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丘の上で

むせ返るようなクチナシの匂いが辺りを漂っていた。海岸の近くの坂の上の洋館にその人は住んでいた。ギターを弾き、小鳥のように歌う人だった。桜がちらちらと舞うある日、彼女は涙を流していた。好きな人に想いを伝えたと言う。残念ながら想いは届かなかったようだ。泣いてる彼女は美しかった。

クチナシの咲く頃には彼女の涙も乾いていた。僕らは浜辺で楽器のをセッションをした。彼女はギターを弾いていた。僕はオカリナを吹いた。波のザーザーという音と風のゴーゴーと吹く音、僕たちの演奏する楽器の音が混じっていた。海の協奏曲だねって君が嬉しそうに言うので、僕も嬉しくなった。

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