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yume miduki

 その人はいつも旅をしていた。スリッパを履いて、スーツケースを転がしている。彼女はまっすぐの廊下を実にリズミカルに歩く。長い廊下を曲がってしまうと、すぐそのコースは終わってしまうのだが、彼女には関係なしだ。何度も行ったり来たりと(本物の旅行者の出たちそのもの)忙しいのだが、不思議とゆったりした彼女独自の時間軸で生きているようだった。

 私には、機嫌がいいと歌ったり踊ったりする悪癖があるのだが、私が踊っていて他の人達が苦い顔をする中、彼女だけが喜んでくれた。私はそれが嬉しかったのだ。愉快な気持ちで彼女の前で踊った。翌朝、筋肉痛が私の身体を襲った。
もうきっと会うことは叶わないだろう。
いつか、2人が同じ夢を見てその夢の中で彼女のために月明かりの下踊りたい。

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