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読書始めだけは何故か意味を持たせてしまう。

 明けまして2024年、みなさま初読書はもう済まされましたか? 私はしました。というか年末から「どの本にするか……よし、これだ!」と決めていた本を読み始めました。

 石田五郎『天文台日記』(中公文庫)。
 岡山の天文台での一年を追ったこの本は、197x年の1月1日の夜勤観測の話からスタートしているので、年の初めになると読みたくなるんですよね。

 「◯◯始め」にもいろいろありますが、1月2日から始まるといいとかなんとかそういうのがあったような気もします。でも本は時間があればいつでも読んでしまうものだし……2日まで待てないし……てなわけで2024年になってすぐに開いていました。

 別に新年1冊目の本が何であろうが人生に特段の影響はないはずなのですが、他の「初◯◯」にはさしてこだわりがないのに、初読書だけはちゃんとしたものを選びたくなるんですよね。験をかつぐような気持ちもありますが、やっぱり一番は、年が改まったまっさらな気分に、変な読書をしたくないというのが強い気がします。

 やっぱさあ……なんか「いい本」を読みたいわけよ……(フワッとした概念)。

石田五郎『天文台日記』(中公文庫)

 というわけで、「いい本」です。
 人生で3冊目くらいの中公文庫版『天文台日記』。一度は手放したもののどうしてもまた読み返したくなって買い直し、その後引っ越しのどたばたで行方不明になったのをまた読みたくなって買い直し……。なぜだかある程度の年月が経つと、ふっ……と読みたくなるんです。

 深夜の天文台での観測、「私の星」という概念、「深夜喫茶」でレコードを流しながらの時間……。そういったものにときめきを感じて繰り返し読んできたわけですが、やっぱり何度読んでも好きだなあ……。

 一人、静かな深夜にじっと行う仕事というものに何か好きなものを感じるんですよね。実際やると眠気との戦いだろうな、などとは思いつつもね。

 昔読んだ頃は何もわからずに楽しんでましたが、久しぶりに読むと、文章の軽快さや的確で洒落た比喩表現に、なるほど巧いなぁ……と改めて感心しました。文章がいいんですよね、やっぱりね。難しかったり図だけでは想像しにくいような特殊な話でも、するすると頭に入ってくる。

 あとは以前よりも岡山県の地理に詳しくなってから読んだので、天文台の場所が……わかる……! と勝手に感動しました。

 作中舞台の天文台はこちら。文章と挿絵だけでは想像の追いつかなかった部分がギャラリーページの写真で捕捉できて、ああ〜これこれ! と興奮しました。

 あとは検索して出てきた動画も。天文博物館いいなあ〜〜。

 私は星そのものには正直そんなに関心がないのですが、星を追い求める人たちの活動や人生には興味があります。
 初めに『天文台日記』を読んだ後で、時代を遡って野尻抱影の文章も読むようになったのですが、そうしてるうちに『天文台日記』の著者石田五郎が書いた野尻抱影の評伝が文庫化されて、そちらもまた面白く読みました。

 やっぱ、星そのものよりも、それに魅せられた人間の方が面白いんだよな……(失敬)。

野尻抱影『星三百六十五夜』

 とはいえ野尻抱影の文章もとても好きなので、一年を追うという意味で、併せてこれも読み返そうかなと思います。いつ見ても素敵な装丁だ……。

 そんな天体観測からはじまる2024年の読書始めでした。
 前回の記事で私の2024年は岡山から始まるぜ!(おかえり阿房列車展)とか言ってましたが、はからずとも読書始めも岡山スタートになりましたね。

↓2023は飛ばしたけど、2022年は読書始め記事書いてましたね。