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岡山でさらに内田百閒展を見てきました(2ヶ月ぶり2度目)

 岡山・吉備路文学館で内田百閒展が開かれているんですよ!!と、声を大にして言いたい。

 JR岡山駅から徒歩圏内、バスで行けばもっと早い吉備路文学館で大好きな作家の没後50年展が開かれている…というわけで、オープニング講演会もあることだしと初日にすっ飛んで堪能してきたのが7月のこと。→その時のレポはこちら。

 展示替えが頻繁なことはあらかじめ告知で知っていましたが、さすがに5期(の予定でした、当初は)全部制覇するわけには…と諦めムードだった私。

 しかし、講演で聞いてしまったのです。
 この後の展示替えで、百閒先生の家の表札と一緒に提げられていた、「春夏秋冬 日没閉門」の陶器の札が展示される…と。

 あ、あれを見せて貰えるんですか〜〜ッッ!?!??

 内田百閒の随筆「日没閉門」などにも書かれていますが、百閒先生のお宅の門には「春夏秋冬日没閉門 爾後ハ急用ノ外オ敲キ下サイマセヌ様ニ」と書かれた標札が下げられていて、先生の頑固(正確にはというわけでもないんですが)エピソードを語るものとして、よく紹介に取り上げられています。

 文字ではよく見ているし、白黒写真でも見たことがあるけれども、実物は目にしたことがない。というか見せてもらえるんですか?!伝説のアレを!??…という、百閒好きならではの興奮で、なんとか展示替え後に再訪しようと誓ったのでした。

 しかし新型コロナウィルス感染症拡大による緊急事態宣言発令。吉備路文学館も一時休館を余儀なくされ、百閒展も当初の展示計画が変更になりました。

 幸いにも会期中の再開館が叶い、9/26まで百閒展は開かれています。私もなんとかワクチン2回+2週間経過、「最大限気をつけるので!もちろん不織布マスクするし最低限しか喋らないので!!」という注意を忘れずに突貫で日帰り計画を立てたのですがしかし。気になるのは日没閉門の標札、展示されてるかな…?というところ。

 もちろん百閒好きとして、それがなくとも展示は最大限楽しめる自信があるのですが…やっぱり見たいじゃないですか。そして変更された文学館HPの展示計画表を見ても、実際のところ何が出ているかはわからない…ワンチャンあるような気がする…いやでも明言されてないし…云々。

 心配しながらも、密にならないよう気をつけてバビュンと岡山まで行ってきました。そして吉備路文学館へ。大きな展示内容は前回と同じです。さあ問題は展示替えの部分。どうだ。あるか。どうだ!?

 あったアアアア!!!!!!!

 ありがとうございます本当にありがとうございます、日没閉門の標札はしっかりと展示室の最後に鎮座ましましておりました。

 ほ、本物だァ〜〜!!白い…瀬戸引きの…表面に筆で黒黒と書かれた(焼き付けられた?)春夏秋冬日没閉門の文字。その下に小さく続く追記のメッセージ。

 いやあ…本物ってすごいですね…この実在性…「意外と分厚いんだな〜3センチくらいあるかな〜」「へえー側面に標札を作ったところの銘らしきものが入ってるんだ〜(キャプション情報)」「結構底の方に汚れがこびりついて取れなさそうなのが生々しい…」とさんざん堪能して何度も戻っては見、戻っては見て心に刻みました…。正直図録が欲しい…図録作ってください…(無いんです)。

 もうこの時点で大満足でしたが、さらに前回から変わった展示品がたくさんあって、ぎっしり詰まった情報にウエヘヘヘへへへとマスクの下で不気味に笑いつつ堪能させて頂きました。他に誰もいなくてよかった(見ている間ずっと貸切状態でした)。

【今回新たに展示されていたもの】
・「阿房列車稿本」(阿房列車の直筆原稿を綴じたもの。ヒマラヤ山系君こと平山三郎氏に贈られた)
・『ノラや』収録の「ノラ来簡集 前書き」自筆原稿と、来簡集を目次に組込むための指示書き
・ノラ探しのチラシ1回目と2回目の物
・中村武志『埋草随筆』の序、自筆原稿(実物は初公開)
・「藪を売る」附「ノラや」、自筆原稿(実物は初公開)
・「言葉に関する考察 草稿」(初公開)

 (実物は初公開)(初公開)はそれぞれキャプションの説明をそのままメモしたものです。前者は複製品を展示したことがあるもの、後者は今回が初ということですかね。草稿が全集などに収録されているのかはわかりませんが、オープニング講演会で「本にも載っていない初公開の資料の展示も予定していて…」と、チラッと仰っていたので、これがそうなのかもしれない…いやわからんけど…と思いつつ、一応展示されている分をがりがり手書きでメモって来ました(とはいえこれも後略になっているので、全文ではないようですが)。

 慌ててノートに書き写しながら、手書きでなぞると百閒先生の文章が、よりしっかりと頭に入る気がするな…と感じたり、旧漢字や仮名遣いのクセがよくわかったり、焦りながらやったもののなかなか発見がありました。

 あとは「来簡」の「簡」の字が、百閒先生の戦後の号と同じく門の中が「月」になっているのを見つけたり、「藪を売る」の「附ノラや」で、タイトルと本文二度にわたって「のらや」と書いたのを消して「ノラや」に改めているのを見たり。本文ではさらに「の」と書いて消して「ノラは…」と書いていたりもしました。そういう細かい気付きがあるので直筆原稿は素晴らしい…。

 「藪を売る」は最後の単行本『日没閉門』収録の一編で、最晩年、絶筆の3、4本前に書かれたものだけあって、直筆の文字の緩みや崩れに弱弱しさを見てウッ……となりました。並んでいる、元気な頃の原稿の文字がくっきりはっきりしている分よけいに。百閒先生の直筆原稿の文字、読みやすいですね。

 既に展示の終わった前の会期の内容も、写真パネルで細く説明がされていて、初日よりさらにぎっしりと百閒先生を味わえる素敵な特別展でした。

 そんな吉備路文学館での内田百閒展は、9/26(日)まで!文学館さんと何の繋がりもない一個人の素人ですが、声を大にして応援しております!!一般料金は400円です!!!(もっと払いたい!!)

 とのことです!休館日にご注意!