全集に無い内田百閒の対談を読む。(飛行機関連雑誌編×4)
オタクは思い上がっていた。
旺文社文庫の内田百閒本を全部揃えたし、百閒先生についての調べ物も順調に進んでいる。もうかなり詳しくなったと言っていいんじゃな〜い??(※全集持ってないし読み切ってない本もあるし関連書籍はあんまり手をつけていません)
……と、調子に乗りつついつものように日本の古本屋で「内田百閒」の新入荷を確かめていたら、こんなタイトルと説明文が目に入ったんですよね。
「飛行日本」18巻1号 内田百閒と淡路圓治郞の対談
……知らんが?
いや……(手持ちの単行本『百鬼園坐談』『続百鬼園坐談』文庫『百鬼園先生よもやま話』、持ってない『深夜の初会』と福武版全集の対談・座談の回の収録作品を確かめる)……まったくの無情報だが?!??
オタクは油断していた……百閒先生関連の書誌情報は、ヒマラヤ山系君こと平山三郎氏に任せておけば大丈夫なのだと……旺文社文庫の解説やその他平山三郎本をチェックしていれば、まあ百閒先生の作品も対談も坐談も情報はカバーできるのだと…………。
いや私が見落としてるだけで、どっかに情報があるのかもしれないけど完全なる初見オブ初見。だって並んでる固有名詞、百閒先生の名前しかわからない。「飛行日本」is何??淡路圓治郞って誰???
これほんとに私の知ってる内田百閒ですか?……いやこんな筆名は百閒先生しかいないだろうし、飛行機関係の雑誌ぽいから確なんだろうけど……でもわからんなにこれ……。
というわけで買いました。
わからんもんは確かめてみるしかない。さすがにプロの古本屋さんが別人を内田百閒と間違えるはずはないだろうと思いつつもドキドキしていたんですが、ちゃんと百閒先生の対談が載ってました。それも写真つきで。ほ、本物だ……(それはそう)。
さすが戦時下の雑誌だけあって、全体的にそういうムード〜〜!な内容なんですが、他にも斎藤茂吉や高村光太郎なんかも載っていて面白かったです。へえーへえー。
肝心の百閒先生の対談は、7ページもあってなかなかのボリューム。しかし基本的には、航空関係の博士に素人役として質問し、専門知識をわかりやすく披露してもらうホストのポジションでした。あんまり百閒先生の百閒先生らしいところは出ていない。
しかし、推しの新規供給は体に良い……潤う。
確かにこれを対談本に載せるかと言われたら、まあ紙幅の都合なりで省くのはわかるな……という程度の百閒先生濃度なんですが、それでも博士の説明に法政大学航空研究会時代の思い出を交えてなごやかに場を成立させていて、いや〜いいもの読んだな〜こういうのもたまにはあるんだな〜と堪能したわけです。
そして何気なく、飛行日本についてもうちょっと知りたいなー、と、国立国会図書館サーチで検索してみたところ。
まだあるんかい。
“館内もしくは図書館送信公開”
しかも提携図書館で読めるんかい。
……というわけで、後日いきつけの図書館で閲覧&複写(プリントアウト)して参りました。便利な時代になったものですね……。何なら今後、自宅にいても閲覧できるようになるそうですしね。雑誌はまた別のようですが。
目次を見て気が付いたのですが、これが創刊号だったんですね。創刊号を華々しく飾る百閒先生の対談……。そして2号連続掲載だったと。料理番組みたいに同日にいっぺんにやったのかとすら思いましたが、着ているものが違うので別ですね(どの号もお写真が載っています)(背広だったり和装だったりする)。
正直、百閒先生らしさを浴びたい気持ちが満たされるかというと「否」な内容なのですが、あくまでホストとして専門家の話を引き出しつつ、自身の飛行機エピソードも交えて朗らかに語らう百閒先生の社会性が堪能できて、これはこれで嬉しい……。
ちなみに別件でこういうのもありまして。
こちらは戦後の雑誌なのですが、ざっくり検索した時に一緒に出てきたので、同じく国立国会図書館送信館で閲覧&複写してきました。百閒先生の元生徒も参加しているし、サブタイが「内田百間氏をかこむ座談会」なので、法政大学航空研究会時代の同窓会的なものかな〜とワクワクしていたのですが、こちらも専門家の話をメインとしたお話でした。でも「あの頃は〜」と現役時代を懐かしむ風情もあって、なかなかに好きですね。
というわけで、なんかまだいろいろあったのねという、全集等に(多分)載っていない内田百閒の対談情報4本をまとめておきます。
以上の4本はすべて国立国会図書館か、図書館送信対応館で読むことができます。もちろん遠隔複写も可能。百閒先生の言葉を余すところなく集めたい方はぜひ。
書きながらやっと思い至ったのですが、情報がないない言いつつ、『百閒座談』(百鬼園坐談とはまた別で、対談などの百閒先生の発言のみを集めた本)に載っているものもあるのかもしれませんね。※確かめてないのでまったく責任を持てない思いつきです。
まあ、昭和の作家は特に、座談会とか多すぎて拾いきれないんですよきっと……。そしてこの後、また別件の未収録対談も見つかったので、改めて記事を書くつもりです。ほんといろいろある……。
書きました。これで一区切り。
いろいろあるうちの一つ、前回まとめた対談はこちら。