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5月のつれづれ読書記録。

 興味関心があっちこっちふらふらしては、何かしらの関連本を買ったり読んだり積んだりしている人間なので、手をつけた本をピックアップして書き残すことで、ふらふらしていた流れが記録できるかな……という試みです。そういや元々読書記録用に始めたnoteでしたね。(さいきん内田百閒の話しかしてないから忘れるところだった)

 あ、百閒作品はずーーっと読んでます。何回読んでも面白いからすごいよなぁ。

風越洞・壱村仁『ふることふひと』

 古事記編纂にまつわるエピソードを、神話と政治と女装を絡めて描く歴史モノ漫画。絵が綺麗で画面構成にストレスを感じないし、なかなか馴染みのない(私には)時代設定も現代的な笑いを交えつつ、するすると読ませてくれます。ひらがなのない時代、文字表記すら試行錯誤していくところが面白い。

 Kindle Unlimitedで3巻まで無料だったのをきっかけに読んだんですが、続きが気になって買い進めていたら、ちょうど数日後に出る6巻が最終巻でした。ツイート検索して打ち切りエンドって出たのでヒヤヒヤしながら読んだんですが、この巻で終わりだと認識しておけば、まあ……山場もまとめもあって良かったのではないかと。でも続き読みたかったな〜。Wikipediaで主人公(一巻のあらすじにあるような「下級役人」ではないんですが、これ言うと初期のネタバレだからな……)の項目を読んで、妻の欄でニヤニヤしたりしてました。ここ、読みたかったな〜〜!

井伏鱒二展にそなえていろいろ読む。

ふくやま文学館 井伏鱒二展

 広島県福山市にあります、ふくやま文学館で開催中の井伏鱒二展(井伏文学のふるさと 在所のことが気にかかる)を見に行くことにしていたので、予習として短編をいくつか読みました。随筆や自伝的なもの(釣り関係とか荻窪風土記とか。あと鶏肋集)は読んでたんですが、小説はそこまで読んでいなかったので。

 私は旅行の後に振り返りで読むことはあっても、あんまり予習はしないタイプなんですが、今回は読んでおいてよかった〜!となりました。
 展示は直筆原稿や初出雑誌が中心なのですが、解説パネルがご当地ならではの情報量で……舞台になった場所の昔と現在の写真、土地にまつわるゆかりのエピソードにあふれていて、あの話で出たあれだ〜!がたくさん味わえました。
 とはいえ、会場にも小説の抜粋パネルがあります。でも思いのほか取り上げられている作品が多くって、これは知識ゼロのまま、パネル全部読もうとしたら相当疲れただろうな……(一部飛ばしてたかも……)となったので、あらかじめ頭に入れておいてよかったです。

 事前に読んでおいたのは、公式ページにも挙げられていた「朽助のいる谷間」「丹下氏邸」「開墾村の与作」と、「開墾村の与作」収録文庫を買ったついでに読んでいた「集金旅行」等。文学館公式の予告では、はっきりと名前を挙げて故郷が舞台とわかっているものを取り上げるとのことで、他にあまりタイトルは挙がっていないのですが、実際に展示を見たらだいぶいろいろ紹介されてました。「集金旅行」もしっかり触れられてた。「集金旅行」読んで、面白いな〜〜となってたところだったので嬉しかったです。

 「荻窪風土記」とか読んで基礎知識があったぶん、「集金旅行」で最後に出てきた集金相手の説明にニヤニヤしちゃったもんね。ラストの、こんな失望は身勝手だとわかりながらもむしゃくしゃしてしまう主人公の感情が、くどくど説明されてないのにスッとわかるところが好きです。

柳原極堂『草雲雀』

 れ、令和に柳原極堂の新刊が!!??!!?
 noteのリコメンドで出てきた記事で存在を知り、そのまま迷わずAmazonオンデマンドで紙の本を買いました。すぐに届いた。便利な時代だ……。

 一般的にはあまり知られていない俳人なわけですが、正岡子規について調べ始めるといつも出てくる柳原極堂。なんせ俳句誌「ホトトギス」を創刊した人であり、子規没後何年も経つと故郷松山で子規の事が忘れられかけていたことに危機感を覚え、松山市を現在のような正岡子規ワッショイワールドになるまで盛り上げ続けた地域の偉人です(語弊)。極堂がいなければ今の松山の俳句アゲアゲ野球大好き世界観はなかったはず。

 今回の『草雲雀』にも、正岡子規について記した「友人子規」が抄録とはいえたっぷりめに収録されている上、本体である俳句の部分も「この人ずーっと正岡子規の話してるな……」という感じで子規関連の句が多くて面白かったです。さすがや……。

古本まつりがありました。

 一週間くらいやってる恒例の古本まつり、今回は二回行って六冊買いました。だんだん買う量も落ち着いてきた。

 ちょうどふくやま文学館とハシゴしたふくやま美術館で、浴びるほどの近代美人画と、文人とも関わり深い近代絵画のコレクション展をみた後なので、近代美術界隈を学び直したい〜!となっていました。

 『岸田劉生随筆集』、この本九割五部家にあるよな……と思いつつも今!これを!読みたい!となって買って帰ったら案の定あったわけですが、ダブってもいいから買うぜと決意したので後悔はしていません。
 熊谷守一『へたも絵のうち』も再読ですが、図書館で読んで自分でも欲しかったので確保。熊谷守一の自伝(聞き書き新聞連載)なのですが、これを読んだあとに評伝『仙人と呼ばれた男』を読むと相乗効果でさらに面白いです。おすすめ。

 海野弘『東京風景史の人々』は、これこれちょうど知りたかったところなのよ〜!という感じで嬉しかった。まだ途中ですが、風船画伯こと谷中安規の章もあってうれしい。
 たまたま続編?関連?の『モダン都市東京』も電子書籍で買って積んでたので、またこのあとに手をつけたいですね。

 二回目は二冊。森茉莉『マリアの気紛れ書き』は、いま津和野の森鷗外記念館で森茉莉の展示をやっているらしく(生誕120周年なんですね)、こんど行くことになったので、森茉莉濃度を少しずつ上げていこうと思って……。森茉莉、読んでるとすぐお腹いっぱいになってしまうので、ちょっとずつ慣らしていきたいです。好きなんですけどね。

https://tsuwano-kanko.net/info/ougaikinenkan_morimari/

 谷崎潤一郎『青春物語』は、そういえば抜粋しか読んだことないかも……?となったので。しかし話に関係なさそうなのにインパクトある表紙だな。

 五月は紙の新刊をあんまり買っていない気がする(買ってはいる)。六月は中公文庫で井伏鱒二の広島の話をまとめた本が出るそうなので、展示の続きでそれも買うつもりです。なんてぴったりな本なんだ。井伏鱒二展は7月までやってますので、福山駅の近くですので、ぜひ……(貸切状態だったけどいい展示なので……!)

 井伏鱒二には内田百閒との座談会と、それについて思い出を書いた短い随筆「かみなり」もあります。ふくやま文学館はこの年度末に井伏鱒二の座談会や対談についての展示を予定しているそうなので(年間予定表にあった)、ワンチャン百閒先生も名前が出ないかな……吉備路ゾーンのよしみで……(井伏鱒二の方の対談集に入ってないから微妙かも)。

 「かみなり」はこの本に載ってます。