REMEMBER

そして一年が過ぎた。
あれほど駆け回ってきた小路で君はもうはしゃいだりしない。
青ざめた、光を失った顔。
大人になるより先に老人のような表情を浮かべている。
しかしそれは穏やかだった。
きいきいとロッキングチェアに腰掛けて湖を眺めているかのような瞳。
風が吹くと黄色い銀杏の葉が駆ける。
でも、もう君は必要外に走ったりしないんだろ?
そう決めてしまったのだから。
目を閉じる。
十数回の夏の終わりが心臓を引っ掻く。
記憶の中の君はコテージから見える湖まで仔犬のように飛び跳ねていた。
緑なのか青なのかわからない水を喜んで全身に浴びて、大きな口をして笑っていた。
だけどそんなこと、もうやめたんだろ。
稲穂のように項垂れて刈り取られるのを待っている。
君が帰ってきて嬉しかったのに、君はいなくなっていた。
そして一年が過ぎた。
過ぎ去ってしまった。

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