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夜明け以前

気流に引き伸ばされた飛行機雲の境界線
その向こうのオリオン座の小さな光
夜通し歌い続けた虫たちを
ようやく眠りつける朝が昇る
言葉を前にして言葉を持てない僕が
語れるのは目や口や体の僅かなリズムで
それでも伝わりきらないものばかりだから
夜明け以前の空を吸い込む
一気に飲んだ牛乳が呼吸する度
ちゃぽちゃぽ揺れて星と混じる
空を吸い込み、吐き出しを繰り返すと
夜が胃の中で重たく消化された
朝焼けがベランダの向こうまで迫っていた
白み始めた月を残して
オリオン座たちは次の夜まで帰っていく
飛行機雲は一瞬赤く染まると
朝靄の中へ溶けていった

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