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Billie Eilish 「HIT ME HARD AND SOFT」 レビュー

そろそろまぜろよっつってね。

Billie Eilishの待望の3rdアルバム「HIT ME HARD AND SOFT」がリリース。先行曲無し、11曲、44分。前作よりコンパクト、そしてミニマムなバンドサウンドが特徴。急にニューウェーブ調になったりするのは驚いたが、その後のトラックの広がりを考えれば非常にバランスがいい。そう。とにかくバランスがいい作品と言える。ジャケットは6時間プールに浮いて沈んでを繰り返して撮影したそう。母親も大層心配したらしい。(笑)

点数は…

7翻 18000点   おやっぱねっっ。

はい。分かりやすくピッチフォーク風に10点満点で評価すると…

7.6点!!
ちなみに本家ピッチフォークは6.8点でした。
これまでのカタログに比べてもバンドサウンドが顕著に現れた作品でガレージロックやニューウェーブの影響が強いように感じる。逆にダークでゴシックな印象が薄れてしまったのは残念。聞いていて楽しい曲が多く(彼女には珍しい)、MVのファッションや歌詞からもビリー自信が今現在を楽しむ感じがよく伝わるポップな作品。個人的には2ndの退廃かつゴージャスな雰囲気を越えることは無かったものの、より気負わず聞けるのは良い点かもしれない。あえて前作とは別物にしたように感じた。ヒットしたWhat Was I Made For?を外したことからも安易なバズを避け、アルバムとして聞かせようという魂胆を感じる。

1. SKINNY

1曲目の最初のバース。Fell in love for the first time
With a friend〜   初めて友人に恋をしているというリリックからこのアルバムがいかに己を認めて作られたか分かる。勝手な物差しで計られることを嫌い、でも自身を評価しているファンに自覚的な歌詞も印象的。彼女を追っている人ほどトピックを見いだせる歌詞だろう。


2. LUNCH

リード曲であるLUNCHはビリーのカタログの中でも特に楽しく聞くことができる曲だろう。エッジィなベースと力の抜けきらない歌声でこれまでのビリーのカタログに無い1面が見える。クィア(クィアということを特別取り上げるつもりは無い)である彼女が好いている人に対し、大きな欲望を抱くような曲。軽快さがMVのファッションにも現れており、より一般的なそのファッションは彼女がまだティーンであり、恋をする1人の少女であることを思い出せる。

 6. THE GREATEST

本アルバムで最初に完成したという曲。前作収録のHappier than everのような劇的な曲で、その後のホラーやシンセの存在感を盛り上げるいい意味で区切りのような存在。アルバムの中心にふさわしいパワーバラード。

アルバムとしての完成度に力が入っているという本作は彼女自身が影響を受けていると宣言しているストロークスやデフトーンズ、80年代からのポップス郡のオマージュも入り、彼女自身を代弁するような作品。男性社会である業界やルッキズムを批判した前作から大きく変わった点と言える。

締める前に彼女のアウトフィットを確認したい。今の彼女を体現するようなそのアウトフィットはいい意味で彼女を歌姫と感じさせない。

Rolling Stone誌インタビューより


CHIHIRO MVより

ボディラインを隠すようなシルエットは変わらないが、作品やプロモーションにもよりビリーらしさが出ているのはないだろうか。

曲名に千と千尋の神隠しの主人公、チヒロの名が登場したりと日本人にも嬉しいものとなった本作。ビリーの繊細なボーカルが繊細なリリックと音楽と重なるのがひとつの魅力だったこれまで。そこに、いい出会い(音楽的にも)があったのか、よりオルタナティブになった本作はビリーに活力を与え、改めて彼女を若者に向き合わせた。ビリーと兄のフィニアスのソングライティングの豊富さとより自分自身の経験を歌うリリックは彼女を孤独に見せる。自分自身の繊細さを見せつけるのは困難なことだ。しかし、この歌姫はHIT ME HARD AND SOFTで我々を曖昧でアンビバレントで宇宙的な旅に招待してくれている。異端を見せ、異端に寄り添う。彼女らしいアルバムであり、彼女自身を正直に表したアルバムだ。

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