私の不妊治療⑪「悪阻と仕事」

病院で陽性判定をもらった時はかなり落ち着いていた。

きっとフライングをしていなければ、
フライングした時と同じように泣き崩れたんだろうけれど、
「HCGを打ったりしていなければ偽陽性が出ることはない」
そうフォロワーさんに教えてもらった直後だったので
すんなり事実を受け入れられたと思う。


そこから9日間、胎嚢を確認出来るまでの待機期間が始まった。
最初の5日間ほどは何の症状もなく、本当にお腹の中にいてくれているのか不安になった。

まだ安心できない、喜びすぎてはいけない、そう言い聞かせる日々。


判定から1週間ほど経ったあたりから、身体に違和感を感じ始めた。
週数で言うと5w2dあたりだ。
食べ過ぎ、というほど食べていないのに食後の満腹感が大きく、食べ過ぎて食道まで食べ物が詰まっているんじゃないかというほど苦しくゲップが出る感覚。

その翌朝は朝ごはんをろくに食べられなかった。
食べている途中ですぐ満腹になる感覚があり
食事を止めざるを得なかった。


しかし出血などはなく、「これは悪阻なんだ」と思えた。
悪阻が出ていれば妊娠している証拠だ。
苦しいけど、辛いけれど、、悪阻があるから、お腹の中にいてくれていると思えるんだ。


BT21で受診したところ、胎嚢が確認できた。
心拍確認もできれば良かったのだけれど、まだそこまではいかなかった。
でも、子宮の中にいてくれているのがハッキリ分かった。

黒い胎嚢の中に白いリング状の卵嚢が見えていた。
胎嚢は楕円形に似ていたけれど先端だけがうっすら尖っていて、その先端部分に近い場所にある卵嚢が、まるで目のようで…デフォルメされたメダカのような形だった。


胎嚢確認後も安心は出来ない、そして悪阻は続く。
悪阻のタイプが少しずつ変わって、どうやら「食べ悪阻」と言われるものになった気がする。
食事時には少し食べただけで満腹になるのに、1時間もすれば空腹で気持ち悪くなる。
断続的に胃に何かを入れないと気持ち悪い。
でも食べたら食べたでゲップが止まらないほどの満腹感。
ちょうど良い塩梅の食事の摂り方が分からず、試行錯誤の日々。
間食と食事を両立させると食べ過ぎ、体重が心配だ…

幸い、食べられないものは特になく、カップラーメンなどのジャンクフードでも美味しく平らげた。
だから太るのでは…と思わずにはいられないが、グミやクラッカーなどを胃に入れたところで気持ち悪さは治らないという厄介な状況だった。

幸い会社の方はまだ週3回程度は在宅勤務で、家にいる間は自由に食べ物を口にできる。
問題は出社時で、もちろん本来は決められた昼休憩にしか食事をしてはいけない。
けれど耐えられるはずもなく、自分のデスクの位置が人目につかないのをいいことに、1-2時間おきに食べ物を頬張り、昼休憩など関係なかった。
(隣の席の同僚は育休中で不在だ)

けれど緊急事態宣言が解除された翌週…3/8からは原則出社が必要になる。
今自分のデスクの島の人間…自部署の人とはシフト制で代わる代わる出社しているため、会社では顔を合わさないが、一同が出社した時はさすがに私が四六時中何かを食べているのが目につくだろう。

そして月末は決算棚卸しが待ち構えている。
社員総動員で行われる重要行事。
半年前の半期決算棚卸しの際、私はOHSSで入院中で会社を休んでいる。
もちろん入院の理由を全員に伝えているわけではないし、今回も休めば2回連続の欠席、印象が悪くないはずがない。
でも、私はその時体調がどうなっているか分からない。


もしかすると案外元気で棚卸しも参加できるかも、と考えていた矢先のこと。
上司も後輩もおらず自分だけが出社していたときに数十キロの荷物が届いた。
一つ一つは2kg程度のもの。
一度には持てないので何往復かして所定の場所に片付けていた。
その作業がいつも以上にしんどく感じ、少し気分が悪くなった。
…これは棚卸しは無理だな。
早めに上司には伝えなくては、そう思った。


3/8が心拍確認の予定だった。
心拍が確認できたらひとまず上司含む自部署の人間には話そう。
もちろん本当は安定期を迎えてから言いたいけれどやむを得ない。
それでも出来ることなら、他部署の人間にはまだ知られたくない。
…棚卸しを欠席するための口実を考えなくては。
そう考えていた。


翌朝目が覚めると家族LINEが賑やかだった
「つら美の次の診察は明後日だね」
「水曜日じゃないの?」
「月曜日でしょ」
母も、姉たちも、私ほどではないけれど妊娠に悩みを持っていた時期がある。
私の治療のこと、体調のことも気にかけていてくれていた。

「明後日(月曜日)だよ」と返す前に、トイレに立った。
そこで血の気が引いた。


ルティナス膣錠のカスが流れ出るから念のためと付けていた23cmの「多い日の昼用」ナプキンが一枚真っ赤になっていた。
陽性判定を受けてから一度も出血という出血がなかったので、とても驚いた。
ナプキンを外して裏を見ても、しっかり全面に吸収された跡がある。
すごい量の水分が流れ出てしまっていた。

BT26の朝の出来事だった。


次回「切迫流産」

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