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2020年8月 春野亭日常 水城さん見守りフェスの記録 その3

その人がやりたいことだけをやる。するとすべてが、これ以上ないほどスムーズに噛み合って進んでいく。そんなフローに満ちた日々だった。

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8月9日……と書き出して。「あ、今日、まだ今日だったんだ……」と思うことしきり。
いま、水城 ゆう (Mizukiさんはとても静かに寝息を立てて眠っています。千客万来、意識が朦朧としていても、緊張感もあったのでしょう。疲れ果ててしまったのかな。


朝の会話で「もう、行こうかな」と言うので、「行ってもいいけど、入り口だけで帰ってきてね」と返す。すると「そんなに見てないで」と言う。
これは、「私たちが見てない隙きをみて、行ってしまおう」という魂胆だな、と思って、目を離さないようにしているんだけど……。フェスは意外とワイワイ、わさわさしているので、誰も見ていない一瞬があるかもね。


さて、本日8月9日の春野亭。
今日もまた、たくさんの助っ人、天使、フェス参加者などなどお見えになりました。
午前9時半。まこりんこと佐藤 誠さんが、万里ちゃんの治療に来てくださった。数日前から左手の親指が痺れているという万里ちゃん。2時間じっくり施術を受けて、少しからだの緊張がとれたかな。


12時すぎには、水城さんの専属美容師?の和食 雅子 わじきちゃん登場。襟足は先日カットしたそうですが、前髪がうっとうしくて、無意識にもかきあげていた髪を切ってもらおうと万里ちゃんが連絡したところ、今日だけポカリと空いていたそうで。
ベッドに座ったままの水城さんに話しかけながら、リズミカルなハサミの音が響く。水城さんも気持ちよさそうに首が伸びるじゃないか。首を伸ばすのをあんなに怖がり、痛がっていたのに。30分後にはすっかりさっぱりと。そして男前になりました。

カットが始まる直前には、水城さんの親族が到着。カットの準備から見守って、終えてしばらく、ゆっくりとお話して(といっても、ご本人はほとんど目をつぶって夢幻の世界という感じ)おられると……
さらに来客あり。なんと水城さんの出身地福井県勝山市の小学校からの同級生というカツウラさんが現在お住まいの石巻から。「とにかく、会うなら今日だ! と昨日決めて出てきました」とのこと。水城さんに向かって、さまざまな思い出を話しかけておられました。


で。
あまりにも連続になってしまっているので、たいへん失礼ながら、ワタクシメが割って入って「今日は、ヘアカットは予定していましたが、その後から切れ目なくお見舞いが続いていて、介護チームとしては、ここらで少し水城さんに休んでもらいたい」と。


ああ。ほんとにごめんなさい。
時折目を見開いたりするので、目があったような気もするし、数日前に痙攣して息が止まりそうになったときと比べると、話すと夢幻の中から「はい」とか「わかりました」などという返答も帰ってくるから、まだまだ大丈夫と思えるし、たくさんお話したくなりますよね。
でもでも、夜中に一息一息を見守っている見守りチームからすると、昼間の疲れが夜の不穏にも影響するのではないか……と気が気でなく。しかも、来客続いておむつを替える時間もとれないし……。これが最期と思って来てくださる方のことを思うし、でも水城さんの体力も思うし。


あんど。
ヘアカットで細かい髪の毛がついたシーツの交換、Tシャツの交換、体を拭く、おむつを替えるとできるだけ負担の少ないように一気にやりたい。その段取りはどうしたら? しかも、その前にバイタルがどの程度あるかちゃんとチェックして……と思い、ひたすら今日の天使の明ちゃん小見 明子ちゃんを待つ。はい、昨日に引き続きプロ(現役訪問看護師)が配置されております。


明ちゃんを待っていると、その前に別の天使、いや堕天使? ダーさんこと島田 啓介さん登場。「フェスに参加したくなって……」と。ダーさんはお友だちのしょうさんのお母様の介護チームに入っていたこともあり、手慣れたもの。(やっぱり本物の天使だった?) まずは、座る位置が決まらなくて常にもぞもぞしている水城さんを抱えて、いい位置に座らせてくれる。


そんなこんなしていると、葉っぱさん こと隣町の牧師の北原 葉子さんが登場。聖書を読んでお祈りしてくださいました。その短い夕礼拝を私たちが和室でしている傍ら、リビングではわじきちゃんに髪をカットしてもらう万里ちゃん……という、不思議というか、もはやカオスな図が展開されていた。


葉っぱさんがいったん帰って、ようやく食事。
市谷 理子ちゃんが森下 雅子様が送ってくださったトマトソースをオムレツにかけたものをつくる。加えて、私がつくって春野亭冷凍庫に保管されていた冷凍餃子を焼き、そしてダーさんのおみやげの笹の葉寿司などを囲む。あれ?なんだかいつもの春野亭じゃん。ダーさんのダメンズ話で笑いが絶えない。


そしてようやく、待ちに待った今日の大天使、明ちゃん登場。ベテラン訪問看護師の明ちゃん、まず体温、酸素、血圧など水城さんのバイタルをチェック。そして、一番水城さんに負担の少ない方法を考えてくれて、私たちを配置。そして着替え、シーツ替えとおむつ替えを一気呵成に! 


そして、いまは、ダーさんのおみやげのケーキをいただいております。そんな今日。ふう。
万里ちゃんは、食事のあとから眠っています。
夜中すぎに、葉っぱさんが再び来てくれるとも。
人が集ういつもの春野亭。


いつものとおり、みんな、やりたいことだけ、各自好き勝手にやっています。水城さんの寝息は、浅く、小さくなってきています。(ずっと見てないでよ……といわれても、見張ってますw)

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