はっきりとしたエビデンスが確立されている検査はほとんどない。
それに、子宮側に問題があるとは限らない。本人が決めればいいけど、オススメするほどではない。」とのことだった。
特に多く検査されているのは子宮内膜炎の検査と着床の窓の検査。
ただ、子宮内膜炎の人というのはかなりいるらしく、妊娠出産に何ら影響を及ぼしていない人もごまんといるらしい。
さらに着床の窓だって、1度検査したからといってその後の周期もいつも同じかなんて誰も分からない、と。


それでも色々考えながら、仲間に聞いた。
世の中にはたくさんの検査がある。
どれに効果があるのか、結果に対しての対処法は確立されているのか。
結局のところ手探りな部分が多い。
アドバイスもたくさんもらって、念のため、子宮鏡と、内膜炎治療用の抗生物質の処方だけ、ということが可能かどうかを確認することにした。


移植する場合も2つの選択肢が与えられた。
残された胚盤胞を2つ移植するか、
前核期で凍結している受精卵を2つ、初期胚まで培養して、どちらか良好な方と、胚盤胞を2段階移植をするか。

恥ずかしながらまだ2段階移植のメリットを知らなかったので、これもまた帰り道に調べた。
そうすると、そもそもあまりメジャーじゃないらしいことを知った。
何故なら多胎妊娠の確率が上がるから。
昔2段階移植が確立された頃は積極的に採用され、妊娠率は上がった、しかしそれに伴い多胎妊娠の確率も上がったらしい。
多胎妊娠はリスクが高い。母子の負担が大きい。無事に出産できるかどうかも危うくなる。
そのため、年齢的な制限を設ける、または複数回着床が出来なかった場合にのみ適用されるべきである、というのが一般論らしい。
(2段階移植に代わり、今はSEET法といって、受精卵の培養液も凍結しておき、培養液を子宮に戻した後、移植をするという方法もある、
けれどあまり聞かない。)


ちなみに胚盤胞2つの移植もそう、多胎妊娠の可能性が上がるため、30代前半で2回目の移植に臨む場合に、
積極的に提案されるものではないらしい。

その辺りは主治医の裁量であって、患者一個人に与えられる選択肢は限られているのが普通だ。
つまり、私のケースで、2段階移植、胚盤胞2個移植を提案されるのは珍しいと思う。
それでも着床率が上がる処置は非常に有難いことに違いない。


そもそも複数回着床出来ない場合にしか2個移植に進めないというのは悲しい話だ。
着床しなかったと絶望する回数は少ない方が良いのに。
年齢だってそう、リミットがあってもなくても、私たちは最短が良い。
それに長い間不妊に苦しめられている患者たちは、「2人目」を望めるかどうかも懐疑的になる。
今、母になれるかもわからないのに、さらにその先の話なんて…全く手が届かないかもしれないじゃないか、と考えてしまう。
だからきっと双子や三つ子でも喜んで受け入れる人が多い。
医療従事者に歓迎されないことは理解出来るけれど。

なかにはどうしても体外で育った胚盤胞が着床できない身体の持ち主もいるらしく、
そういう人には初期胚のまま体内に戻す他方法がない(そうしないと判断できない)とのことだけれど、
一般的には2段階移植の着床率が高いということだったため、
帰宅して夫と相談した結果、次の移植は2段階でお願いすることに決めた。


生理が始まって受診した日、検査についても聞いてみたものの、子宮鏡はやっていないということだった。
しかし、内診の際気になることがある患者には抗生物質を処方している。私はそれに該当しないとのこと。
それなら今回はとりあえずそのまま2段階移植で、ということになった。


前回の移植のこともあり、移植予定日はD30に。
仲間と比べてみたけれど稀な遅さだった。


次回「逆転」


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