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Rainbow㊱

 熱帯夜④

 陽が沈み、夕闇が興奮冷めやらぬ観客たちを急かすように辺りに迫ってきていた。日中のステージは、予想以上の大盛り上がりで幕を閉じた。サポートメンバーとスタッフで会場や控室の後片付けをしていた。真里と琴美はメインステージの控室を片付けしながら、あれこれ話しをしていた。
「私ね、実は真里に内緒にしてたことがあるんだ」琴美は、テーブルを丁寧に拭きながら話した。
「真里が劇団休み出して、先輩とかにも頼れない状態になってさ。私一人ではもうどうにもならない状況だったとき、千夏さんにね、相談したの。真里を劇団に戻す方法はないかって。そしたら、千夏さんがその場でエリーシャに連絡して、あっという間に今回のドラァグクイーンショーが決定になっちゃった。本当に、有り得る?って感じだったけど、……やっぱり、エリーシャは凄い人だよ」
「琴美には、本当に心配掛けてごめんね。あと、たくさん気苦労掛けさせて、ごめん。私、きっと自分を見失っていたんだと思う。夢とか目標とかもこれまで漠然としたものばかりでさ、正直どうでもいいと思ってた。だけど、琴美は私を見放ずに居てくれたし、エリーシャは導いてくれた。今になって思うと、自分がどれだけ我儘だったのか。恥ずかしくなるよ。だから琴美、ありがとう! 私を信じてくれて」真里が琴美に笑顔を向けると琴美は、涙を拭っていた。
「もう、また泣いてる。本当に世話の焼けるリーダーだこと!」真里は琴美の元に行き、優しくハグをした。(つづく)

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