ラブレター
嫌なところがない人なんていない。私は私のことを好きでいることをやめられないけれど,それを上回る嫌なところで押し潰されそうになるときもある。
だから君のことを嫌になったなんて言う権利もないし,君の良いところは好きだけど嫌なところは嫌いだと言って突き放すのは,非常につまらないことだと思う。
でも,正直に言うと,君のことをどうしても好きになれないでいる。みんなそうなのかもだけど,目で追ってしまう人と,好きな人は違う。もっと言うと,好きだから目で追うんじゃなく,見たいから追うのであって,見たいと思う理由は好意以外にいくらでもある。
適当な言葉で誤魔化して君のことが好きだと,君に信じてもらう努力はしたけど,君のことが好きだという自分には辿り着けなかった。努力の仕方も分からなかった。
だからただ好きだと言ってくれる君の横に行って,ただそこにいるしかなかった。
君とは合わないわけではない。居心地は確かに良いのかもしれない。だけど,合うところとか合わないところが,好きだとか嫌いだとかに繋がらない。そういう感情に繋がらない。
ここは合うんだ,とか,合わないんだ,とか,こういう時こう思うんだ,とか,そういうのを見つけた時の喜びや失望が一切ない。
合う人のことを好きになったことがあるのは,君も知っている話だと思う。けど,合わない人のことをすごく好きになったこともある。
だから君を好きになれない原因は,合う合わないじゃない。
あ,この人のこといつか好きになるんだろうなっていう瞬間や,初めて笑った顔を見たとき。みんなあの人のこと好きらしいよと聞いて初めて色目で見た時。偶然朝会って,廊下で会って,なぜか毎日目が合って,何度も合わせて,そうやって,好きになってきた。
けどそれだけじゃない。
こいつはお前のことが好きなんだよってイタズラっ子がばらしたとき。
そして,好きになろうとしてなったとき。
私は今まで何にもなかったと言って仕舞えばそうなんだけれど,そうやって生きているけれど,私にとって好きな人がいない日々なんて退屈すぎて仕方がない。友達がいれば別だけど,それだけじゃどうしても足りない。
満たされたいんじゃなく満たしたい。好きって気持ちで自分を満たしたい。それがまず最初にある。
じゃあ今はって思うとね,他に好きな人なんて作れるわけないし,君で毎日は埋まってて,じゃあ何が私を満たすの?君が満たしてくれる?
いつかそうなるかなって思ってた。でも,どうしてもそうなれなくて,君の好きじゃ埋まらなくて,好きじゃなくて可愛いって言って欲しくて,あれ,本当は逆じゃない?可愛いじゃなく好きって言ってほしいんじゃない?って,いや,でも君の可愛いも好きもただ私の"告白"と"可愛い"の数に加算されるだけで,心に貯まるものなんて何もなかった。
ねえ,私は好きだったんだ。恋をすることが好きだったんだ。人を好きなることが,誰かと付き合うことより,誰かに好かれることより,ずっとずっと好きなんだ。
だから,今,誰のことも好きになれないこの,ごめん,しがらみが嫌。
この手を離して自由にしてしまえば,好きに走って追いかけて,好きに出会える気がするのに,いや,誰のことも好きになれなくても,自由に好きになったり飽きたりできることが,私にとってはすごく大切で
それでも付き合いたいと思う人,それでもどうしても忘れられない人,どうしてももう一度会いたい人,そんな人を知ってしまって
また,そんな人とまた出会えるから,
まだ出会ってない思い出にこれからも出会えるから,
あなたを好きになろうとすると,ただ嫉妬ばかりが出てきて,浮気されるんじゃないかとかまた利己的な心配ばかりで,もう私はもう,もう,
なんて嘘だよ,ごめんね。明日もよろしくね。
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