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噛み合わない会話〜NVCとキリスト教小話②〜

2021年7月4日(日)のオンライン礼拝の聖書箇所は以下の「ベタニアでの香油注ぎ」のエピソード。そこでは、弟子たちとイエスの『噛み合わない会話』が繰り広げられている。で、こんな問をつい考えてしまった。ついでに自分で解答案を書いた。



問1) 以下の聖書箇所の対話部分を、登場人物たちがNVCerであると仮定して、キリン語に翻訳せよ。

マタイによる福音書26章6-13 (口語訳)
6さて、イエスがベタニヤで、重い皮膚病の人シモンの家におられたとき、 7ひとりの女が、高価な香油が入れてある石膏のつぼを持ってきて、イエスに近寄り、食事の席についておられたイエスの頭に香油を注ぎかけた。 8すると、弟子たちはこれを見て憤って言った、「なんのためにこんなむだ使をするのか。 9それを高く売って、貧しい人たちに施すことができたのに」。 10イエスはそれを聞いて彼らに言われた、「なぜ、女を困らせるのか。わたしによい事をしてくれたのだ。 11貧しい人たちはいつもあなたがたと一緒にいるが、わたしはいつも一緒にいるわけではない。 12この女がわたしのからだにこの香油を注いだのは、わたしの葬りの用意をするためである。 13よく聞きなさい。全世界のどこででも、この福音が宣べ伝えられる所では、この女のした事も記念として語られるであろう」

===解答案===

弟子「あなたが香油をイエスさまに注ぎかけるのを見て、私は驚き、ショックを受け、同時に悲しみが湧いた。私たちは主とともに多くの街々を巡り、貧しい人たちのために働いてきた。その香油は300デナリは下らないだろう? これは私の推測だけど、きっとそうだ。そうに違いない!」

「ああ、憤りがわいてくる。はっきりいって怒っているんだ。共に生きることをしたいんだ! 分かち合いが大切。生命生活の維持が大事だ。300デナリといえばほぼ年収1年分じゃないか! それを床と髪に吸わせてしまうなんて! 売れば生活維持の手段になりえたのに! 豊かさを味わうこと、そのために創造性を使ってほしかったよ。 調和や配慮・気遣いも欲しいなぁ。これを聞いてどう思うか教えてくれないか?」

女(サイレント・エンパシー:沈黙の共感)……私は、あなたのリクエストに、いまはNoと答えたいわ。黙って静かに自分に共感を与え、そして周囲の人に共感することを選びたいの。……

……私にとって大切なのは、私にとっての宝、何にも変えられない自分の命よりも大切なものを、ほんとうに心から大切にすること。その表現の手段としてこの香油をイエス様に注いだの。自分がやったこの行為に対してはひとかけらの後悔もないわ。清々しい気持ち。ほんとうに! ああ、なんて素晴らしいのかしら! いまの私の心をニーズの言葉で名付ければ「本物であること」、「真実」が満たされている状態と言えそうね。……

……そう、あのお弟子さんはどうやら私を責めているらしいけれども、ニーズを味わっていると、まったく気にならないわ。……

……いいえ、やはり彼のことが気になるわ。怒っていると言っているけれども、その怒りの奥に、なにか大事なことがありそう。「見てもらいたい」「認めてほしい」という心の叫びを、怒りで覆い隠しているようにも感じられるのだけど、どうなのかしら?……

イエス「私が代わりに答えよう。この女性のしたことが気に入らなかったのかな。残念な気持ちになったのは、配慮や気遣い、効率性などのニーズがあったからかな? そうかもしれないし、そうではないかもしれない。あなたはもしかしたら、自分のニーズにまだじゅうぶんつながれていないのではないかな? ニーズと切り離されているのは不安定だし落ち着かないものだ。その嘆きがこの女性を咎める声となって、あなたの中に響いているようだが、どうだろうか。」

「実は、この人がやってくれたことを、私は気に入った。とても満足した。私にとって、いま、これが必要だとこの女性は判断したのだ。油を注がれ、私は慰められ、安心し、満たされているよ。それを味わっていたらリクエストが浮かんできたので表現させてくれないか? 意識していて欲しいんだ、貧しい人はあなた方といまもこれからも一緒にいるだろうが、私はいつまでも一緒にいるわけではない、ということを。明確に伝わったかどうか知りたいので、このことを伝え返してくれないか?」

弟子たち(口々に)「貧しい人はいつも一緒にいるが、イエス様、あなたはいつまでも私たちと一緒に居るわけではない……ですか?」

イエス「ありがとう。そういうことだ。私は確信しているよ、この女性が私のからだに香油を注いだのは、彼女は知らなかっただろうが、私の葬りの用意をするためだったのだということを。そして、私は感謝している。このことの真の価値を受け取り、彼女の行為を認めている。」

「(味わいのための沈黙を経て)もう一つリクエストが出てきた。みんな、聞いて欲しい、もしも聞く余裕があったら。いいかな? こんなビジョンが見えているんだ。あなたたちは私の弟子として、自分のいのちを顧みず全世界に福音を伝えていくだろう。これまでもそうだったように、これからも、だ。そして、その先々で、この女性がしたこともきっと語られていく。これを聞いて、どんな感じかな?」

弟子 (ああ、イエス様。そうです、もちろん、”命を顧みずに”ご一緒に伝えていきます。そのことを見てくださって、認めてくださって……ありがとうございます!)(あれ?でも、葬りの準備ってなんだろう? 確かにこのところイエス様の発言は過激度を増しているし、反対派もいるようだからますます身辺警護は気をつけないと……)

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